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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第三章 冒険者編

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寄付集めの夜会

 ここは、今日の夜会の為に用意された、お城の豪華な控室。

 部屋中にお花が飾られ、あちこちのテーブルにお菓子の山が詰まれている。


 流石お城。控室が色々と豪華で凄い。


「こちらにお座りください。聖女様」

「はい」


 装飾の凝った大きな鏡の前で、ヘアメイク白神官さんに髪を結われ、お化粧をして貰う。

 そして夜会用の淡い水色のロングドレスを身に(まと)うと完全な別人になった。


 前より手際が良くなっている……。


 うふふ。

 コーデンさんに希望するドレスの色を聞かれた時、つい、水色を選んでしまった。


 大好きなピンクは特別な時に取って置きたくて。

 寄付集めの夜会で着ちゃうのは、ちょっと勿体(もったい)ないよね。


「ノーテさん。今日は、誘われたらダンスして、話しかけられたら笑うだけ、ですよね?」


「そうです。余計なことは喋らずに、ただ笑っているだけで良いのです。それ以外は何もしないで下さいね」


 メイクルームを出ながら、ちょっと最終確認しただけなのに睨まれちゃった。

 今回はちゃんと覚えていますってば。前科持ちですけど。


 警護はテッドさん。

 エスコート役はハートさんがいないので、代わりにエヴァスさんが来てくれた。


 誰に依頼したらいいのかと悩んでいたら、ノーテさんが手配してくれて助かった。


「エヴァスさん。本当に助かりました。ありがとうございます」

「とんでもない。僕達は親友じゃないか。いつでも協力するよ」


 いやいや、お宅のお母様、めっちゃ私の事を嫌っているじゃないですか。

 夜会とか、よく許可を出してくれたと思うのよ。


 あ。あの腹黒執事が、私を見てにっこり笑っている。

 ははは、そりゃ来てるよね。

 

 笑顔がいつもより胡散臭いな。

 ノーテさんと、どんな裏取引が……。


 その執事の後ろから、ちょこんと顔を出すカトリーナを発見!


「カトリーナ! 来てくれたの?」

「うふふ。ちょっと差し入れをね」


 私を見つけて満面の笑みに変わるカトリーナは、あの豪華なお菓子の山を目で指した。

 あれ、カトリーナの差し入れだったんだ! そっか、ここはお城だもんね。


「ありがとう!! もしかしてお花も?」

「ふふ。いいの、いいの。それに、エヴァスがヘマしてないか、確認に来たのよ」


「フン。しませんよ。それに、あのお菓子は、()()差し入れにどうかと、カトリーナに提案した物ですからね」


 ははは。またふたりの喧嘩が始まった。


 趣味は同じだし、好きな物も同じ。

 いつも張り合ってばかりなんだもん。


 もう、付き合っちゃえばいいのに。


「ほらほら、笑顔、笑顔。その顔を維持するのが、今日の仕事だと思って下さい」

「はい! じゃ、カトリーナ後でね!」


 カトリーナに小さく手を振り、バタバタと速足で廊下を歩いて扉の前で深呼吸をする。


「行きますよ。聖女様」

「はい」


 エヴァスさんにエスコートされ、会場へと降りて行く階段の踊り場に立った。


 今日は花びらもキラキラも無いから、態度だけで()()()()()来なさいって言われたけど……。

 ねじ伏せてって……。


 指先にまで神経を使い、優しく微笑みながら、ゆっくりと挨拶をする。



「ほう」



 会場全体が息を飲むように静かになった後、一度止まった演奏が再開した。


 堂々と階段を下り、仰々しい椅子に優雅に座る。

 ふぅ。出だしは順調みたい。


 今日は代わる代わる挨拶に来る人達に、にっこり微笑むだけのお仕事。

 間違っても『お金下さい』などと、言ってはいけない。


 直立不動のテッドさんを見て、こんな仕事をさせて申し訳ないと、心の中で謝罪する。


 これはギルドの依頼ではなく、完全なボランティア。

 第二聖騎士に警護を頼むつもりでいたのに、テッドさんが自ら申し出てくれた。


 知った顔の方が安心だろって。

 ありがたいです。


 ふぅ。挨拶が終わると今度はダンスの申し込みで列をなす。


 最初はエスコート役のエヴァスさん。

 正直、気を使わなくていいから助かるわ。


「既にお疲れのようだけど、ダンスは始まったばかりだよ」

「はい。いい感じの所で、助けに来てくださいね」

「ははは。おおせのままに」


 代わる代わる挨拶がてらに笑顔で踊り、いつ解放されるのだと、頭の中はそればっかり。


 やっぱり、公務での夜会はキツイな。自由に休むことも出来ない。

 でも、これはお仕事なのだ。頑張らねば!


 流石に疲れて、ちらっとテッドさんを見ると、エヴァスさんに合図をしてくれる。

 あーー。助かった。


 メイクルームに戻るとぐったり、へにょん。

 笑顔を作りすぎて、顔の筋肉がおかしくなる。


 ノーテさんが神官さん達に「10分で終わらせなさい」と指示した途端、髪やお化粧をピットインしたF1カー並みにメンテされた。


 流石プロ、私に一切の負担が無い……。


 あの口の軽いサーシスさんはヘアメイクの勉強をしていたけれど、確か希望通りに、どこかの貴族の専属になれたんだよね。


 みんな頑張っているよなぁ。

 私も頑張らなくちゃ。


「聖女様。何かに誘われたり、約束させられたりしていませんね?」

「はい。言われた通り、すべて “教会を通してください” で押し切りました」


「素晴らしいです。この調子で最後まで頑張って下さい」

「はい」


 ノーテさんは満足そうに口角を上げると、久しぶりに褒めてくれた。

 えへへ。嬉しいな。


 後ろで神官さん達が「このお化粧品は、ジョセスカトリーナ様もご愛用の品なんですって」とか、楽しそうにきゃっきゃっ言ってるし。


 皆さん楽しそうで、何よりです。


読んでいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
大好きなピンクが嫌な予感しかしないんだけど流石に接点が無いから………………大丈夫だよね?
[気になる点] >大好きなピンクは特別な時に取って置きたくて。 またリリーに奪われる予感しかない。 マリーは冒険者の仲間が、かつて自分が縁切り宣言した両親や妹と関わってリリーの更生まで約束したことを…
[一言] 夜会という営業活動ご苦労様です。 能面に笑顔を貼り付けて後半もがんばりませうw
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