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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第二章 教会編

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教皇様に悪魔の告白

 

「うむ。側近まで下がらせて、ふたりだけで折り入って話しがしたいと聞いたが、どのような用件じゃ?」


 扉が閉まると教皇様は、ニコニコしながら私の前まで歩いて来た。



「申し訳ございません!!」



 緊張で頭が真っ白になり、私は考えて来た全てを忘れて土下座した。

 ごめんなさい、教皇様!


 おそらく、土下座を初めて目にした教皇様は、慌てふためき「資料室が燃えたのか?」とか「別室に同じ資料が保管されておる」とか「怪我はなかったか」などと言いながら、肩を支えて私を起こす。


「違うのです。ステータスを(いつわ)っていたのです!」


 そう言ってステータスをフルオープンした。


 ---------------------------

 マリー 女 14歳 光適性

 Lv.112

 S級冒険者「黒龍」所属


 HP 1073/1073

 MP 78028/78028


 光属性Lv.28

 闇属性Lv.25

 火属性Lv.32

 水属性Lv.49

 緑属性Lv.18

 土属性Lv.22

 風属性Lv.16


 加護


 緑の精霊

 光の女神

 闇の女神

 火の女神

 水の女神

 緑の女神

 土の女神

 風の女神

 ---------------------------


「な!」


 教皇様が固まってしまった。


 私も最初見た時はそうでした。

 教皇様、本当にごめんなさい。


 あまりにも長い時間、教皇様が動かなくなったので、いつもお茶を入れてくれていたモーラス司教様の代わりに、私が紅茶を準備する。


 処理落ちしたままの教皇様をソファーに座らせて、その前に紅茶を置いた。


「マリー……」

「申し訳ございません!」


 隣に座り、もう一度深々(ふかぶか)と頭を下げると、教皇様は頭を抱えながら「それはもうよい」と手をひらひらさせる。


「きちんと説明してくれるか?」


 真剣な顔つきになった教皇様を前に、私もきちんと姿勢を正した。


「はい。実は、6歳の時、違法なアイテムを使用し、ステータスを誤魔化しました。この、複数の加護がある為に、悪魔の子として教会に拘束されるのが怖かったからです」


「そのアイテムはどうしたのじゃ? この加護はどうしたのじゃ?」

「アイテムは返却済みです。加護は……」


 私は加護を貰ったあの日の出来事を、包み隠さず全て話す。


「なるほど……女神様が……」


 教皇様は放心状態で、上を向いてため息を吐いたり、考え込んだりしている。


 --------

 神が7種の女神を作り、女神の眷属が精霊。

 それぞれの精霊は人々に加護を与える。

 --------

 この教会の教えの女神が存在したのだもの。

 驚くのも無理ないよね。信じてくれるといいけど。


「マリー。複数の加護があっても、教会がおぬしを悪魔として拘束する事はない。安心せい。今後、おぬしには衣食住と安全の全てを、教会が提供する」


 悪魔の話は加護の横取りの抑止力の為に、教会が広めた噂だと。

 

 そして、歴代の聖女達を神官達が神の様に扱うのは、聖女の仕事が崇高なものだから。


 そんな崇高だけど、かなり大変な仕事を私にお願いしたいと。

 その為に教会はどんな協力でもしてくれるらしい。


「身の安全の為に護衛を付けるが、公務以外の行動は強制しない。聖女教育は必須じゃがな」


 聖女派遣の公務以外にも、外交や寄付集めの茶会や夜会などがある為、マナーや一般常識、ダンスなどの教養が必要だからと。


 寄付集めの公務は強制はしないが、出来るだけ参加して欲しいと言われた。


「あ、あと、結婚は自由にできますか?」

「結婚?」


「ほら、私って光適性じゃないですか。どこかのお貴族様の(めかけ)とか側室にされて、愛のない結婚生活を送るのかと心配で心配で……」


 私にとって一番の懸案事項だった結婚についても、この際ついでに確認。


「め、妾? 側室?! なんて心配を……。もちろん自由じゃ。マリーが聖女でなくても、本人が望まぬ結婚なぞ、わしが許さんわい。安心せい」


 教皇様は驚き呆れかえった後、優しく微笑みながら私の肩を軽く叩く。


 なんと! 確かにすべて脳内妄想だったけど。

 カトリーナには、後でお礼の手紙を書いておこう。


「今後、聖女の派遣要請が出たら、護衛に第二聖騎士を、側仕えに神官を、いくらでも連れて行ってかまわん。この国の聖女は、現在ご高齢の聖女とマリーだけじゃ。人手が足りない時は、他国の聖女も応援に来るが、逆に他国への応援もある」


「護衛はS級冒険者でもいいですか?」

「国内ならな。S級冒険者の国境越えは国が嫌がるからな」


 確かに。


「じゃあ、国内で聖女に派遣要請する時は、冒険者ギルドに依頼してください。私たち “S級冒険者 黒龍” が引き受けます! 護衛も側仕えも必要ありませんので、かなり経費削減できますよ!」


 ドンと胸を叩くと、教皇様は私の迫力に「そ、そうか……ははは」と力なく笑う。


「これは……何とも……。長い間いらぬ気苦労をさせて、本当にすまなかったのぉ」


 教皇様は申し訳なさそうな顔で私を見た。

 いやいや、教会の中の事は外の人間からすると、未知だから恐れていただけですって。


「いえいえ。勝手に想像して、勝手に誤解した私が全部悪いのです。もっと早く教皇様に相談すれば良かったのです」


 信じてくれて良かったーー。

 そして信用して話して良かったーー。


 流石にあの加護に関しては、教皇様とモーラス司教様だけの秘密にすると言っていた。


「今後は覚悟して欲しい。おぬしが成人したら、聖女のお披露目をする。聖女誕生は、何十年も国民が待ち望んでいた希望じゃからの」


「はい」


「そしておぬしは自身を(ほこ)るがよい。おぬしが世に出した “魔法を使わず生成出来る回復薬” のおかげで、各地で回復薬が量産出来るようになった。おかげで教会の資金源が大きく増え、薬が安く提供出来るようになったのだぞ」


「良かったー! 光魔法の事を隠していたから、罪悪感で必死だったのですよ」


 教皇様は嬉しそうに「ふぉふぉふぉ。そうじゃったのか。成人してからも、離れの自室や裏庭は自由に使うがよい」と私が望んでいた事を逆に提案してくれた。


「最近は薬草の議題が多くてな・・」と呟いていたのは聞き流すことにする。



 その夜はおじいさまの家で私の “黒龍” 正式加入歓迎会が盛大に行われた。


 ちなみにステータス偽装は6歳の時だったし、時効にしてくれました。

 ありがとう教皇様。


読んでいただきありがとうございました。

※タイトルでネタバレしないよう何度も変更してごめんなさい。

ブックマーク、評価、いいね頂いた方感謝です!

誤字報告、本当に本当にありがとうございます!!

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― 新着の感想 ―
で、今後起きるであろう問題を起こす自分が聖女だと思い込んで逆恨みしてる妹はまだ野放し?
本当に100越えさせてるぅ……というか光適性少ないって女神様言ってたけど、マリー含めて2人しかいないのこの国!?そりゃあ、魔力使わない回復薬は大発明だよ……
[良い点] 良かったー!! 教皇様、めちゃめちゃ良い人ー✨
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