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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第四章 聖女編

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ガインの目線

 マリーとテッドが夕食の後に報告したい事があると言い出した。


 こいつらの留守中は家の中が静かだったのに、戻って来たらすぐこれだ。

 若者はいつも賑やかでいいな。


 全員を集めたリビングに、マリーとテッドが酒やつまみを並べだす。

 自分達にお茶を入れると、二人揃って前に立ち満面の笑みだ。


「実は私達、Aランクになりました」


 テッドが胸を張ってそう言うと、隣でマリーが小さく手を叩く。


「おお、それは凄いな!」「随分早いね」「よくやった!」「流石わしの孫じゃ」


 それぞれが一斉に喋りだしマリーとテッドをもみくちゃにした。

 もちろん俺も嬉しくて、二人の頭をゴリゴリと撫でてやる。


「「ありがとうございます!」」


 とうとうあいつらが追い付いて来やがった。

 子供の成長はあっという間だな。テッドなんてすっかり大人の男だ。



「よくやったなお前さん達。見込み通りだ。はっはっはっ」


 シドさんがグラスに酒を注ぎながら、楽しそうに笑っている。

 それを見た本日の主役達が揃って席を立ち、シドさんからグラスと酒を奪い取った。


「師匠! あの崖の攻略の方がキラービーより大変だったのですよ!」

「そういう事は先に言って下さい。事前に準備をして行けますから!」


 二人揃ってすごい剣幕だ。

 シドさんはお構いなしに、涼しい顔で笑っている。


「はっはっはっ。何か問題があったのか?」


「いや、問題だらけですよ! 風魔法で飛んだのですよ?」

「そうですよ! 大変だったんですから!」


 それを聞いたシドさんは更に嬉しそうな顔をした。

 二人からグラスと酒を奪い返すと一口飲んで笑いだす。


「わはは。何を言っている。結界の中で優雅に過ごしてたんだろ? んん?」


 それを言われた2人は「くぅ」と(うめ)き、脱力した。


「ふふふ。流石、師匠。何でもお見通しですね」

「はは。本当ですよ。どこまで計算していたのですか?」


 あのテッドも随分と言うようになったもんだ。

 感情を表に出せる様になり、意見も言える様になり。見ないうちに成長したな。


 そして、こっちの男前も余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)で笑ってやがる。


「よっ。ハート。テッドがマリーの警護の指揮を執るって張り切ってたぞ」


 シドさんとはしゃぐ二人を見ながらそう言うと、ハートは静かに笑って肩を(すく)めた。

 まったく。ハートにとってはどこ吹く風だ。


「そう簡単に譲るつもりはないよ」

「成長期をなめてかかると痛い目を見るぞ」


 ハートがしばらく黙って俺を見る。

 空いたグラスに酒を注ぐと、それを口に運んで首を振った。


「フン。望むところだ」

「分かっているならいいんだが」


 相棒としてなら、テッドの方がマリーとの相性はいい。


 あいつは自分の実力を正当に評価する賢さがある。

 だから無理に敵と戦わず、マリーの護衛だけに徹する事が出来る。


 危機感の薄いマリーが共闘するなら、身の安全を気にする事なく戦えるテッドが最適だ。


 ハートは昔から効率とヘイトコントロール重視だからな。


 マリーには自分の身だけを守らせて、ハートが敵を遠ざける。

 マリーの為なら俺達だって平気で(おとり)に使われる。


 ふと、二人を見ながら物思いに(ふけ)っていると、テッドがこちらにやって来た。


「ガインさん。少しいいですか?」

「おう。どうした?」


 さっきまで笑っていた青年が急に暗い顔をする。

 若者の情緒は不安定だな。


「ガインさん。私はあの時、子供を殺すべきでしたか?」


 テッドが思いつめたように俺に聞く。

 俺はそんなこいつの肩を、笑いながらポンと叩いてやった。


「いや、あれで正解だ。あの時テッドが子供に構っていたら、刺客が他に潜んでいた場合に後れを取る。だから子供は放置し応援が来るまで、ハートと二人でマリーの警護に当たるのは当然だ。石を投げた町人に気を取られても同じ事だ」


「子供が襲ってくる可能性は?」

「視界の中からの攻撃なんて、お前達なら余裕だろ? 目的はマリーの警護だ。敵を倒すことじゃない」


「そう……ですね……」


 テッドは憑き物が落ちたようにすっきりとした顔になる。


「ガインさん! ありがとうございます!」

「お、おう」


 よく分からないが、急に笑顔になってみんなの輪の中に戻っていった。

 まったく、あいつは何を悩んでいたんだ。



「フェルネットさん。お茶、ありがとうございました」

「ああ、マリー。テッドに渡したやつだね。知り合いがブレンドしてくれたんだ」


 フェルネットが先日、お茶の葉っぱがどうのと騒いでいたが、やっぱりマリーの為だったのか。


 抜け駆けしやがって。


「おい。お茶なら、わしも探してきたぞ」


 爺さんもかよ!


 爺さんがお茶の袋を開けて見せると、部屋中に柑橘系の香りが広がった。


「わぁ、いい香り。おじいさまありがとう! この香り大好きなのです」

「そうか。わはは。喜んでくれてわしも嬉しいぞ」


 マリーが爺さんに抱き付き甘えている。爺さんもデレデレだ。


「お茶を入れましょう」


 テッドが袋を受け取ると、慣れた手つきでお茶を入れてみんなに配る。


「ガインさんもぜひ」


 テッドがカップを渡してくれた。


 まだまだテッドには勉強が必要だ。

 だが一度(ひとたび)殺意がマリーに向けば、誰であろうと躊躇(ちゅうちょ)なく切る。


 それは俺達も同じだが、あいつは確実にやるだろう。


読んでいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 1.更新ありがとうございます。  育ての親である黒龍の皆さんとマリーさんを見て「逆ハーレム」と思ったのは私だけですが、マリーさんはクズ両親とリリーの搾取とか色々あるのでありのままの生き方を…
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