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召喚をした人々

 松明たいまつの、火のはぜる音がした。テレビ以外で初めて見た。

 夜だ。

 風を感じる。ひと際闇の濃い場所で、木々がざわめく音がする。

 今度は戸外にいた。

 夢だとは思えない現実リアル感がある。

 そして、暑い。冬なのに、この暑さは何?

 足元には、私を中心にして円を描く光る紋様。

 これだけは現実離れしていて、夢のようにきれいだ。線が、ほのかに金色を帯び、淡く発光している。これが召喚魔法陣なのだろう。土の上にいると思うのだけど、光が美しく浮かび上がっている。。

 その向こう側にたくさんの人。険しい顔が並んでいた。

 何故?

 管理人の愛ちゃんは、私は大切にされるって言ってたのに、全く友好的な雰囲気じゃない。

 目の前に白いローブを着た年配者が五人。その左右を、魔法陣に沿って武装した人々が展開している。

 彼らは、ただそこにいるだけじゃない。抜刀して、構えてる。もう警戒レベルじゃなくて、戦闘開始直前って感じだ。背後まで取り巻かれているに違いない。

 どういうこと? どうみても危険人物扱いされてるんですけど。話が違うじゃない。

 怖くてうっかり動けない。

 そう思ったけど無意識に身を竦めてしまって、ガサリと持っていた紙袋が音を立てた。

 それに反応して武装した人々が身動ぎした。靴が土を擦る音、軋む武具の音。

 やばい、怖すぎ。

 愛ちゃん、まさかアフターサービスを受けられないってことないよね。いざとなれば、違う国に行かせてくれるって、信じていいんだよね!

 私は、魔法陣の真ん中で立っている事しかできない。

 召喚魔方陣と言われて私がイメージしたのは、なんらかの幾何学模様が描かれた、ほんの一、二歩で出られるだろう円だった。

 けれど、この魔方陣は思っていたよりずっと大きい。私の立つ中心と思われる所から一番外側まで、五メートルはありそうだ。

 描かれているのは、紋様というより装飾と評すべきかもしれない。アールヌーボー調だ。私は好き。とても綺麗。

 外縁から、一メートルくらいのところにまた円があり、さらに内側にそれより少し広い幅と取って三番目の円がある。

 三本の円によって出来た枠のうち、外側は円が横に連なっている。円の中には、曲線が美しい幾何学模様があって、円と円のすき間に小さな花がある。

 手前側の枠は薔薇の花。二重螺旋のように描かれた茎には、棘と葉があって、薔薇を引き立ててる。

 そして足元。これはマリナーズコンパスだ。パッチワークの定番の型のひとつに似てる。方位磁石の土台で、方向を示す図柄だ。これはそんなに大きくない。ほんの二歩ほどで中心から出られそう。私が最初に思い描いていた魔方陣のサイズだ。

 薔薇の模様のある円まで空白がある。こういう余白って、個人的には大事だと思う。

 美しい召喚魔法陣を見ていると、少し気持ちが落ち着いてきた気がする。そうして出来たほんのわずかな隙に、湧き上がってきた欲求がある。

 写真、撮りたい。

 こんなことなら、スマートフォンにしておけばよかった。私の携帯はガラケーだ。災害時に便利だろうから買い換えようと思ってはいた。けれど他人と簡単に繋がり過ぎるぎるのも、人間関係を広げ過ぎるのも面倒だったから、先延ばしにしていたのだ。

 私の携帯は古い。よって、カメラ機能がイマイチだ。それでも、記念に撮っておきたい。この綺麗な模様。

 あぁ、だけど、武装集団がいる。うっかり通勤バッグの中に手を入れたら、剣を振り上げられそうだ。

 召喚魔法陣から目を上げた。

 まだ誰も何も言わない。

 一体何をどうしたらいいのか。武装した人と目を合わさないように、視線を右に左にと揺らしながら、ふと気づく。

 空はどうなってる?

 そっと見上げた。

 星、星、星。

 松明たいまつの明るさに負かされることなく、たくさんの星が見えた。こんな時だけど気持ちが上がる。街育ちの上、目が悪いから、私は一等星くらいしか見たことない。この空でも特別よく光っているのが一等星のはず。

 でも知っている星座がない。

 そして月。

 大きい。見慣れた月より、明らかに大きいし、その中の影が違う。

 確信できてしまった。

 地球じゃない。

 星空の美しさに上がった気持ちが、一瞬で潰れて胸にのしかかる。自分の呼吸が早く、荒くなっているのに気づいて、少し息を止めた。ここでパニックを起こすわけにはいかない。武装集団に囲まれているのだ。ゆっくりと息を吐き、深呼吸が出来るのを確かめた。

 大丈夫。愛ちゃんとの約束がある。

 それからやっと、灯りが松明だけでないのに気づいた。背後からの光を感じる。振り返ろうかどうか迷った時だった。

「醜女ではないか。」

 咎める、大きな声があたりに響いた。

 右側の少し離れたところに、一段高くなってる場所があった。学校とかの戸外イベントで見かける屋根だけあるテントみたいなものがある。天幕って言う方が雰囲気にあっているかもしれない。

 たくさんの松明でとても明るい。

 それなのに気がつかなかったのは、視野が狭くなっていたからだろう。自分で感じる以上に、私は恐怖にとりつかれているのかもしれない。

 とにかく天幕の下の人たちを観察する。古代ローマ風のデザインの、色とりどりの服装の男女が数人、不満そうな顔で私を見ている。

 声を上げたのは、天幕の下、一番真ん中で偉そうにしている中年男性だ。

 この流れだと、『醜女』と貶められたのは私よね。

 確かに私は美人ではない。大荷物を抱えた姿は、ちょっと滑稽かもしれない。彼の側にいる女性たちはみんな美しい。

 けど! 初めて会った人に、いきなり言う言葉ですか。この国に礼儀はないわけ?

 むかついたが、言葉は通じた。そこは一安心だ。日本語じゃないのに、わかるのは、愛ちゃんが言っていた『生活に不自由しない魔力』のおかげだろうか。

 頭の中で疑問が駆け巡る。鳴り響く警報が聞こえてきそうだ。

 落ち着け、私。とりあえずの仮定をしよう。

 目の前に居る白いローブの集団は、きっと召喚をした魔法関係者。

 武装集団は当然、この国の兵だろう。

 失礼な事を言った男性は、立っている場所から見ても権力者に違いない。一緒にいる人たちは家族か親類縁者、または政治的関係者か。見たところ年配者が少ない。前者のように思える。

 天幕のすぐ外には、いかにもかしずいていますというような、少し視線を落とした人たち。女性もいる。

 さらに外側を囲む武装した人たちは護衛だろう。この人たちは抜刀していない。

 仮定でなく、はっきり分かる事もある。

 歓迎されていない。

 呼び出しといて、どうしてなのか。そこがわからない。ものすごく迷惑だ。

「そこから出てこい。」

 今度は白ローブの年配男性が、横柄な態度で言い放った。この人の額の髪の生え際は、かなり後ろに後退している。

 なんでそんなに上から目線なの?

 私を呼んだのは、そっちの勝手でしょう。まずはそこを謝って、どうして呼んだかを説明して欲しいと思うのは間違ってる?

 今すぐ管理人さんにチェンジを願い出たいが、この失礼な国の名前くらいは知りたい。

 それに、私の後ろにある光源も気になる。

 迷わなかった。結果がどう出るかはともかく、元々私は、決断だけは早い。

 ここは、愛ちゃんのアフターサービスが有効と信じて行動する。

 まずは背後の確認だ。武装集団を刺激しないように、私は、両手に大荷物を持ったまま、ゆっくりと振り返った。

 それが目に入ったとたん、肩が跳ねる。

 吃驚した。凄い。

 大きな水晶の結晶の塊があった。

 いや、水晶ではないだろう。底の方がオレンジ色に光っている。先に行くにつれて、白光となっていた。

 けれど形が水晶の結晶に似ている。六角柱が四方八方に重なり合って、長く短く、様々なサイズの柱が突き出ていた。その先が、綺麗にカットされたように尖っているものもあれば、斜めに切れているものもある。百六十五センチの私の背より一メートルは高く、幅は両手を大きく広げたくらいある。

「おい、お前。こちらを向け。そこから出てこい。」

 白ローブの人の、苛立ちを含んだ声が飛んできた。

 応じる義理はないが、こちらも、このオレンジ色が底光りしている結晶体をいつまでも眺めてはいられない。彼に向き直った。

 すると、また天幕の方から、一番の権力者と思われる人物の声が上がる。

「異界から来る者は、絶世の美女であるはずだろう。」

 目を見開いてしまった。そんな決まりがあったんですか? 管理人さんから聞いてませんけど?!

 白ローブさんは、私を気にしつつも、空気を読まない権力者を優先した。

「必ずしもそうとは限りません。陛下。」

 陛下と言った。最高権力者か。とするとあの天幕の人たちは王族。

 そして私は、白ローブさんに、暗に美人じゃないと言われた。確かにそうだけど!

「やり直せ。美女を呼べ。」

 言われた白ローブさんは、顔を少し引きつらせてる。

 管理人愛ちゃん情報だと、百年に一回くらいしか起きない事だものね。やり直せと命じられても、上手くいくか分からないよね。

「陛下、次がいつになるかはわかりません。我らも四百年ぶりに異界人を受け入れるのです。とにかく、これがいれば天災はおこりません。」

 これ、とか言われた。全然大事にしてくれそうにないよ、愛ちゃん。

 王の隣にいた女性が、彼の腕に手をかけた。その艶やかな仕草から、王の妃らしいと推測できる。彼女が別の提案を出してきた。

「王太子に下げ渡せばよろしいではありませんか。」

 すぐに声を荒げて反論したのは、王を挟んで反対側にいた若い男性だった。

「わたしには婚約者がいます。」

「解消すればいいでしょう。異界の者には強い魔力がある。生まれてくる子も強い魔力を持つ。国のためになすべきことは何か、容易にわかるでしょう。」

 天幕の下には他にまだ、王様と同じ年代と思われる男女がひと組と、若い男性がふたりいる。大人の男女は知らない振りをしているが、若い男ふたりは何だかよくない笑みで、妃と王太子のやりとりを見てる。

 王太子が、鼻で笑った。

「醜女でなければ、陛下が侍らせていたでしょう。あなたの立場が危うくならなくてよかったですね。」

「無礼な。謝りなさい。」

 なんか、お家騒動が始まった。複雑な家庭の事情がありそうだ。

 あっちは放っておこう。

 知りたいことは、一番反応がよさそうな白ローブさんに聞く。

「ここは、どこですか。」

 初めて私が声を出したせいだろうか。武装集団がまた剣を構え直す音がした。その後の静かがいっそう危機感をあおって来るが、ほっとしたところもある。この人たちは命令されなければ、きっと動かない。

 静かにひとつ、深呼吸をしてから、もう一度尋ねた。

「ここはどこですか。」

 見かけからすると、白ローブさんは年長者だ。散々失礼な事を言われたし、されていると思うが、一応丁寧語を使う。相手に合わせて、自分の品まで落とす必要はない。ただ、丁寧語は保つけど、心の中では相手のことはもう呼び捨てにする!

 白ローブは、何故か驚いた表情かおを見せた。予想外の事に言葉に詰まったという感じだ。それがどうしてなのか私にはよくわからない。けれど彼はすぐに気を取り直したようで、胸を張った。

「お前が知る必要はない。これからは、私がお前の主だ。面倒を見てやるのだ。大人しく命令を聞いて、こっちへ来い。」

 は? 主? どういうこと?

「私と、あなたの間に、主従関係があるというのですか。」

「そうだ。」彼は堂々と言い放つ。「私が召喚したのだ。私が主だ。」

 そんな話は、管理人の愛ちゃんからは聞いていない。それに。

「あちらの方々は、私に対して違う扱いを提示されてますけど?」

 私の視線の先は、もちろん天幕の下の人たちだ。下げわたせとか、子どもがどうとか、セクハラ発言をされてます。

「余計な事を言うな!」

 白ローブの上げた声には、焦りが混じってる。

 私は、天幕の方をちらりと見てみたが、かの方々は、白ローブの発言を撤回させる気はないようだ。

 結局、天災さえ防げればいいってことなのだろう。

「そこから出てこい!」

 だんだん大きくなる白ローブの声。

 なんか怪しい。どうしてそんなに出て来いと言い続けるのか。

 管理人さんのアフターサービスの事を知っているのだろうか。

 愛ちゃんは、他の国への移動は召喚魔法陣の上でと繰り返していた。簡単にここから離れるわけにはいかない。

 それに、やっておきたいことがある。

 周りにはっきり聞こえるよう、私は大きめに声を上げた。

「今から記念撮影をします。」

 記念撮影と言う言葉は通じないかもしれないが、先に言っておく。いきなり襲いかかられたくない。効果がない確率の方が高そうだけど。

「きねんさつえい?」

 案の定、白ローブに聞き返された。

「そうです。写真にして思い出を残すのです。」

 いい加減な説明をしてると自分でも思う。相手も眉をひそめている。『写真』ということばに覚えがないのだろうか。

 私の前に召喚された人って、いつ頃の人だろう。

 この国では四百年前ぶりらしいけど、他の国には百年程前に誰かが来てるはず。その頃なら私達の世界にカメラはあった。この世界に無くて、話題にはならなかったのかな。もっともそれも、どちらの世界も同じように時間が進んでいるという前提での推測だ。

 各国間で、異世界人についての情報共有をしていないということも考えられる。

 これは今、考えても仕方がない。

 私は、もう一度声を張り上げた。

「今、カバンの中から携帯を出します。武器じゃありませんから、襲わないでください。」

「携帯を出す?」

 いっそう怪しげに言われた。変だと思われるのは仕方がない。

 私たちにとっては、『携帯』は『携帯電話』だけど、彼らには『携帯』は本来の言葉どおりの意味しかないだろうから、おかしな言い回しだろう。

 だけど説明は難しいから、しない。相手が戸惑っている間に、通勤カバンの中へと手を入れた。

 まわりの武装集団の空気が尖った。誰かが一声かけたら、飛びかかってきそうだ。

 こんな恐怖を感じながらも、写真を撮りたい私って、馬鹿かもしれない。いや、馬鹿だ。けどこれは証拠にだってなる、はず。

 紙バッグをふたつ肘に掛けた右手で、無事に携帯を取り出した。

 白ローブに見えるように掲げて、二つ折りガラケーを開く。

 辺りがざわついた。白ローブも目を見開いている。そこに恐怖が見えたけど、あえて無視した。女性一人を大勢で取り囲み、怖い思いをさせているのはあなた達だ。

 動揺してくれているうちに、片手で操作。フォト機能を起動。

 暗いけど、召喚魔法陣はほどよく光っていて、きれいに映りそうだ。

 彼らが騒ぎだして、パニックになる前に、撮る!

 疑似シャッター音が流れると、武装集団の構えが低くなるが、構わずに撮る。撮ってるうちに、何も起こらないって分かるはず、と自分に言い聞かせた。

 美しい召喚魔法陣のモチーフを三枚。

 オレンジ色に発光している大きな結晶も一枚撮る。大きいから全部入らない。距離をとりたいけど、周りを刺激したくないから諦める。

 次は白ローブを一枚。武装している人たちを一枚。最大ズームで天幕の下の人々を二枚。

「何を、何をした!」

 白ローブが、やっと硬直から戻ってきたのか叫び出した。復帰に時間がかかってくれて助かった。

「写真です。記念撮影です。思い出になります。」

 写真って、やっぱり通じないかな。

「呪いおったか。」

 白ローブが憎々しげな形相を向けてくる。

 凄い返しだ。今度は私が聞き返す。

「呪い? この世界には、そんな恐ろしいものがあるのですか?」

 魔法があるってことは、呪いがあっても不思議じゃないってことか。今気づいた。なんかいろいろ怖いよ、この世界。

 右手には携帯があったけど、私はそのまま両掌を彼に向けて、軽く上げる。抵抗しませんという意思表示だけど、通じるかな。通じないかも。言葉にする。

「そんな怖いこと出来ません!」

「嘘をつけ! それを捕えろ!」

 白ローブがとうとう武装集団に命令を下した。

 愛ちゃん、アフターサービスが本当じゃなかったら、私ここで殺されるよ。死んだ方がマシっていう目にだけは遭いたくない。

 キーワードを頭の中に思い浮かべた時だった。

 召喚魔法陣が強い光を発した。

 踏み込もうとしていた武装集団の動きが止まる。

 一番外側の円が特に強く、上に向かって光を放ってる。

 こんな時だが、とてもきれいだ。

 この召喚魔法陣は、私を守ってくれようとしている。

 そして、白ローブが、やたらと自分から出てくるように言った理由がわかった気がする。こうなる可能性を知っていたのかもしれない。過去にもこういうことがあったに違いない。

 逃げなきゃ。ここにはいられない。

 この国は無理。

「本物だ。」

 誰かが言った。武装集団の人だったように思う。

「本物だったんだ。」

 ざわめきと動揺が起った。

 本物って、今さら何を言っているの? 召喚したのはそっちでしょう。

「ガッド、何とかしろ!」王が叫んでる。「行け、我が騎士よ! あれを捕えるのだ!」

 え? この武装した人たち、騎士だったの? 白ローブの一団と違って、制服の支給はないんだ。黒っぽい色だけは全員同じだけど、もしかしたら、暗いから同じ黒に見えてるだけかもしれない。デザインはバラバラで、見栄えが良くない。

 私の騎士像は、完全に乙女的妄想だった。

 いや、殺気だった人たちを残念がっている暇はない。

 別の国に連れて行って貰わなくては。

 そんな事を考えてた一方で、気づいたことがある。この召喚魔法陣が発光して、時間を稼いでくれたおかげだ。

 私、大声でキーワードを言うところだった。管理人さんは、アフターサービスの説明が出来ないことが多いと言っていた。彼らがこのこと知らない可能性もある。敵対行動を起こしている人たちに、こちらの情報を与えるべきじゃない。

 荷物をしっかりと持ち直す。

 この国を出て行く前に、私の気持ちを明らかにしておく。

 最初から喧嘩腰な人たちだった。私が他へ行ったら、その国を攻めてきそうだ。何を言ったところで阻止は無理かもしれないが、言葉の力を信じる。言質をとるっていう駆け引きだってあるんだから、なんらかの効力はあるはずだ。

「私は、争い事を好みません! 貴方たちと和解できると信じています!」

 召喚魔法陣を囲む白ローブ達と騎士達の中に、幾人かだけど戸惑いの表情が見てとれた。

 けれどそれも一瞬で吹き飛ばされる。

 最高権力者である王の声が響いた。

「捕えよ!」

 それに押されたように、どこかで雄叫びが上がった。大きな圧力のある声が、広がり重なって、召喚魔方陣の光を超えて、私に向かって来ようとしている。

 愛ちゃん、助けて。

 私は右手を口元に引き寄せる。

 これで管理人のアフターサービスがなければ、私の人生は終わりだ。

 早口で呟いた。

「管理人さん、チェンジ。」

 掠れた声になってしまった。

 次の瞬間、静かな場所にいた。


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