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33、受けた評価へどういうスタンスをとったらいいのか

 いやー、今日はろくなことがなかったなあ。

 え、聞いてくださるんですかお客様、聞いてくださるんですね、ありがとうございます! ええ、実はですね、今日、二時間前まですごく忙しかったんです。なので、今日は久々にハッスルしてカクテルを作っていたんですけどね。そうしたら、お客さんの一人がにわかに立ち上がって、「手抜きをするなバカ!」って言ってきたんですよ。もちろん手抜きなんてしている覚えのないわたし、頭に血が上っちゃいましてね、「手抜きなんてするほど落ちぶれちゃいねえんだよ阿呆が!」って返しちゃったんです。そうしたら大喧嘩になっちゃいまして。

 ええ、わたしが悪いんです。お客さん相手にどなるなんて最低です。

 え、違う? お前は勘違いしてる、ですって? どういうことですか。

 ふむ、小説に置き換えて考えてみろ、と?

 わ、わかりました。ちょっと考えてみます。

 あ、すいませんお客様、ご注文のカウボーイです。これでも飲んでる間に、わたし、ちょっと反省に入ります。


 小説を書いていると、ときどき、お客さんから叱られるときがあります。

 いや、そういえば、この前、わたしもあったんですよ。このエッセイについて叱られたんですよー。ああメタいメタい。まあそれはさておきまして、世の中に何かを発信している以上、賞賛や反発が飛んでくるのは当たり前のことです。というか、われわれ作り手は作り手として表現の自由を行使しているというのに、気に入らない読み手様側の表現の自由を奪おうなんていうのは虫が良すぎる話です。ところが、ときおりWEB上にはそういう不届き千万な作者さんがいます。以前筆者がお見かけしたところですと、WEB小説の書評を行っているブログに、そのブログで取り上げられた作者さんが怒鳴り込んでいた(「俺の小説を評価したくだりをすべて消せ!」と言っていました)という例を見かけました。個人的には、そういう行動は日本の法制上に生きる一個人としてどうなんだ、という視点でもって相対しています。

 ちなみに、筆者は「読者様に反論するのがダメ」と言っているのではありません。「読者様の発言権を奪うのはダメ」と申しております。ですので、読者様の発言を認めたうえで、作者と読者様が言論を交わすのは全然OKだと思っています。他人と争ったところで……という平和主義者であるところのわたしは、あまり論戦を張ることはないでしょうけど。

 でも、時折、自分から見ると変な感想をいただくことがあります。

 ピントはずれなご意見とか、その小説の本当の面白いところを見逃して「駄作だ!」と突っかかってくるご意見とか、誤解に基づくご意見とか。

 どうしてもそういう感想をいただくと無視しちゃいがちですが、無視しちゃうのはもったいないですよ。

 どういうことかというと、こういった「変な感想」こそが、あなたの小説を鏡写しにしたものだからです。

 たとえば、ピントはずれのご意見。これは、あなたの小説が、実は読者様をリードできずに、どこかピントはずれな所へ誘ってしまった結果かもしれません。「駄作だ!」というご意見。これは、あなたが書いた小説の仕掛けたちが、あなたの望むような効果を発揮せずに終わってしまったということなのかもしれません。誤解に基づくご意見。これは、あなたが誤解を招くようなリードをしてしまったのかもしれません。

 読者様からの感想というのは、作者から見た場合、あまり的確でない場合が多いのです。

 だって、作者から見た的確な感想っていうのは、「この一文はこういう意図なのだろうが、この表現ではあまりに甘い」とか、「あの一文でのあの発言は、のちのあのエピソードにつながっていて心地いい」といったようなものです。お判りでしょうか。これらの感想には、「作者の意図をしっかり読み解いている」という前提があります。でもですね、いまどき、プロの書評家ですら作者の意図を読み違えることが当たり前にあるというのに、一般の読者様から天啓のようなご感想をいただける可能性なんて限りなく低いんじゃないでしょうか。

 なので、われわれ作り手は、読者様から頂いたご感想を分析しなくてはなりません。そして、いただいた言葉の一字一句の裏にある、その読者様の本音を読み解いていかなくてはなりません。

 そして、ここからが重要なことなんですが。

 そうやっていただいた読者様の貴重なご意見ですが、すべて聞く必要はまるでありません。

 読者様というのは星の数ほどいます。なので、まるで正反対のことを言う人もいます。そんなご意見に従っているうちに自分の作風を見失うなんてこともよく聞く話です。

 これ、小説に限らずだと思うんですが。自分にとって有益なご指摘はしっかり自分の血肉にして、無益なご指摘はあとでそっと捨ててやるのが一番だと思います。もちろん、この「捨てる」とき、読者様に見えるようにやるのか、それとも見えないところでそっと捨てるのかは、あなた様の人間力にかかっている話かなあとは思います。


 いやあ。開眼しました。

 間違っておりました! そうですよね、お客さんのご意見は、とりあえず一度承ってそれから捨てるか生かすかを考えるべきですよね。

 でも、納得いかないなあ、手抜きなんてしてないぞ。

 え? 「きっとそれは、忙しすぎてカクテルの味が薄かったんじゃないか」ですって?

 あ、もしかするとそうかも! 気をつけなくてはなりませんね!

 (というスルースキル発動!)

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