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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第四章 聖女編

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迷惑な訪問者

 朝から窓の外がガヤガヤと騒がしく、神官達もバタバタと走り回っている。

 教会の正面入り口の方で、何やらトラブルがあったようじゃ。


「何かあったのか?」


 手を止めて秘書のイサールに尋ねると「調べてきます」と部屋を出ようとした。


「待てイサール。いや、いい。後で報告が来るのを待つ」


 イサールが振り返りドアから手を放しかけると、外から白神官がすり抜けるように入って来る。


「教皇様。ご報告が遅れて申し訳ございません。約束も無く聖女様に会いたいと騒ぐ者への対応に手間取り、お騒がせしております」


「聖女に?」


 最近やっと押しかけて来る者が減ったというのに。

 はー。またか。


「はい。会うまで帰らないと。あまり騒ぎを大きくするのも如何(いかが)なものかと思い……。拘束しますか?」


 白神官は、ほとほと困り果てた顔じゃ。

 ぞんざいに扱って民を刺激したくはないが、限度もあるし……。


 だからと言って、たいした処罰に値しない者を地下牢で拘束し、食事を与えて面倒を見てやるのもバカバカしい。


 それに今は御堂の修復の件で白神官と喧嘩した者達が、反省の為に牢に入っておるはずじゃ。


 いざとなったら兵士に渡して国に差し出せばいいか……。


「して、用件は?」

「先日の聖女様の派遣の件で、謝罪に来たと」


 聖女派遣の件で謝罪?


「まさかマリーに暴言を吐いた町の?」

「はい。おそらく」


 石を投げたあやつらか!

 なんて身勝手な。


 自分達が許されたいだけではないか。

 こちらの都合も考えられぬ様な者の話など、聞く必要がないわ。


「対応する必要もない。ましてや暴言を吐いた者が聖女に面会など、おこがましいにも程がある」


「では如何(いかが)いたしましょう?」


「帰らぬのなら、王都から(つま)み出すと伝えよ。第三聖騎士を多めに連れて行け」

「はっ」


 神官が速足で下がって行った。


 後ろに立たせるだけでも威圧になるだろう。

 あやつらは見た目が荒々しいからな。


「いったいあの町の教育はどうなっておるのじゃ……」


「領主には町民の教育を徹底するよう、申し入れたのですがね」


 モーラス司教がわしの独り言を拾う。


「それでこのざまか」


 呆れてものが言えん。


「再度領主に町民を再教育するよう、私から直接申し入れておきます」

「うむ」


 モーラス司教が鬼の形相で部屋を出て行った。


 あの件は、モーラス司教も随分と立腹していたからな。

 普段なら自ら動くことはないのだが……。


 ずっとわしと一緒にノーテからの報告を聞き、我が子のようにマリーの事を気にかけていたようじゃったしな。無理もないか。


 それにしてもマリーの初仕事なのに、申し訳ない事をしてしまったのぉ。

 ガインは平気だと言っていたが、あのテッドが落ち込んでおったくらいじゃし。


 報告書ではマリーの見事な対応で、予想していた死者数を大きく下回り、かなりの命が救われたとあったのに。


 何の不満があったというのじゃ。

 まったく。


「徹夜で対応した聖女など、前代未聞じゃ……」


 最後に水魔法に風魔法などを公衆の面前で使ったと報告され肝を冷やしたが。

 騒ぎにもならなかったようじゃし、女神に愛された聖女だと噂も流しておいた。


「教皇様。何とか引かせる事が出来ました」


 先ほど出て行った白神官がホッとした顔で戻ってくる。


「それは良かった。流石に聖騎士まで使って追い出すのは目立つからの」

「はい。第三聖騎士を見たらすぐに下がってくれました」


 やはりな。

 あの強面(こわおもて)(たま)には役に立つものだな。


「下がってよい」

「はっ」


 白神官が下がりかけた時、外から大きな声がした。

 慌てた白神官が窓を開けて辺りを見回す。


『聖女さまー、人殺しって言ってごめーん』

『石投げた事、悪かったってー』


『おーい、会ってくれよー』

『謝りに来たんだってばー』


 教会に向かって叫ぶ大きな声が、はっきりと聞こえた。


 なんて馬鹿なことを……。


 絶対に許される事ではないが、親が死んだばかりで動揺していたのだろうと。

 そしてまだ判断がつかぬ子供であった事を考慮し、再教育の処分で釈放してやったのに。


 事を荒立てない方向で慎重に処理をし、あの町の処分の再検討が次の議題だったのだが……。


 はぁー。まったく、なんてことをしてくれたのだ。


 辺りで白黒の神官達が「人殺し?」「石を投げた?」とざわめきだした。


 彼らにとっては神にも等しい聖女なのに。

 今の騒ぎが、あの件の加害者だと知れたらパニックが起きる。


 出かけたはずのモーラス司教が顔を真っ赤にして戻って来ると、立ったまま手紙を書き始めた。


 怒りに震えながら綿毛の先に手紙を付け、窓から飛ばす。


 これから急いであの町の処分を協議し直さなければならないな。

 それより彼らの処罰が先じゃな……。この忙しい時期になんて迷惑な。


「急いで委員達を集めてくれ」

「おおせのままに」


「町長も呼び出さねばな……」


 イサールが出て行くと、モーラス司教がわしの顔を見て(うなず)いた。

 ああ、さっきの手紙は町長の呼び出しだったのか。


 モーラス司教が暴走しないと良いのじゃが……。


読んでいただきありがとうございました。

ブックマーク、評価、いいね頂いた方、感謝してます!

誤字報告、いつも本当にありがとうございます!

散々間違えてお騒がせしました!

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― 新着の感想 ―
とりあえず教会に来た馬鹿達は吊ろっか♪その馬鹿達の首を街に晒して町長による説明と再教育して、そのことを他の町にも伝達だね。
[一言] ここはトロッケンハイトさんのコメントに書いてあった通り、更地にして「街の存在時代がなかった」扱い(平たく言えば存在抹殺刑)と晒し刑に加えて、(個人的には)街の住民の皆様全員には広場の前で斬首…
[一言] 村を更地にし大罪人は晒し刑にして見せしめにしてもいいと思う それだけの事をやって更にこの始末だし
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