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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第二章 教会編

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リリーが真実を知った日

「父さん、私もみんなみたいに魔法が使えるようになりたい」


 テーブルの向かいに座る父さんは、表情を硬くしたまま「無理だ」と言う。


「ねぇ、なんで? なんでダメなの?」

「リリー……」

「母さんは黙ってて! 父さん! ちゃんと説明してよ!」


 父さんと母さんは、顔を見合わせて(うなず)いた。

 やだ、何? 怖い。


「そろそろ話してもいい頃だな。ところで、ステータスを見たのは初めてか?」


「うん」


「昔、教えたはずじゃ……いや、禁止にしたのか」


 父さんはため息交じりに「ステータス()()オープンと唱えなさい」と言った。


「ステータスフルオープン?」


 ---------------------------

 リリー 女 10歳 緑適性

 Lv.1


 HP 10/10

 MP 5/5


 光属性Lv.1


 加護


 光の精霊

 ---------------------------


 うそ、これ “ひかりのせいれい(光の精霊)” って書いてあるよね?


「きゃー!! 私に光の精霊の加護! 私、聖女だったんだ!!」


 あまりにも嬉しくて、悲鳴を上げた。


 あの時白い光を見たと思ったのに、父さんが違うって言ったから!

 やっぱりあれは、夢じゃなかったんだ……。


 それなのに父さんも母さんも悲しそうな顔で私を見る。


 あれ? 字が違うのかな?

 ちょっと不安。


「なに? 違うの?」

「よく見ろ。お前の適性は緑だ」


「でも、加護は光だよね?」

「ああ」


 父さんは深くため息をついて姿勢を正した。


 なんで今まで、私が聖女だって事を隠して来たんだろう?


 父さんのただならぬ雰囲気に緊張する。


「適性のない加護は使えない、というのは知っているよな?」

「それは聞いた事あるけど……」


 父さんは、ゆっくり、はっきりとした口調で続ける。


「お前は光の適性が無いから、光の加護があっても使えない。加護がないのと同じなんだ」


 やっぱり光の加護なんだ。びっくりさせないでよ。


「意味わかんない。だって光の加護なんだよね?」


 みんなに光の加護を自慢しよーっと。

 みんなの驚いた顔が早く見たいなー。


 へへへ。ミーナに自慢したら悔しがるかな。


「リリー。落ち着いてよく聞きなさい。お前に双子の姉がいるのは、覚えているだろ?」


「うん。なんとなくは。生きてるの? みんなが話題を()けるから、死んだのかと思ってた」


「ああ、ここで生きてはいない。光適性があったのは()()()()で、姉の加護を()()()()()()んだ。そこにあるのは()()()()だ」


 ふーん。やっぱり死んでたんだ。


「で? 私、早く自慢しに行きたいんだけど」

「いいから座りなさい! 加護を貰った時の事は、覚えているだろ?」


 うずうずして腰を上げたら怒鳴られた。


 もう、めんどくさいなぁ。

 早くしてよ。


「んー、なんとなくは覚えてる。きれいな光が見えて飛びついたけど……あれやっぱり光の加護だったんだよね。すごーい。これでいい?」


「なんてことを……」


 母さんが両手で顔を(おお)って泣き出した。


 え? なんで泣くの?

 嬉しくないの?


 自分だけが浮かれていて、両親の重い雰囲気に戸惑ってしまう。


「どういう事?」

「奪われた姉は、どうなると思う?」


 は?


「それ、私に関係ないんだけど」

「お前と同じ “加護無し” になったんだ」


 父さんが、徐々に苛立(いらだ)ち始めてなんか怖い。

 それに、同じじゃないもん。


「私には光の加護があるじゃない」

「光の適性がないから、使えないと言ったろ?」


「光の加護があるのに?」


「そうだ。……はぁ。お前にはまだ、理解するのが難しいのか……。あの子はあの年で、私よりも早く、すべてを理解したというのに……」


 父さんはため息を吐いて「それで? 字は書ける様になったのか?」と聞いた。

 出来ないの知ってるくせに……。


「……まだ」

「なぜまだ出来ないんだ? いつまでそうやって、嫌なことから逃げ回る気なんだ」


「逃げてないもん! 魔法を教えてくれたら、やってあげるって言ってるの! それに、私は聖女なんだから命令しないで!」


 バン!!

 急に父さんが机を叩いて、びっくりした。


「二度と自分を聖女と言うな! もし言ったら教会に入れるから、そのつもりでいなさい!」


 何、急に。孤児にするって脅すなんて信じられない。


 結局、魔法を教えてくれる話はどうなったの。

 もう言える雰囲気じゃないし。


 父さんは「くそっ! あいつさえいたら、こんな事には……」と悔しそうに呟き、怒って自室に帰ってしまった。



 母さんは、目に涙を溜めて私を見る。


「リリー。光の加護を奪った罪は、死罪なのよ」


 え?

 じゃあ、姉がわたしの光を奪ったって事?


「なにそれ。許せない。双子の姉は、それで死罪になったの?」


「違うわ。奪ったのはリリー。あなたよ。あなたが全部悪いの。まだ10歳だから理解するのは難しいかしらね」


「なんで私が? 死罪になっていないじゃない」


 さっき死罪って言ったばかりじゃない。

 死んだのは姉の方じゃない。


「ほんの小さな子供だったから、許されたの。でもね『リリーが “光の加護” を持っている事を、周囲が知ったら投獄する』と言われたわ。だからよく聞いて。この事は絶対に秘密にするのよ」


「白い光に飛び付いただけなのに? 持ってるだけで?」

「それが奪った証拠になるのよ」


 なにそれ。なんで急に悪者にされちゃうの。


「じゃあ光の加護は、誰にも自慢できないの?」

「そうよ」


「魔法が使えないのも、そのせいなの?」

「そうよ」


「私の加護は死んだ姉が奪ったの?」


「違うわ。あなたが姉の加護を()()()()()()、自分の加護を()()()()()。あなたに色々と教えてくれていた、()()()()にね」


 捨ててなんかいない。

 欲しい方に飛び付いただけだもん。


「そんな……」


 だったらいらなかったのに。

 なんで止めてくれなかったの。


 全部、全部、姉のせいだ。


読んでいただきありがとうございました。

ブックマーク、評価、いいね頂いた方感謝です!

誤字報告、本当に本当にありがとうございます!!

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― 新着の感想 ―
さっさとこの妹を投獄して他人の光の加護を奪った罪で妹自身が殺してと懇願するまで激痛のある罰を与え続けて最後は思いつく最も惨たらしい方法で処刑しろ 斬首とかじゃ何の理解もせず苦しまないで死ぬだけ なぜそ…
さっさと親が責任もって殺すしかない こんなやつら要らないから全員物語からいなくなってほしい
あー、ガチの知的障害児じゃないですかぁ……話が全く通じない…………
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