結界最強
確かに師匠の言うように、わんさかいる。
既にテッドさんは蜂に水の刃を当てていた。
私は少し考え、風魔法で竜巻を作り大量に処理をする事に。
大量に処理出来るとはいえ、これじゃ時間がかかる。
終わった頃には二人共ぐったりだった。
散々空も飛んだのに、無駄に魔力を消費しすぎだって。
もっと効率的に出来ないのかな……。
「A級って凄いですね」
「ははは。本当だね。はー、流石に魔力切れだ。マリーは?」
肩で息をしているテッドさんが顔を上げる。
「私はまだ平気です。それよりも、この大量の死骸はどうしますか?」
「これは畑などに撒く害虫除けの材料になるんだ。全部持って帰ろう」
この蜂が薬草園でも使っている、あの粉になるんだ。
知らなかった。
風魔法で袋に詰めて、空間魔法に収納する。
解体作業が無ければあっという間だ。
「また来ますかね?」
「多分ね。結界の中で安全に戦えるし、中々いい魔獣かもね」
「それでは後で、もっと効率的に倒せる方法を考えますか」
「そうだね」
すっかり日が暮れたので野営の準備を始める事に。
ちょっと怖くて結界を強めに張った。
何かいい方法が無いのかなぁ……。
「マリー? 手が止まってるよ」
「あ、すみません。食事中に。何かいい方法が無いかなぁと」
私は慌ててサラダを口に入れる。
このドレッシングも姉さん直伝。
あれから姉さんには色々な料理を教えて貰っている。
私も女子力を付けたいし。
「水をかけると羽が重くなって、動きが遅くなるけど……」
「では、明日は思いっきり水掛けて見ましょうか?」
「試してみる価値はあるかもね」
「はい!」
よし! 明日は水を撒いてみよう!
「うふふ。なんだかワクワクして来ますね!」
「ははは。私もだよ」
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朝起きたら結界の周りにキラービーの死骸が大量に落ちていた。
おそらく寝ている間に襲撃され、結界に体当たりして死んだらしい。
……。
いや、『いつもより強めに何か当たるな』くらいは分かっていたよ。
でも、虫だからね。虫なんて普段でも当たるし、数が多いから気にしなかった。
「マリーこれ……」
「ええ。びっくりですね」
今もバチバチと十匹くらいが体当たりをしている。
テッドさんが結界のギリギリまで近寄って、面白がって挑発をしていた。
「テッドさん。このままここにいるだけで、良くないですか?」
「そうだね。それが一番効率がいいね」
そう言うとテッドさんは楽しそうに持って来たお茶の葉を選び始める。
選んだ茶葉を手にするとお茶を入れ、私の前に置いてくれた。
既に結界内にはお茶の香りが広がって、幸せな気持ちになる。
私はカップを手に取り香りを確かめた。
「ああ、とてもいい香りのお茶ですね」
「これはね。フェルネットさんからマリーへの差し入れなんだよ」
テッドさんが茶葉の入った袋を手に取りそう言った。
「私好みだと思ったら!」
「ふふふ。柑橘系の香りが好きなんだね」
そうなの、そうなの。
これってアールグレイに似た香りなの。
「はい。とても懐かしいというか、ホッとする香りなのですよ」
ハートさんも私の影響で柑橘系の香りが好きなのよね。
カップにゆっくりと口を付けると、思わず顔がほころんだ。
はぁー。それにしても癒されるなぁ。
私達は結界の中で本を読んだりお茶をしたり、時々風魔法で蜂の死骸を片付けたり。
「キラービーも必死ですね」
「うん。あんなに大群を引き連れて来てくれるとはね」
あちこちから蜂がやって来て、なんだか申し訳なくなってくる。
「でも、諦めずにずっと来てくれると楽ですね」
「ははは。まったくだ」
翌日はシルバーウルフの群が通り、キラービーの毒針が皮膚を貫通しない事を知った。
結界の中からシルバーウルフをめがけ、水鉄砲の練習をするテッドさん。
コントロールの練習の成果が見て分かる。
……。
結界って最強。
シルバーウルフの毛皮と牙を回収し、今日の夕飯はお肉だった。
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