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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第三章 冒険者編

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リリーに説明

「あなた……マリーの事、聞きました?」

「ああ、くそっ。どうなっているんだ」


 いつもより早く帰ってきた夫は、乱暴にドアを閉めると不機嫌そうに椅子に座る。

 マリーが光魔法を使えるのなら、家から出したのは間違いだったのでは……。


「とにかくリリーに説明して、ちゃんと理解させるしかない。あのバカは何を言い出すか分からん」


「え、ええ。リリーを呼んでくるわ」

「こんな事になるとは……。マリーの奴……」


 はぁ。どうしてこんなに、次から次へと。

 料理に飽きて癇癪(かんしゃく)を起こしたリリーを叱ったばかりなのに。


 今のリリーはとても神経質になっている。

 なるべく夫と会わせたくなかったわ。


 私はリリーの部屋の前でそっと声をかけた。


「リリー? ちょっといいかしら?」

「なに!?」


「大事なお話があるの」

「今じゃなきゃダメ!?」

「そうね」


 リリーは不機嫌な顔で居間に入ると、夫の存在に気付き、急におとなしく椅子に座った。


「なに?」

「聖女様のパレードの事は耳にしたか?」

「何それ? 知らない」


 夫はホッとしたように息を吐いてから、少し前のめりになる。



「お前の双子の姉、マリーは生きている」


 リリーは意味が分からないという顔で、夫を見つめていた。

 本当に言葉が足りない人なんだから。


「あのね。マリーはリリーの双子の姉なの。前に死んだと話したけれど、それは嘘なの。王都のおじいさまの所で暮らしているわ」


「おじいさまの所に?」


 まだ訳が分からない、という顔で私を見る。


「マリーは加護を奪われた事に凄く怒って、出て行ってしまったの。二度とリリーに会いたくないって。だから死んだ事にしたのよ」


「そうだ。お前のせいでマリーが出て行ったんだ」

「なにそれ! 私が王都のおじいさまの所で暮らしたかった! 私もそっちが良かった!」


 また始まった。

 リリーはすぐにマリーになりたがる。


「お前が加護の横取りなんかしなければ! はぁ。とにかく、お前じゃ旅は無理だ」


「やだ。今からでも行きたい!」

「行きたきゃ勝手に行け。行った先でどうするんだ?」


 あなた……。それを言うのは酷な話よ。

 リリーは一人じゃ何も出来ない子なのに。


「私もおじいさまの所に住む!」

「お前のせいでマリーは出て行ったんだ。一緒に住める訳ないだろ」


「じゃあマリーをおじいさまの家から追い出せばいいじゃない」

「今度は居場所を奪う気か?」


「何も奪ってなんかいないもん! なんで奪ったって言うの! うわーーん!」


 リリーはわんわん泣くし夫は怒って黙り込むし、どうしたらいいの……。


 私は優しくリリーを撫でた。


「リリー。マリーは王都で聖女のパレードをしたの。これから噂になると思うけど、誰にも話しちゃだめよ」


「……。マリーが聖女?」


 ケロっと泣き止んで、不思議そうに私を見る。


「そう。生まれつき光の適性があるマリーは聖女なのよ」

「光の加護があるのは私なのに?」


 リリーの顔がみるみる憎悪に染まる。


「リリーは緑の適性でしょ? マリーとは違うのよ」


 それっきりリリーも夫も何も話さなくなった。



---------------------


「聞いたかリリー。王都で聖女様のパレードがあったんだって。ルディがパレードを見て手紙をよこして来たんだよ」


 キリカが興奮気味に手紙を広げて私に見せる。

 フン、興味が無いから手で払った。


「あ、あのルディが食事のマナーや喋り方で苦労してるらしいぞ。あれでも通用しないんだな」


 へぇ。あのお貴族様気取りのルディが……。


「あんなに変なしゃべり方で、あんなに奇妙な仕草だったのに? 王都って変なのー」

「聖女様もいるし、俺たちとは別世界なんじゃないのか?」


 また聖女様。

 キリカまでマリーの事。


「聖女様聖女様って。そればっかり。私だって聖女なのに……」

「ははは。俺の聖女はリリーだけだよ」


 キリカがふざけて笑う。

 知らないって気楽だよね。


「聖女様はキラキラと虹色の光が降り注いでいて、花びらが舞ってたんだって」

「へー。花びらが……」


 周りに花びらが舞う中、光を浴びている所を想像してうっとりする。


 本当なら私がそこにいたのに、マリーが私の聖女の力を奪ったから。

 本当ならマリーがみすぼらしい服を着て、こんなに薄汚く狭い部屋で薄汚れた男といたはずなのに。


「しかも、民衆に向かって魔法をバンバンかけてたらしいぞ。ルディもかけて貰ったって」


 あれ? 魔法が使えないんじゃなかったの?

 父さんの話と違う。


 もしかして、マリーの為に私を犠牲にした?

 やっぱり!


「ねぇキリカ。絶対に秘密を守れる?」

「リリーがどうしてもって言うなら守る」


 私はキリカに体を寄せて「ステータスフルオープン」と唱えた。


 --------------------------

 リリー 女 15歳 緑適性

 Lv.1


 HP 10/10

 MP 5/5


 光属性Lv.1


 加護


 光の精霊

 --------------------------


読んでいただきありがとうございました。

ブックマーク、評価、いいね頂いた方感謝です!

誤字報告、本当に本当にありがとうございます!!

読み方間違えて恥ずかしかったので助かりました!


気が向いたらブックマーク、評価など頂けるとうれしいです。

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― 新着の感想 ―
これで光の加護を奪った大罪人確定
よし、しざーい
アホやねぇ やはり知的ボーダー
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