閑話 リリーの進路
少し高台にある大きな木の下で、朝から空を見上げてぼーっとする。
あーー、つまんないなぁー。
「なぁ、リリーは将来、どうするつもりなんだ?」
まただ。
キリカも私に面倒な事を聞いてくる。
今が楽しければそれでいいじゃない。
みんなして将来将来ってさ、バカみたい。
その時になったら、考えればいいじゃない。
「言ったでしょ。魔法が使えないんだって。それともキリカがどうにかしてくれるの?」
面倒だから、ちょっと悲しそうな顔をして見せた。
するとキリカが真剣な顔をして、私に向き直る。
「うちはさ、家族全員で毎日、畑に魔力を注いで作物の世話をしている。一人でも多くの緑持ちが欲しいから、嫁にするなら魔力量の多い緑って言われてんだよ。ほかの家も殆どそうだ。ルディは魔法の先生になる為に、だいぶ前に村を出た」
「だから何なの?」
キリカは困ったような顔をして、大きくため息をつく。
「だからみんな、ちゃんと将来を見据えて努力してんだって。リリーだって読み書きや計算が出来れば、役場で働くことも出来るだろ」
こんな辺境の過疎地の村役場なんて、役場の仕事と手紙の配布、それに冒険者ギルドと教会の代理、要するに村全体の雑用係だもん。
冗談じゃない。
魔力量の極端に少ない人の職業だし、そんな人と結婚したくない。
「そういうの向かないって知ってるでしょ? いいの。全部、母さんが悪いんだから」
「俺だって出来ないけど頑張ってんだよ。楽な事ばっかりして誰かのせいにしてないでさ、少しは自分でも努力してみろよ。おばさんみたいに専業主婦なんて、普通はありえないんだぞ」
努力しても魔法が使えるようになる訳じゃないし。
何も出来ないのは全部、母さんと死んだ姉のせいで、私は関係ないもん。
それに、色々やろうと思っても、ミーナが私より先にやっちゃって狡いんだもん。
だからミーナが持ってる物が全部欲しくなって。
そうしたら泣きながら『ワースだけは取らないで』だって。
いらないよ、そんなの。面倒くさい。
「だったらキリカが私をお嫁さんにしてよ。そうしたら少し頑張れるかも」
「急にそんなこと言うなよ。それでリリーが頑張れるって言うなら考えるけどさ」
キリカが真っ赤になってそっぽを向く。
ずっと前から私のことを好きなのは知ってるし。
「だめ?」
「……ダメじゃない。親を説得してみる。でも、リリーも料理と裁縫が出来るようになってくれよ。さすがに何もできないじゃ、説得できない」
「キリカが私に本気なら、説得出来るよね。私も母さんに相談するから」
「分かった。頑張る」
キリカが少し震えながら、恐る恐る私を抱きしめた。
ふふ。
料理なら楽しそうだし、母さんに教えて貰おうっと。
これで、第二部 教会編は終了です。
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