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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第二章 教会編

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お茶会

「マリー。婚約者を探してるって噂を聞いたけど、本当?」


 何処(どこ)かから個人情報が洩れているな。


「エヴァスさん。それは違います。探しているのは “偽装” の婚約者です」


 きっぱりと()()を強調して言う。

 天使だったエヴァスさんは好んで裏庭の薬草庭園に通うような、少し残念イケメンに育っている。


 ていうか “いつも思うけど” 学校はどうしたのよ。

 そして、アポなしで来ないで。


「なんで偽装?」


 そこで私は光適性や脳内妄想には触れず、迫りくる夜会に向けての対策の為だと説明する。


「なるほどね。それなら私が協力するよ! 友達じゃないか!」

「ありがとうございます。でも、それは流石に無理ですって」


「なぜ?」


 ちょっとそこの執事さん。

 突っ立ってないで、そこはあなたがこっそり耳元で説明する所なんですけど?

 と、目で訴えたらフイっと目を逸らされた。


 なっ! また面倒臭くなって丸投げされた!

 仕事しなさいよ。もう。


「……。エヴァスさんと黒神官の私とでは、身分が違いすぎるので、婚約は成立しないのです」


 子供にも分かるよう簡潔に説明する。

 気持ちは嬉しいけど、あなたは身分が高すぎるの。


 私から言うとエヴァスさんが気を使うのに。

 執事め。


「でもマリーは孤児じゃなくてS級冒険者の娘じゃないか。上級貴族より立場的には上だし」


 それは便宜上の立場であって、気品だの家柄だの血統だのを重んじるお貴族様と同じな訳ないでしょ。


 と、執事も分かっている癖に、目が合っても無視された。


 くぅ、あの執事……。

 それにハートさんの娘ってのも偽装だしね。


「とにかく、次期領主のエヴァスさんを、偽装婚約に巻き込む訳には行きませんからね。この件は忘れて下さい」


 無駄に(なつ)かれたエヴァスさんを横目に、偽装婚約は危険だなと思い始めた。



 ------------------


 11歳になった次男が突然「婚約したい女性がいる」と言い出した。

 一つ下のS級冒険者の娘だと言う。


 確かにS級冒険者は貴重だし、他国への流出を防ぐために国から立場が保証され、貴族にも(まさ)る扱いを受けてはいるけれど所詮はただの冒険者。


 魔獣と戦い、野宿をする、どこの馬の骨かも分からない野蛮な人間。


 そんな所の娘に誘惑されて……。

 賢くてしっかり者だと思っていた次男が、そんな奔放な娘の毒牙に……。


 長男は驚いて「賢くて良い子だけど、友人じゃないの?」とあまり詳しくない様子。


 あのエヴァス付きの執事は「お会いしてからご判断を」と、それしか言わないし。

 あの役立たずが。


 急いで会わせるよう伝え、お茶会をする事に。



 エヴァスにエスコートされ馬車から降りる姿は上級貴族そのもので、とても美しいご令嬢……。


 はっ、ダメダメ。

 このくらいで惑わされてはいけないわ。


「本日はお招き頂き、誠にありがとうございます」


 姿勢よくドレスの裾を持ち腰を下げる仕草も完璧で、手違いで別の子が来たのかもしれないと思い始めた。


 見定めるようによく観察しても全く(あら)がない。

 お茶を飲む姿勢、手先や仕草。


 私と同じくらい洗練されている。


「お母様、彼女は薬草の栽培方法や肥料について、とても博識なのですよ」


 まぁ、それは素敵!

 うちの領地の相談も出来るかしら!


 婚約の件をすっかり忘れてマリーと楽しくお喋りをし、あっという間にお茶会が終わってしまった。


「なんていい子なのでしょうね。とても頭のいい子だし。どこに出してもおかしくない、お上品な子だわ」


「お母様ならそう言って下さると思っていました」


 流石エヴァス、見る目があるわ。


「ところで彼女は、どちらのご令嬢だったかしら?」

「S級冒険者の娘と、最初にご説明したではありませんか」


 えっ、マリーがS級冒険者の娘?


「と、とても教育が行き届いたご家庭みたいね。彼女のご両親は上級貴族なのかしら?」

「さぁ。パーティーメンバーに、上級貴族がいるみたいですけど」


「さぁって。本気で婚約する気なら、しっかり調査なさい!」

「お母様。最初に言いましたよね。()()だって。早とちりにも、ほどがあります」


 どういうこと?

 詳しく話を聞くと、彼女は利害が一致する偽装婚約者を探しており、エヴァスは身分の差を理由に断られたと言う。


「なんですって? 偽装ですら断られたと?」

「はい。でも、どうしても友人の力になりたくて、お母様に助力を(あお)いだのですよ」


 なるほどね。

 だからあのお嬢さんは婚約の話に行かないよう薬草の話だけをして、さっさと帰っていったのね。


 (わたくし)としたことが!


 やられたわ! 上手いこと乗せられるなんて!

 中々やるじゃない。気に入ったわ。


 正式な手続きはせず、誰かに申し込まれた時は断る理由としてお互いに名前を出してもいいと持っていけば、彼女も承諾するしかなくなるわ。


 そして、既成事実を積み重ねれば外堀は埋まるわね。

 ふふふ。

 見てなさいよマリー。


 (わたくし)を手玉に取るなんて事させませんわよ。

 まずは徹底的に身元調査ね!


「エヴァス。この件は(わたくし)に任せなさい」

「はい。お母様」


読んでいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
マリーは手強い相手を敵に回したのか、味方にしたのかw
ダメダメじゃないですか。お母様と思ったら囲い込みにきたぁ!!
[一言] 恋愛タグだけは付かないようにお願いします。 ファンタジーの女性主人公なのだから、結婚が終着点みたいな作品はつまらない。いつまでも冒険していて欲しい。
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