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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第三章 冒険者編

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大蛇討伐

「遅いですね」

「何かあったのかな?」


 依頼達成報告の為にギルド長室に通されたまま、私達は長い時間を待たされている。


「おう。待たせたな」


 ちょっと表を覗きに行こうかと思った所でギルド長がドカドカと部屋に入って来た。

 私達を見るとニヤッと笑い、ソファーに乱暴に座る。


「トラブルですか?」

「いや。ちょっと人手不足でな。で、報告を頼むわ」


 確かに依頼掲示板には依頼書が沢山貼ってあったな。

 冬だから働く冒険者がいないのか……。


「言われた巣穴には大蛇がいるようです。冬眠はしていないですが活動もしていない感じで」

「討伐しても生態系には特に影響はなさそうです」


 テッドさんが報告書をギルド長に渡した。

 それをぺらぺらと(めく)ると、バサッとテーブルに置き腕を組む。


「そうか……。奥に大蛇がいたのか……」

「討伐依頼して頂ければ、私達が倒してきますよ」

「マリーがか?」


 ギルド長のイメージは(いま)だに小さなマリーだったらしい。

 照れながら「悪い。もう大人だったな」と笑う。


「私は凍結魔法が使えるので相性がいいんです」


 テッドさんが自信満々にそう言った。


「大蛇がDランク案件か? 人手不足だから助かるんだが……」


 ギルド長がもう一度報告書に目を通して悩んでいる。

 寝てるところを倒すなら、ランクは関係ない気がするのに。


「任せてください!」「お願いします」


 散々唸った挙句、ギルド長は条件付きでしぶしぶ許可を出してくれた。


 せっかく見つけた魔獣だし。討伐も自分達でやりたい。

 早速裏手に回り、条件である師匠に確認。


「ほぅ」

「はい。ギルド長が、師匠の許可があれば行ってもいいって」


「もちろん許可は出す。出すが……ちょっと待て。そうだな……」


 師匠が嬉しそうに頷いて、何やら思案を始めた。


 許可は出たけどなんだろう?

 テッドさんと顔を見合わせ首を振る。


「よし! 嬢ちゃんは先ず、蛇を凍らせろ。その後、頭部に限界まで凝縮させた魔法を連続で叩き込み破壊だな。テッドは嬢ちゃんの護衛に徹していればいい。お前さん達におあつらえ向けの楽な仕事だ。気を抜くなよ」


 師匠が怪しい笑顔でそう言った。

 私達におあつらえ向けの楽な仕事ねぇ……。



 -----


 って! やっぱり師匠!

 全然楽じゃないんですけど!


 言われた通り、最初に蛇を丸ごと凍らせた。なのに(みずから)ら発熱し、覚醒(かくせい)していく。


 なんなのよ!


 テッドさんが追加で凍結させても、全く追いつかない。


「こっちは任せて集中しろ!」

「はい!」


 長時間の頭部掘削(くっさく)作業で心が折れそう。


 師匠! 頭部を破壊出来る気配がまったくありません!

 私の全力なのに! 恐ろしい子!


 やけになり、更に魔力を固めて叩きつけた。


「あ! やっとウロコを貫通しました! もうすぐです!」

「急げ! 力が強くて耐えきれそうにない!」


 テッドさんが暴れる蛇を必死に抑えて私を守る。

 早くしないと吹き飛ばされてしまう。急がなきゃ。


 グラグラと揺れる蛇の上でバランスを取り、開けたばかりの穴に風魔法を叩き込む。

 中で魔法が爆発し、完全に頭部を破壊した。


「やりました!」

「終わったの?!」


 急いで飛び降り様子を見ていると、蛇の動きが徐々に遅くなっていく。

 

 うわぁ。動きがグロい。


「はぁはぁ。これがおあつらえ向きの楽な仕事って……」

「ははは。師匠にとっては、かもですね」


 テッドさんは肩で息をして、その場に崩れ落ちた。


「怪我はないですか?」


 念の為、回復魔法と疲労回復を。


「マリーがいると回復出来るから安心だな」


 私を見上げるテッドさんが手を差し出した。

 起こそうとその手を取ると、逆に引っ張られて隣に座る。


「はぁ。少し休んでいこうよ」

「そうですね」


 珍しい。テッドさんがここまでになるとは。

 蛇、相当暴れていたもんね……。


「流石に大物過ぎたね。私も知らない魔獣だし」

「へぇ。テッドさんも知らないなんて」


 コンクリレベルで固いウロコとか反則だよ。

 しかも自家発熱するとか聞いてないし。


 この大きすぎる蛇を、空間魔法で持って帰ることにした。

 どの素材が使えるのか想像もつかなかったし、解体する体力も残っていなかったから。



「久しぶりだな。今帰りか?」

「師匠……」


 冒険者ギルドに向かう途中、ご機嫌な師匠と3日ぶりにばったり会った。

 いや、『久しぶりだな』じゃないし!


「師匠の感覚で楽な仕事って言われたら、私達は死にますって!」

「命からがらでしたよ」


「ははは。無傷で帰って来れたなら、楽な仕事のうちだ。ほれ、報告に行ってこい」


 なんて雑な基準なのよ。S級恐るべし。

 テッドさんとふたりで肩をすぼめて報告に向かう。



「討伐してきました。蛇は裏の広場です。買い取ってください」


 もう色々面倒で、早口でそう言うと、受付のお姉さんに笑われた。


「ゆっくりお風呂に浸かって、ベッドにダイブしたいです」

「私もだよ。しばらくは休みが欲しいね」


 机に突っ伏し脱力していると「あれはなんだ!」と叫ぶギルド長に裏まで連れていかれる。


「蛇です」


 テッドさんも知らない蛇。

 それ以外に言いようがない。


「あれはストーンヘッドスネークだ」


 ストーンヘッド? へぇ。どおりで石みたいに固かったわけだ。

 横でテッドさんがアワアワしながら固まっていた。


 知っているのかな?


「あ、あれって大きくなる前に討伐対象になる危険種ですよね!?」


 テッドさん?

 珍しく取り乱してるけど、どういう事?


「ウロコがオリハルコンになってたぞ。あそこまで純度が高いオリハルコンは初めて見たぞ」


 お。なんか、高く売れそうな予感。


「お前達だけで倒したのか?」

「はい。まさかあの大きさで、ストーンヘッドスネークとは……」


 テッドさんが更に脱力した。

 あはは。そんなに高く売れないのかな?


「あれは石化の毒を吐く。ふたりとも無傷で良かったよ」


 あのギルド長が、珍しく私達を心配している。


 石化? ははは。

 嘘でしょ。


「師匠が、私達におあつらえ向きの楽な仕事だって……。ははは」


 私は口に手を当て、呆れて笑う。

 ギルド長は片手で顔を(おお)い上を向くと「()められた」と呟いた。


「はぁ。あれはS級魔獣だ。お前達はS級討伐の為、2段階アップでB級に昇格だ」


「「S級?」」


 テッドさんとふたりで顔を見合わせる。

 呆れ顔のギルド長が「ああ」と笑った。


「S級だって!」「強いはずだよな!」

「それどころじゃねぇ。これの買取査定も、とんでもねぇぞ」


 ギルド長が「支払いは後日だ」と蛇をポンポン叩く。

 私達はB級の文字が大きく書かれたギルドカードを手渡された。


 おおお。B級だ。


「……やりましたね」

「……やったね」


 呆然(ぼうぜん)としながら家に帰ると、おじいさまと師匠がご馳走を用意して待っていた。

 とてもご機嫌なふたりに派手にお祝いをして貰う。


「お前達はもう、一人前だな」「流石わしの孫だ。テッドもありがとう」


 もー! 師匠ーってば!

 嬉しいけど、嬉しいのだけど。えへへへ。


 最後はおじいさま自慢のケーキが出て来て、私はご機嫌でベッドにダイブした。


 B級だって。

 早くガインさん達に知らせたいよ。


読んでいただきありがとうございました。

ブックマーク、評価、いいね頂いた方、感謝してます!

誤字報告、いつも本当にありがとうございます!!

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― 新着の感想 ―
そりゃ強いはずだよ……S級なんだから……
[一言] 師匠!嵌めやがったな!w そう言うの良くないと思います!w
[一言] ネ兄 ストーンヘッドスネーク無事討伐おめでとう! いきなりのS級モンスターをヘトヘト程度で討伐するとは! 生者の二階級特進とは・・・買取金額も当然尋常じゃないとないと思う。 さぁ!目標まで後…
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