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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第一章 旅立ち編

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始めての冒険者ギルド

 すごい、すごい、すごい。

 町の中は、村と違ってお店が沢山!

 人もいっぱいで目が回る。


「寒くないか? 後でみんなでご飯食べるから、買い食いは我慢な」


 露店の串焼きに目が釘付けの私をハートさんが笑う。


 くぅ。

 がっつり濃い味のあったかお肉が食べたいよ。


「どこに向かっているのですか?」

「冒険者ギルドだよ。みんな先に向かったから」


 私たちは少し観光しながらゆっくり向かって来るように言われたらしい。


 途中で冬に向けて私のあったかコートや冬服を沢山買ってくれる。

 そういや冬服の着替えは持って来なかった。

 最近は寒いと毛布かぶってたし。


 お店の人に「お父さんそっくりね」って言われてびっくり。

 そっくり?


 ぐるぐる巻きの毛布を剥がされてその場で着替えさせられた。


 それにしても……。ハートさんてモテモテだな。

 女子がみんな振り返る。

 青緑の目とベージュの髪色が同じだし、私は娘だと思われてるのかな。


 そこでポンと手を打った。


「ん? どうした?」


「いや、ハートさんと私って、目の色と髪色がお揃いじゃないですか。だから親子に見えるので、ガインさんはハートさんを、私の護衛につけたのかなって」


「そうだよ。この町は比較的に治安はいい方だけど、子供の誘拐はとても多いからな。S級冒険者の親子なら流石に誰も手を出さない」


「なるほど」


 で、さっきの “お父さんそっくり” か。

 脳筋ぽいガインさんが最初からそこまで考えていたとは、さすがS級のリーダーだ。



 ---


 おおお、ここが本物の冒険者ギルド!

 村の役場のなんちゃってギルドとは全然雰囲気が違う。


 中に入ると子連れが珍しいのかみんなが私たちに注目していた。


「大丈夫だよ」


 いつのまにかギュっと手に力を入れて掴まっていた私を、安心させるように抱っこした手でポンポンしてくれる。


 訓練してる時のあの鬼畜ドSがめっちゃ優しい……。

 私が恐ろしく失礼なことを考えているとは知らずにハートさんはずんずんと中へ入っていった。


「ねぇ、その子、あんたの娘かい?」

「ああ」


 色っぽいおねぇさんに声をかけられてちょっとドキドキ。


「見ない顔だな色男。ソロか?」

「いや。仲間が先に着いているはずなんだが……」


 私に笑いかけるちょっと強面のおじさんにソワソワ。


「お! ハート! こっちだ!」


 シドさんの声だ!

 聞き覚えのある声に心底ホッとした。

 いくらハートさんでも子供を抱えたまま喧嘩になったらやばいし。


 突然みんなが私たちに道を開けてくれる。


「あの若さでS級?」「黒龍には優男枠でもあるのか?」「子持でS級はないだろ」


 ざわめきの中聞こえてくるのは若くてイケメンへの嫉妬の声ばかりだ。

 ハートさんも苦労するね。

 つい生暖かい目でハートさんを見てしまう。


 ただでさえS級って珍しいから注目されちゃうんだろうな。

 そんな人たちを長期で護衛に付けるとか、お父さんは幾ら払ったのだろう……。


 私は意外と大切にされていたのかもしれないな。

 苦手意識で歪んで見えていた事を反省する。



「買取査定に、もうちょっとかかりそうだ」


 声の先でみんなが椅子に座っている。


 あからさまにホッとした顔をしたのか「怖かったか?」とガインさんにニヤニヤされた。

 ふん。無視だ無視。


 袋に入れてもらった私の冬服をギルドの机に並べてみんなが褒めてくれる。

 いや、恥ずかしいよ。


「これなんか嬢ちゃんに似合うじゃないか。あったかそうだしな」

「今着てるのも似合ってるよ」


「このコートはセンスいいな。ハートが見立てたのか?」

「子供は成長が早いから、大きめをって。お店の人に……」


 私の冬服は大好評だ。

 ハートさんが照れて笑う。

 お店の人にすっかり親子と思われて子育てアドバイスをされていた事は黙っておこう。


「それにしてもお腹空いたなぁ」

「僕、お肉が食べたい」

「よさそうな所はあったか?」


「ええ、マリーが(よだれ)たらして見てた肉屋の近くに、ちょうど良い所があったよ」

「ちょっ!」



 空いている椅子に私を抱えてゆっくりと座りながら、ハートさんがとんでもない事を言う。


 (よだれ)なんか垂らしてないもん。

 他の冒険者もたくさん聞いている中、恥ずかしくてハートさんの胸に顔をうずめた。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
誤字報告ってタイトルは対象外なんだよね
サブタイトルの「始めて」は「初めて」じゃないかな?
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