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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第三章 冒険者編

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冒険者の登録

「冒険者登録を、お願いします」


 ガインさんとハートさんに付き添われ、冒険者ギルドにやって来た。

 ギルドの中は静まり返り、みんなが私達に注目をしている。


 そりゃそうだよね。

 急に聖女に冒険者登録って言われてもね。


「し、少々、おみゃ、お待ちください!」


 いつもの受付のお姉さんが、声を裏返して奥へと消えた。

 はは。小さな頃から来ているおなじみの場所なのに。



「おいおい、今日はどうした? お前らビビってんのか?」



 にやけ顔のガインさんが大きな声で、みんなを挑発をする。


「どうなってんだよガイン!」

「わははは。ハートの娘が聖女とか聞いてねーぞ!」

「だから教会に娘を通わせてたのか? すっかり騙された」


 黙って様子を見ていた冒険者達が、せきを切ったように喋り出した。


「大きくなったねぇ」と私のほっぺを突く色っぽい姉さんや「冒険者になるのか?」と目を丸くするいつものおじさん。


 良かったー。

 やっぱりここは変わらない。


 ギルド長が顔だけ出して「よう。入ってこい」と(あご)で向こうを指す。

 喧騒の中、保護者ふたりに連れられて、奥のギルド長室に入った。



「あんなに小さかったマリーが、まさか聖女様になるとはな! あのパレードは凄かった!」


 膝をバンバン叩いて興奮するギルド長は、やっぱりギルド長だ。


「あの演出は教皇様とガインさんで考えたのですよ。ハートさんに花びら舞わせて、師匠にミストを降り注いでもらって」


「神秘的な演出だったろ?」

「ああ、凄かった。さすがの俺もマリーを拝みたくなったわ!」


 がはははと豪快に笑うギルド長が、両手を組んで私を拝む。


「ちょっと。やめてくださいよ」


 みんなが私の顔を見て「それはないな」と笑いだす。

 あはははは。失礼だけど、何故かつられて笑っちゃう。

 

「で? 冒険者登録ってなんだよ」


 ギルド長がテーブルに足を投げ出して、ソファーの背に腕を置いた。


「それがな。マリーを俺たちの正式なメンバーにしようと思ってな」


 ギルド長が眉を(ひそ)めて、ガインさんとハートさんを交互に見つめる。


「ああ、マリーを冒険者にするつもりだ」


 ハートさんも私を見ながらそう言った。


「よろしくお願いいたします」


 ぺこりと頭を下げると「聖女稼業はどうすんだ?」と想定内の質問が来る。


「聖女の派遣は、教会から冒険者ギルドに指名依頼をしてもらう事になった。俺達 “黒龍” にな」


 ガインさんが『俺』と親指を自分に向けた。

 ふふふ。なんだかちょっと嬉しそう。


「なるほどな。聖騎士団の人件費や神官達の宿泊費や移動には金がかかるもんな」


 ギルド長はうんうん頷いて腕を組んだ。


 そう! まさに、それ。


「そうなのですよ。指名依頼ならギルドは手数料で儲かるし、私たちも儲かるし、教会は節約出来るし誰も損をしないのです!」


「教会の上層部にもこんな感じでマリーが説得したんだよな」

「はい!」


 えへへ。そんなに褒められたら照れるな。

 あの時は聖女が裏庭で極秘に育てられた事を正当化する為に、論点を変えただけだけど。


「そういや、回復薬が大量に出回るようになったのも、価格が下がったのも聖女のおかげだってな」


「確かに開発したのは私ですが、価格を下げる為に頑張ったのは教皇様ですよ」

「ほう。俺が想像していた教皇様のイメージとは全然違うな」


 どんな想像だよ。

 めっちゃオモシロおじいちゃんなのに。


「俺もずっと信用できなくてな。裏では権力に溺れた悪魔だと思ってたし」


 ガインさんもわははと笑っている。

 そんな事を考えていたなんて、初耳なのですが……。


「マリーが10年近くかけて開発した “魔力を使わず精製できる” 回復薬が教会の収入源になって、各地で魔力量の少ない人の手仕事になるとはね」


「あら、ハートさんが教会に入る前日に、魔法と剣を禁じたのですよ。 “今後は頭使え。情報と人脈を武器にしろ” ってね」


 私がハートさんにそう言うと、びっくりした顔で口に手を当てる。


「それは学校に通うことが前提だった。もしかして10年間もそれを?」


 当り前じゃないですか。


「ガインさんがハートさんに言わせたのですよね?」

「そうだけど、誰も見てない裏庭なら……」


 ハートさんは気まずそうにしているし、ギルド長は『何の話だ?』とはてな顔だ。

 私の中では、ガインさんに言われたことは絶対なのだ。


 シルバーウルフに襲われたあの日に、心の底から身に染みたんだもん。

 今更その()みは落ちないもん。


「その言葉だけを頼りに()()()頑張ったのですよ」


 結果オーライだと笑うと、嬉しそうなガインさんに、久しぶりにゴリゴリと頭を撫でられた。


 そして冒険者登録の為、ステータスをオープンする。

 『フルで見せろ』とごねるギルド長を保護者ふたりで黙らせて、やっとギルドカードが発行された。


 『教会みたいに(うるさ)くないから心配するな』って、そういう意味だったのか……。


 Fランクだって。

 ガインさん達に追いつけるのかな。


読んでいただきありがとうございました。

※明日から1日1話の更新になります。

 16時くらいにアップ予定です。

 よろしくお願いいたします!

ブックマーク、評価、いいね頂いた方感謝です!

誤字報告、本当に本当にありがとうございます!!

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― 新着の感想 ―
レベル100越えのランクF冒険者の聖女、爆誕!!!
[一言] 冒険者Fランクの聖女……… 実に興味深い(福山雅治voice)
[一言] ステータスフルオープンならばギルドランクは“S”になったかもだけど、カード発行だけなら“F”ランクだよね・・・ 初仕事は薬草採取?教皇さんがキレそうw 聖女マリー 冒険者ギルドにて登録“F…
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