リリーが色々やらかしたので旅に出ます
今日は料理を教えて貰う為に、嫌々だけどミーナの家に来た。
父さんから、絶対に行けと言われて来たけれど、はっきり言って帰りたい。
ワースと結婚が決まった最近のミーナは、意地悪だから大っ嫌い。
「ねぇミーナ。今日は何を作るの?」
「今日は具沢山のスープだよ」
綺麗に整頓されたキッチンに鍋やナイフなどが用意され、テーブルには綺麗に食材が並んでいた。
「リリー、とりあえず、それの皮を剥いてみて」
ミーナが『それ』と視線を向けたのは、ザルに入ったイモの山。
もしかしてこれの皮を剥けって事?
私は不器用だから、母さんにナイフを触ったらダメって言われているのに。
「出来ないよ。やった事ないし」
「下手でもいいから、やってみてって」
仕方なく、恐る恐るナイフを握り、見様見真似で皮を剥く。
母さんは、こんな感じでやってたかな?
「ちょっと! それじゃ危ないよ! こうやって剥くの。貸して」
ミーナが急に大声を出し、私からナイフを奪うと、器用にシュッシュッシュッって皮を剥く。
びっくりした。
そうやっているつもりなのに、何が違うんだろう。
私が出来る事って、鍋をかき混ぜるとか、お皿をテーブルに置くとか、その程度なのに。
それだって父さんに手際が悪いって怒られるし。
「ほら、やってみて。コツが分かれば簡単だよ」
ミーナがポンとイモとナイフを私に渡す。
こうかな? こんな感じかな?
コツってなんだろう。
イモにザクザク刃が入って、全然上手く行かなくって、だんだんとイライラしてくる。
キリカに『絶対に癇癪を起こすな』ってしつこく言われて来たのに。
「急になんて出来ないってば!」
「もう! じゃあ、私が切った材料を鍋に入れて! 皮剥きは今度」
あー、やっちゃった。怒りたくないのに。もうやだ。
私はイライラを抑える為、深呼吸をする。
材料ってこれ?
私はザルに置かれた野菜や肉を見てうんざりした。
もうやだ。
「これを、手で触るの?」
「当たり前でしょ。洗ってあるから大丈夫」
嘘でしょ。肉とか触るの気持ち悪いよ。
泣きそうになりながら、何とか頑張り、材料を指で摘まんで鍋に放り込んだ。
「もうやだよ。こういうの無理なんだってば。もっと簡単なのがいいよ」
「これ以上簡単な料理なんてないよ。そうやって何もしないから出来ないの。少しは我慢して覚えなさいよね」
ミーナは呆れた顔で鍋に水を入れ、慣れた手つきで火をつけた。
私だって一生懸命やってるのに! 初めての事ばっかりなんだもん!
ミーナだって前はよく泣いてたくせに!
「偉そうに言わないでよ! 私は聖女なんだから馬鹿にしないで!」
「リリーの嘘つき! 今時、子供だってそんな嘘つかないよ!」
「嘘じゃないもん!」
頭にきた私はステータスをフルオープンし証拠をミーナに見せつけた。
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リリー 女 15歳 緑適性
Lv.1
HP 10/10
MP 5/5
光属性Lv.1
加護
光の精霊
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「見てよ! ここ! 光の精霊の加護があるんだから!!」
「嘘! 何これ? 悪魔の子じゃない! やだ、誰かー!」
私がステータスにある “光の加護” を指差して見せると、ミーナが叫びながら家を飛び出して行ってしまった。
なんで? なんで逃げるの?
どうしよう。なんだか嫌な感じ。
絶対に見せちゃダメって言われてたのに……。
帰って父さんに相談しよう。
火事にならないように鍋の火を消し、とりあえず適当に片付けて、私はミーナの家を出る。
するとミーナが役場の人を連れて、戻って来た。
「あの子よ! 加護の横取りのステータス! 私、見たんだから!」
「お嬢ちゃん。確認するから、ステータスを見せてみろ」
怖くてその場に立ち竦み、動く事も話す事も出来なくなる。
どうしよう。
こんなことになるなんて、知らなかったの。
「見せないと拘束するぞ。いいから早く見せろ。それで済む」
役場の人は面倒そうに、片手を私に差し出した。
怖くて一歩、後ろに下がる。
どうしよう。
父さんに聞かないと……。
「はぁ。とりあえず拘束するぞ。教会に問い合わせるから、大人しくしてろ」
役場の人に腕を掴まれ、どうしたらいいのか分からなくて、怖くて怖くて涙が溢れた。
私は黙って役場の人に連れられて、役場の中の簡易な牢に入り震えながらそっと座る。
私、いったいどうなるの。 助けてキリカ。
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「……という事があってな。ガイン達には村人を黙らせて、マリーの家族を安全に移住させて欲しいのじゃ」
おいおい。
何をやってんだよマリーの妹は。
パレードをした数日後、教皇様に極秘で呼ばれて来てみたら、これだ。
聖女熱の冷めやらぬこの時期に、こんなことが発覚したら大変だ。
大昔の悪魔狩りが、また始まっても困るしな。
教皇様からは『事態の収拾』『移住先の山の麓の村までの護衛』『リリーの教育』の3つを依頼された。
「マリーの家族の為なら喜んでやりますよ。けれど、どんなに急いでも到着には、ひと月半はかかりますが……」
「手は打ってある。近くの町の神官に、リリーに自宅待機させ監視するよう、手紙を書いた。ふふん。問題ない、大丈夫じゃ」
いやいや『大丈夫じゃ』って、ホントかよ。
「どうやって村人を黙らせるおつもりですか?」
「ステータス偽装のペンダントがあるのじゃろ? 見たと言っている娘のフォローも忘れるでないぞ」
フン。この狸が。
読んでいただきありがとうございました。
※今日で連載を始めて1月が経ちました。
おかげさまで、PVも150万を超えました。
どうもありがとうございます。
今後も宜しくお願い致します。
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誤字報告、いつも本当にありがとうございます!!





