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【書籍化12/1発売 コミカライズ決定】3度目の人生は、忘れ去られていた王女様でした(旧:3度目の転生は、忘れ去られていた王女様でした)  作者:


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束の間の休息


「概ね説明はしたから、そろそろ休息が必要だな」

「へ……?」

「顔色が悪いぞ」

「少し疲れてはいるけど、元気だよ?」

「そう言って後で寝込むだろ?」


自身の頬や額を触って確認するも、熱や頭痛、寒気もなく、特に身体に異変はないのだが、エドが言うならそうなのだろうと大人しく言うことを聞くことにする。


「それに眠そうだしな。親父、リスティアを寝かしてくる」

「ああ。部屋は二階の一番奥を使え」

「了解。よっと……!」


軽々私を抱き上げるエドに凭れながら、アルドおじさんと何か話していた二人に向かって、私はここで一時離脱だと小さく手を振る。


「少し重くなったか?」

「……失礼な」

「痩せすぎだったから丁度良いくらいだ……っ、ちょ、肩を噛むな!」

「……」

「よし、俺が悪かった。女性にその手の話は禁句だとお袋が言ってたしな」


私の脂肪、主にお腹周りのぷにぷにお肉は、美味しい物を食べ、寝るといった怠惰な生活の末に蓄えられた、言わば財産のようなものである。その辺の脂肪と一緒にしてもらっては困るというもの。


「背も伸びた気がするしさ、たった数ヵ月しか離れてないのに成長って早いよな」

「……ふふっ」

「何で笑うんだよ」

「だって、エド、お父さんみたい」

「お父さん?優しいお兄様の間違いだろうが……っと!」

「わぷっ……!?」


階段を駆け上がったエドの肩に顔をぶつけ、報復と抗議の意味を込めボスボスとエドの背中を叩くも、「もっと右」と言われ脱力する。


「リスティアがまだ喋れないときからずっと一緒にいたのにな」

「……」

「仕方がないことではあるけどさ、寂しいよな」


返答を求めているわけではなく、これは独り言なのだろう。

血は繋がっていないけれどエドは私の大切な家族だと、心の中でそう言い、目を瞑る。


「寝てていいぞ。そのまま運んでやるから」


長い旅路の疲労、または故郷に戻ってきた安堵感からか、背中を優しくトン、トン……と叩かれ、激しい眠気に襲われている。

重い瞼を持ち上げ二階の奥へと進んで行くエドを見ると、「今日は俺の部屋」と笑われた。


「お前の部屋は小窓しかないし、何かあって逃げるときにあの高さは致命的だろ?念の為……って言っても、あの二人がいて危険なことはないだろうけど、逃げ場は確保しておきたいよな」


エドの言う私の部屋とは、アルドおじさんがこの家に用意してくれたもの。

それは母が亡くなって少し経った頃に提案され、祖母の「頼れる人はいた方がいい」という言葉に後押しされ、申し訳なく思いながら用意してもらった。

そのときに何か希望はあるかと訊かれ、仄かに憧れていた屋根裏部屋をゲットした。

リッタおばさんが嬉々として内装を手掛けた住み心地のよい部屋なのだが、どうやら致命的であるらしい、うん。


「おーい、起きてるか?った、分かったから、止まれ」


まだ辛うじて起きていると、エドの肩に頭をゴツゴツぶつけておく。


「よかったな」

「……?」

「村を出る前は父親なんて必要ないって言ってたけど、こうして一緒に戻って来たってことは、ちゃんと親子になったってことだろ?」


過ごした時間は短く、親子と言うにはまだまだ他人。やっと互いが思うことを口にし、親子としての一歩を踏み出したばかり。


――それでも、もう捨てられることはない。


エドの言葉に苦笑し、眠りに身を委ねる。

独り言のように話し続けるエドに相槌など打てず、屍のように動かずただただ運ばれていく。


「よし、下ろすぞ」


完全に眠る瞬間。


「……っうえ!?」

「はい、枕と毛布。ふあーっ、俺ももうひと眠りするか……」


ベッドに下ろすと言うより落とされ狼狽える私を余所に、エドはさっさと寝支度を済ませ隣に寝転ぶ。押し付けられた枕を抱き、顔に被せられた毛布の中でもごもごしていると、寝かし付けるかのようにまたもやトン、トン……と優しく肩を叩かれる。

これにはもう降参するしかなく、眠気に抗うのを止めた。


「ゆっくり寝ろ。起きたら忙しいからな」


その言葉に小さく頷き、そのまま意識を手放した。







「んっ……」


腕の痺れに目を覚まし、どれくらい眠っていたのだろうか……と寝返りを打つ。

くわっと欠伸をし、もう少し、あとほんの少しだけ、と毛布にくるまると。


――キン。


「……っ」


金属がぶつかるような甲高い音が聞こえ、ガバッと毛布を剥がし、即座に起き上がった。

隣に寝ていた筈のエドの姿はなく、窓の外からは喚き声や金属音が途切れることなく聞こえてくる。


「エド……」


何が起きているかとベッドから下り、窓へ駆け寄ろうとした私は。


「わっ……!?」


いつぞやのように背後からお腹に腕が回され、宙ぶらりんの状態で捕獲されてしまった。


「窓に近付くな」

「ふぐっ、み、皆?」

「ここまで人が上がって来ないのだから、無事だろう?」

「そういうものなんですか?」

「さあ?」

「さあって……」

「もう少しで制圧するから、大人しくしていろ」


荷物のように脇に抱えられ、これではお腹が痛くなると、フードの付いた長いマントの裾を引っ張る。


「……そこでジッとしていろ」

「へ、わぶっ……!」


ベッドに放り投げられぶつけた鼻を押さえていると、バタバタ……と階段を駆け上がって来る音が聞こえ、身を固くする。

緊迫した空気に呑まれそうになりながら、ゴクリと唾を呑み込む。



「静かにしていろ」


足音がこの部屋の前で止まると、ふわっと広がった黒いマントから剣が……。

直後。

ドン、ドン、ドン、と三度扉が叩かれ、一拍置いたあと扉が開かれた。




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― 新着の感想 ―
王さまはポンコツなのか、はたまた一網打尽にする機会を伺っているのか。
本人全く自覚がなくとも、実際は大事に隠されてきたお姫様だからね…。 粗食でサバイバル仕様なのは生存確率を上げるため。生き延びることに重点を置かれた教育方針だったから野生児になったけど、周囲の護衛騎士や…
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