シーン58勇者のラグナ。
ラグナ回想
僕が目にしたその者、それは精霊の力を携えた女性だった。
魔王ゼルドリス様が消えれば魔族である我々は消えるのではとずっと思ってきた。
だが違ったんだ……消えゆく同族種は沢山いた。
その中で僕は取り残されるように一人そこに存在し、そして目の前の勇者は語る。
『君は魔族なのかな?』
僕はその声に驚きを隠せなかった。
だがその女性は笑顔で声をかけてくる。
『ねえ?聞いてるんだけど答えてくれないの!?』
そんな調子の勇者に俺は口を開いてみる。
『ああ、お前が魔王ゼルドリス様を仕留めた勇者なのか!?』
俺の言葉に驚きの表情を浮かべる勇者。
『うん………確かにそうだけど………。』
『そしてここに来たのは俺も封じる為か!?』
俺は叫んでいた。
すると勇者はにこりと笑みを見せる。
『なんだい?あのさ、その魔王が消えたのに君は今もこうして存在してるよね?私が考えるに君は心から魔王ゼルドリスの支配下にいなかったんじゃないのかな?』
『それはどういう事だ!?』
すると笑みを浮かべながら語る勇者。
『そういう事だよ…………完全な魔王に浸透してるのが当然な魔族………そんな魔族達は魔王の力がより濃く入っているんだ………そんな奴らは魔王と一緒に消えていったんだよ……そして残った君の様な存在は………きっと魔族でも良い奴らなんだよ!!』
にっこりと微笑み、そう告げた勇者。
『なん……………だと…………………』
俺はその言葉に思わす震えていた。
『ま、魔族でいいやつだと……………』
『ええ、そうよ…………私にはあなたの魔力からは邪気を感じないのが分かるの。』
俺を見透かすようなその目は全てをみられているような感覚。
その女性は俺の全てが見えているようだ。
その時感じたのはこの勇者には俺は敵わないという感覚だった。
でもそれは不思議と嫌な感覚ではなかったんだ。
本能からくるその感覚。
でも、それはどこか安らぎを感じたのは不思議だった。
すると、ふぅーーーーーーーーーーーっと深い息を吐く勇者。
『ねえねえ!このまま君がヒューマンとか精霊達になにもしないで大人しく暮らしていくと言うなら私はこのまま君を放置できるんだけどどうかな!?』
『なっ!?何を言っているんだ!?』
僕はその言葉に我に返る。
次の瞬間。
僕の魔族としての聖なる者への反抗心が増幅してくる。
そしてその時僕の体内から発した魔力は巨大なエネルギーへと変貌する。
『ぐっ……………うおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!???』
自分でもどうにもならないこの状況。
これは根本的な自分の魔族としての本能だったのかもしれない。
俺が意識を飛ばしかけていたその問。
勇者は聖剣を構えている。
『今…………私がアナタのその負の感情は全て消し去ってあげるよ……………………………。』
僕の身体が突き動かされ動き出す。
自分の中で今までで最強と感じるほどの力が解放される。
そして制御しきれないほどのエネルギーは暴発するように勇者に向かって放たれる。
それを見た勇者はフッと笑みを浮かべる。
『さあ、いくよ…………………』
一瞬の出来事だった。
気がついた僕は今。
勇者の聖剣によって斬られていた。
すると痛みはなかった。
ただ身体は動かなかった。
それだけ勇者の力と技は凄かった……。
これが僕が勇者に完全敗北した瞬間だったんだ。
『ぐあああああーーーーーーーーーーーーっ!?』
思わず叫ぶ僕。
そして勇者は手を僕に翳し口を開く。
『このまま消えるには君は惜しい存在かも………それならこれから私の力になって欲しいんだよね?どお!?』
『力になる………………か……………………そうですね………………僕はあなたにはどうやら力も、何もかもが勝てなかった、このままアナタの力となる事にしようではありませんか。』
僕はそう返していた。
ニコリと微笑む勇者様。
『アナタの名前は!?』
『僕はラグナ…………かつて魔王の配下の一人さ…………そして勇者様……君の名前を聞かせてはくれないか?』
そして笑みを浮かべた勇者は告げた。
『私は勇者ラブラ……そう皆は呼んでくれるんだ。』
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『という事を経て僕はこうして今マジェストとしてマジェスト協会のお世話になっております。』
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