閑話 エヴァス家
「エヴァス!」
「はい、お母様」
「聖女様とは連絡がついて?」
「いえ。流石にそれは……」
エヴァスは笑って肩をすくめる。
なんて呑気な! これが焦らずにいられますか!
「他に情報は?」
「執事からの報告では、すでに教会を出たそうですよ。それと……父親と言われていたS級冒険者は、ただの警護だったそうですね」
なんて事なのかしら!
S級冒険者の娘と言うのは偽装だったのね! 父親にしては若すぎると思ったのよ!
やっぱりエヴァスの見る目は確かだったわ。
離れに隔離された黒神官だと知って憤慨し、息子には近付かないようにと、エヴァスに内緒で、釘を刺してしまったのに。
私ったら、私ったら。一生の不覚だわ!
あれだけの立ち振る舞いや、豊富な会話が出来るのですもの。
教会で徹底的に隠されて、聖女教育していたに違いないわ。
偽装婚約なんて言い出すくらい周囲を警戒していたのも、今となっては聖女の証。
何故それに気が付かなかったのかしら。
あー、もう! 私の馬鹿!
あの時、外堀を埋めていたら、今頃は!
運よく情報を掴み、誰よりも早く教会に面会を申し入れても遅かった。
依頼が殺到しているので、上級貴族であっても返事はいつになるか分からないと。
もう! なんて事なの!
「エヴァスごめんなさいね」
「お母様。何度も言いますが、マリーは大切な友人ですからね。くれぐれも、変な気は起こさないで下さいよ」
「エヴァス……」
彼女は本当に賢くて良い子だったのに。
それにしてもあの魔力量……、聖女って言うだけあって格が違う。
息子の為にと身分や血筋に拘って、目が曇っていた自分が情けない。
悔やむ私にエヴァスは何度も「彼女が何者でも、私の友人には変わりありません」と言う。
友人だなんて、欲が無い……。
そうね、私も彼女の為に、出来る事はなんだって協力するわ。
本当にエヴァスは賢いだけじゃなく、まっすぐに育ってくれて良かった。
それにしても、あの時の私を誰かどうにかしてちょうだい!
あんなチャンスを逃すなんて!
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