表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第四章 聖女編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/163

聖女派遣

「待たせたな。指名依頼の話だった。聖女派遣だ」


 ガインさんは戻って来るなりそう言った。


 こんな夜更(よふ)けに冒険者ギルドからの緊急呼出し。

 何事かと思ったけれど、確かにこれは緊急だわ。


「今からか?」とおじいさまが眉を(ひそ)める。

「ああ。今から出発する。みんな急いでくれ」


 私達は追い立てられるように、慌てて旅の準備をする。

 既に馬車の手配がされ、外で待機をしていた。


「心配するな」

「大丈夫です。もう16歳なのですよ」


 ガインさんが「ああ、そうだったな」と笑顔で私の頭をポンポンする。


 急いで荷物を詰めながら、パンパンと手を叩くガインさんの言葉に耳を(かたむ)けた。


「俺は現地の神官と連携して住民の指示に回る。ハートはマリーの警護に付け。フェルネットとテッドは俺に付け」


「私がマリーの警護じゃダメですか?」


 テッドさんが声を上げた。

 ガインさんが(あご)に手を当て考える。


「うーん。そうだな……。普段二人で行動することも多いのか。よし。勉強も兼ねてハートの補佐に入れ」


「ありがとうございます!」


 テッドさんが鼻歌でも歌いそうなくらい嬉しそう。

 こんなテッドさんは初めて見た。


 そう言えばガインさん達といる時は、年相応に伸び伸びしている。

 本来のテッドさんはこっちなのかな。


「マリー。よろしくな」

「こちらこそ」


 お互い頑張ろうねと頷きあう。

 派遣場所は山とは反対側の、いくつかの森を抜けた少し大きな町らしい。


「大型魔獣が出現し、町人や兵士、冒険者が負傷した」

「魔獣の方は?」


「すでに現地の冒険者が討伐済みだ。現地入りは3日後。かなり馬を無理させるぞ」


 ハートさんが頷くと私を見る。


「マリーは馬車ごと結界を張ってくれ。魔獣と遭遇しても討伐はしない。障害物は振り払い、とにかく先に進むんだ」


「はい」


 私は聖女の服やヘアメイクセットをカバンに詰めて、空間魔法に放り込んだ。

 聖女の見た目も現地の混乱を鎮めるのに、とても効果的なんだって。


「もう、準備が出来たのか? この後、教会に立ち寄って荷物を受けとる」

「空間魔法に入れますので、任せてください」


 ガインさんが『あ!』と(ひたい)に手を当てる。


「しまった。マリーは空間魔法が使えるって事、すっかり忘れてたわ」


 ふふふ。ガインさんも人間ですもの。

 ミスくらいあっても仕方がない。


「準備が出来たら出発だ。急ぐぞ!」



 馬車を走らせ教会に立ち寄り驚いた。


 いやいや、いやいや。

 たった3日で、なにその大量の荷物。


 目の前には回復薬や食料に、日用品などが山積みにされている。


「現地に届ける救援物資が必要だろ?」


 心の内を見透かされたように、ガインさんにデコピンされた。

 そりゃそうか。


「でも確か、荷馬車を4台、手配したはず……」

「ふふん。僕がキャンセルしておきましたよ」


 フェルネットさんがドヤ顔でガインさんを見る。


「流石フェルネットだ。抜け目がない」


 聖女の派遣って災害救助みたいなものなのね。

 回復をするだけだと思っていた。


 従来の聖女が聖騎士や白神官を大量に連れていたのは、人手も貸すからなのか。

 それを『ギルドに依頼しろ』とは、浅はかな提案だったのかも。


 今更言っても仕方がない。必要なら次から別途手配すればいい。

 今回は、私のやり方で頑張ろう。


 みんなでせっせと空間魔法に荷物を放り込む。魔力消費が半端ないけど仕方がない。


 東の空が明るくなりかけた頃、私達は教会を後にした。


「こんなに豪華な馬車の旅って初めてです」

「フフ。荷馬車の後ろで足をぶらぶらさせて座っていたもんな」


 ハートさんの言葉に「へぇ」とテッドさんが興味を持つ。


「当時はどんな子だったのですか」


 暇になる度、私の黒歴史を探ろうとするのはやめて。

 ハートさんは一番やばいの知ってるから、ホントやめて。


「5歳児の癖に『私、れっきとしたレディーなの』ってませたガキだった」


 ガインさんが笑う。

 くぅ! こんな所に伏兵(ふくへい)が!


「不安になると、手をぎゅっとする癖があったな」


 ハートさん。

 それ、リアルに恥ずかしいのですけれど。


「ハートの隙をついては返り討ちに遭ったり、集中すると周りが見えなくなったり」


 ガインさんの言葉にみんなが「そうそう」って。


 ふふふ。そんな事もあったなぁ。

 あの1年は濃くて長い、私の人生の宝物。


「なんだかんだで、いつも一生懸命な子供だった」


 ガインさんにはそう見えてたのか……。

 ちょっと嬉しいな。


「へぇ。マリーは今と、あまり変わらなかったんですね」


 ははは。

 それはどの話を聞いての感想なのかしらね?


「そうか。テッドもマリーの洗礼を受けたか」


 ガインさんがテッドさんの頭をゴリゴリ撫でていた。

 ふふふ。ガインさんが嬉しい時の癖だ。


 じゃなくて、洗礼って何?



 辺りはすっかり暗くなり、野営が出来そうな場所に馬車を止める。

 私は馬も含めて全員に、疲労回復の魔法をかけた。


「助かる、マリー。悪いが、野営の準備も頼むな」


 いつもの様に結界を張り、いつもの様にお風呂や寝場所を作る。

 ガインさん達との野営は久しぶり。


 昔の様に料理は男性チームが担当で、私は先にお風呂を頂いた。


「洗濯物は一か所に(まと)めて下さいねー」

「そうだった。マリーがいると、洗濯して貰える事を忘れていたよ」


 嬉しそうにお玉を振って、フェルネットさんが笑っている。

「手伝います」と私も配膳に参加した。


「大きくなったね」


 手が届かなかったテーブルも、今じゃ見下ろす位置だもん。

 フェルネットさんに言われると、なんだか照れ臭いな。


「小さな頃のマリーも見たかったな」

「ははは。手なんかこんなに小さくてさ。ホント可愛かったんだから」


 フェルネットさんが『このくらい』と指を広げてテッドさんに見せている。

 やっぱり皆が揃うと楽しいな。


「明日は日の出と共に出発する。子供達は早めに休むように」


 ガインさんが笑顔でそう言った。


読んでいただきありがとうございました。

ブックマーク、評価、いいね頂いた方、感謝してます!

誤字報告、いつも本当にありがとうございます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
b8gg8nd6c8mu9iezk3y89oa1eknm_l3q_1cu_1xg_1p76v.jpg

3hjqeiwmi49q1knt97qv1nx9a63r_14wu_1jk_qs_6sxn.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] マリーのパパ達 明日死ぬんじゃね?って感じるくらいフラグ建築してない? 大丈夫だよね?
[一言] なんかほのぼの回 イベント的には大変なのに 癒されました〜♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ