番外編 宇宙漂流記ルミナス171 パーフェクト・ソルジャー8
前門の虎後門の狼。
フィオナとクァン・ユゥー、この二人はどちらもがかなりのパイロットの腕の持ち主だ。
クァン・ユゥー大尉は人間性最悪で上官としてはクズそのものだが、AT乗りとしての腕は超一級だ。
むしろ最低最悪の性格でも出世できた理由は政治力というよりもAT乗りの実力だと言っても良いくらいだろう。
そのクァン・ユゥーとパーフェクト・ソルジャーのフィオナ、この二人がオレ達の乗るバギーの行く手を塞いでいる。
さらに言うならば本来戦闘状態ではなかったフィオナを覚醒させてしまったのはこのバギーを横取りしようとしたメーテルリンクだから事態はややこしくなる一方だ。
まあメーテルリンクにとってはフィオナもクァン・ユゥーもシナップス小隊の仇なので、戦闘対象なのだろうが……だからといって本来戦闘に無関係なオレ達を巻き込むことはないだろ!!
だがそんなことを言ったからと言っても、状況は何も変わらない。
どうにかこの場を逃げ切らないとオレ達に未来は無いんだ。
クァン・ユゥーはストライクトータスのアサルトライフルをボウトに突き付けて来た。
「ひぃい! 何だ、何が目的だ!」
「知れた事よ、貴様が軍から巻き上げた金、そっくりそのまま俺様に返してもらおうか!」
守銭奴のボウトの上前を撥ねようとするとは、クァン・ユゥーの欲の皮は相当分厚いみたいだ。
「ふざけるな、あの金はおれが命を張って稼いだもんだ、お前には1ギルデンすら渡さん」
「そうか、それなら殺してでも奪い取るとしよう!」
「ひぇぇぇええ!!」
ストライクトータスの銃口がオレ達のバギーを狙っていた。
だが、メーテルリンクはその足元目掛け、バギーを一気に走らせた。
「バカめ、自ら死にに来たか!」
「そうはさせない!」
普通の大型ロボットと違い、ATの大きさは言っても中型車両より少し小さいくらいだ。
つまりこのサイズのロボットなら、工夫次第でバギーでも立ち向かえるというわけだ。
「ボウトさん、何か対AT用の武器はここに無いのか?」
「そんなことを言ってもな、売れ残りのパイルバンカーくらいで、しかも腕の部分だけしか残ってないぞ」
「それで十分だ! すぐに用意してくれ」
ヴァニラとオレはメーテルリンクに頼まれ、バギーのフロント部分にパイルバンカーを括りつけた。
なるほど、このパイルバンカーでストライクトータスの胴体に体当たりするって事か!
「そんなこけおどしでこのストライクトータスが倒せるか、おい、パーフェクトソルジャー。ギギリウムが欲しければあいつ等を蹴散らしてしまえ」
ギギリウムの事を聞いたフィオナがオレ達のバギー目掛けてマシンガンを突き付けて来た。
くそっ、クァン・ユゥーだけならまだしも、あんなの相手にしてたら命がいくつあっても足りない!
「お前は、フィオナか!」
そんなオレ達を助けてくれたのは、肩の赤い緑のATだった。
アレは、キリオの機体か!
「クッ! お前は……私を惑わせる何かか!?」
ストライクトータスから放たれた弾丸がキリオのATを襲う!
だがキリオはその弾丸の雨を潜り抜け、アームパンチをフィオナの機体に叩き込もうとした。
とっさのところでそれをフィオナがかわしたため、アームパンチはその後ろにいたクァン・ユゥーの機体に炸裂、クァン・ユゥーのストライクトータスが吹っ飛ばされた。
「グベェ!!」
キリオの攻撃を避けたフィオナだったが、その前に運の悪い事にオレ達の乗るバギーがあったことで、バギーにくくりつけた簡易式パイルバンカーをブルーティッシュウルフの腰部から脚部にかけて激突してしまった!
「うわぁぉっ!」
「キャアッ!」
「な、何だぁ!?」
ブルーティッシュウルフが激突した事でバギーはひっくり返され、全員が外に投げ出された。
あれ? 何か様子がおかしい。
どうやらメーテルリンクの持っていた瓶のギガリウム溶液がフィオナの乗っていたブルーティッシュウルフにかぶってしまったようだ。




