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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第三章 冒険者編

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パレードの裏側

 聖騎士の先導で、鼓笛隊やら、大きな旗を掲げた人やら、みんなを引き連れ私達は大通りに出た。

 

 うわぁ、人が多くて圧倒される。

 告知は直前だったのに、こんなにも大勢の人が来てくれたのか……。


 「ハート。平気か? シドさんは早めに回復薬を。フェルネット……は、そのまま頑張れ」


 あ、フェルネットさん、索敵(さくてき)酔いしているのか……。


 私と教皇様の張付き警護が、万一の時に戦えないと困るので、演出をしながら指揮するガインさんは大変だ。


 娘の晴れの舞台だと気合を入れているけれど、こっちが心配になっちゃうよ。

 みんなあんまり無理しないでね。


「もう、腕が限界じゃ」


 はいはいと、教皇様にも疲労回復魔法をついでにかける。

 右に左に疲労回復魔法を放ち、固めた笑顔で顔の筋肉がおかしくなりそう。


 魔力をこんなに使うのは初めてで、量が減るとここまで疲労するとか初耳だよ。

 ははは。疲労回復魔法で疲労とか、全然笑えないし。


---


「お疲れさまでした」

「うむ、疲れたが演出は成功じゃったな」


「ここまでする必要があったのですか?」

「今まで隠して来た事をうやむやにする為じゃ。今日はご苦労じゃったな。ゆっくりと休むがいい」


 神官達に囲まれて教会に入る教皇様を見送ると、聖騎士の皆さんや、一緒に練り歩いて頂いた方達に、感謝を込めて疲労回復魔法の大盤振る舞い。


「すごいなぁ」「わぁ」「これはすごい」「体が軽くなる」



「あ! おじいさま!」


 帰りを待っていたおじいさまを見つけて駆け寄ると「マリーは世界一だ」と、いつもの孫バカでホッとする。


 ガインさん達も集まって、よくやったと褒められた。

 えへへ。なんだかんだでガインさんのこの言葉が聞きたかったんだよね。


「今日で私は成人しました。これからは、仲間として宜しくお願い致します!」


 ハートさんが花びらを舞わせると、師匠が空に光の粒を放ち、とても綺麗な虹を作る。

 ガインさんとフェルネットさんが「まさに女神だな」と空を見上げて微笑んだ。


 護衛のハートさんが手を差し出して「エスコートさせてください聖女様」とカッコよくキメるので、久々にシンデレラになりきって、あの豪華な控室まで送って貰う事にした。


 ---


「ふぅー。終わったー」


 靴を脱ぎ棄てドレスを脱がなきゃ……って思いながらも、そのままソファーにダイブ。


「づがれだ……」


 トントントン。


 やばい。

 慌てて靴を履き、ドアを開けると白神官さん達がゾロゾロと入って来る。


「聖女様、お着替えを」


 そうでした。

 確かに自分ひとりじゃ脱げないわ。


「ありがとうございます」


 ドレスを脱がして貰い、お風呂に入ってメイク落として、すっきりさっぱりいつもの私に戻る。


「お疲れなら、少しお休みになって行かれたらどうでしょう?」

「はい。気力も体力も限界で。出来ればお願いしたいです」

「こちらへ」


 パーテーションで区切られた場所に大きなソファーが用意してあり、本当に至れり尽くせり。

 白神官さん達のサポートが完璧すぎて驚きだ。


 ソファーにダイブすると、彼女達は私をひとりにしてくれる。

 ちょっと休んだら復活したし、夕食の鐘が鳴ったので私は足早に食堂へ向った。


 いつものようにトレーを取って入って行くと、モーゼのように道が開く。

 そして辺りが静かになった。



 ……。え?



 いつものようにビュッフェに向かい、おかずを適当に乗せ、教皇様から常に聖女として振舞うよう言われたので、いつも以上に優雅に食べ始める。



 誰も動かない。

 そしてみんなが見ている。



 え?

 聖女になる前からここにいたし、いいのよね。

 あれ、ダメだったの?


 うわーん。

 ノーテさんはなんて言ってたっけなー。

 早口だったから聞き流したよ。


 頭の中でパニックになりながらも優雅に食べ続ける。


 食事を終えて席を立ち、食器を片付け食堂を出ると、いつもの喧騒が戻ってきた。


「あれマリーだよね? 聖女様だったの?」

「聖女様を呼び捨てにする事は、私達(わたくしたち)が許しませんよ!」


「資料室の魔術師が聖女様? 嘘だろ。散々こき使ってたよ」

「俺なんか聖女様に怒鳴り散らした事があるんだぞ。もう終わりだ」


「そんな事より、明日から、資料室はどうなるんだよ!」


 聞こえてくる内容のほとんどが資料室の心配で悲しすぎる。


 一般職員にとってはそうでなくても、なぜか神官にとっての聖女は神にも等しい存在だ。

 お姉様達とはもう、普通に会話出来ないのかな。

 それはちょっとさびしいな。


 そして聖女誕生のニュースは、思いのほか早く、国全体に広まった。




 翌朝、控室に勢いよく入って来たノーテさんに『教会で着替えた後、家に帰らず、一般食堂で夕食を取り、馬車を待たせたまま控室に泊まっていく聖女がどこにいますか!』とめちゃくちゃ叱られた。


 そういや成人したら教会を出て行く予定で、おじいさまの家に引っ越したのだった。


 私が疲れているからと、神官さん達が気を使ってくれたみたい。

 聖女には誰も注意が出来ないのか。申し訳ない。


 今後は、教会内で食事を取る時には、神官に部屋まで運ばせるように、と。

 門限を過ぎたら翌朝まで外出禁止は変わらないので、研究室に籠るときは気を付けるようにとも。


 ははは。確かに説明を受けました。ごめんなさい。


 今までと何も変わらないノーテさんに、何故かとても安心した。


読んでいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
なんかおかしいと思ったらそういうこと……疲れてて頭回らなかったんだね……神官さん達も数十年ぶりの聖女だから慣れないだろうし……仕方なかったんだ!!!
[一言] いや、送迎用の馬車を待機させたまま控室に泊まっちゃぁ・・・ 白神官さん・・・なんでノーテさんに報告なかったん?
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