表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第二章 教会編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/163

10歳になったリリー

「魔法を教えてくれたら、字を書く練習をするってば!」

「リリー。読み()()が先って、お父さんに言われたでしょ?」


 もう10歳になったのに、父さんも母さんも、なんで魔法を教えてくれないの。


 頑張って少し字が読めるようになったのに!

 書く方もだなんて知らない!


 嘘つき!


 みんな小さな頃から魔法を親に教えて貰ったり、どこかの偉い先生を雇ったりしてるのに。


「ルディは魔法の先生に、火魔法を習ってたよ。私も魔法の先生がいたら出来るのに! ルディだけずるい! 私も習いたい!」


 どんなにお願いしても、母さんは悲しそうな顔で笑うだけ。

 本当にイライラする。


「もういい。遊び行ってくる!」



 気分を変えて広場に行くと、1つ年上のワースと、同じ年のミーナが楽しそうに歩いて来た。


「どこに行くの?」

「今日はワースと二人で、お祭りの時の踊りを練習しに行くの」


 ミーナは頬を染めて、とても嬉しそうにワースを見る。

 へぇ、楽しそう。


「私も行きたい!」

「二人一組だから、リリーも誰か連れて来ないとダメよ」


「だったら私がワースとじゃダメ?」


 ちょっと首をかしげて言えば、ワースが「わぁっ」っと喜んでくれる。

 ふふ。

 ミーナが眉を(ひそ)め、急に不機嫌になって怒り出した。


「じゃあワースと行ってよ! あたし、キリカを誘って来るから!」


 ミーナってばすぐに怒るんだから。

 でもそう言われると、キリカの方が良かったかも。


「うふ。やっぱり私もキリカがいいかな」


 せっかくワースを譲ってあげたのにふたりとも不機嫌になるから、私は面倒になってキリカを誘いに行く事にする。


 ホント、女ってめんどくさいな。

 意味わかんない。



 広場の近くの小さな家の2階にあるキリカの部屋を見上げ、私は大きく息を吸った。

 

「キリカー。お祭りの踊りの練習に行こうよー」


 キリカが窓から顔を出し、私を見つけて笑顔になる。


「今、ルディが来てるから後でなー」


 何それ。キリカの癖に。


「私も混ぜてー」


 しばらくするとドアを開けてくれた。


「いいけど我儘(わがまま)言うなよな」

「ルディが魔法を教えくれたら、我儘(わがまま)言わないもん」


 急にキリカの機嫌が悪くなり、(あご)を上げて腕を組む。


「自分の名前すら書けない癖に。魔法より先にそっちだろ?」


 また、その話。

 魔法を教えて貰えるまで、絶対に母さんが喜ぶ事なんかしないんだもん。

 (なん)にも知らない癖に。


「意地悪言うキリカなんて、嫌い」

「ごめんって。そんなんじゃないって。俺が字を教えるって言ってるだけだよ」


 キリカってば私には弱い癖に、すぐにお説教をするんだから。

 キリカは黙って、私の言う事を聞いていればいいの。

 ふんだ。


 私たちが階段を駆け上がり部屋に入ると、ルディが半透明のパネルを眺めている。


「何それ?」

「おい! 勝手に他人のステータスを見るなよ!」


 覗き込んだ私に驚いて、ルディはすぐにパネルを消した。


 見えなかったもん。


「そんな言い方しなくても……」


 少し泣きそうな顔をして見せると、ルディとキリカが凄く慌ててる。

 ふふ。


「初めて見たんだもん」

「まさか自分のステータスを、見た事がないのか?」


 ルディみたいに先生に習ってないもん。

 意外そうに言わないでよ。


「うん」


「分かった。分かった。怒鳴って悪かったよ。ステータスオープンって言ってみて」


「ステータスオープン?」


 ---------------------------

 リリー 女 10歳 緑適性

 Lv.1

 ---------------------------


 ルディが私のステータスを見て、首を(ひね)る。


「レベル1? 魔獣を倒した事が無いのは分かるけど……。もしかして、魔法すら使った事が無いのか?」


 キリカも覗き込んで、眉を(ひそ)めた。


「ほんとだ。流石に少し遅いな。親に相談してみろって。な?」

「……うん」


 ふたりとも私の頭を撫でて慰めてくれたけど、違うんだもん。


 魔法を教えてくれないから、出来ないんだもん。

 自分でやってみても、分かんなかったんだもん。


 キリカは落ち込んでいる私をベッドの上に座らせると、お水を持って来てくれた。



 ----


「母さん! これ見て!!」


 私は家に帰るなりステータスをオープンさせ、母さんに『これ』と、指差す。


 ---------------------------

 リリー 女 10歳 緑適性

 Lv.1

 ---------------------------


「みんなにレベル1だってビックリされたの。どうして魔法を教えてくれないの?」


 夕食の準備をしていた母さんは、悲しそうな顔で振り返る。


 もういいってば、その顔は。

 なんなのよ。いったい。


「お父さんが帰ってきたら説明するから、先に手を洗って着替えてらっしゃい」


 なにそれ。説明って。


 とりあえず話を聞く為に言われた通りに手を洗い、着替えてから父さんの帰りを待った。


読んでいただきありがとうございました。

ブックマーク、評価、いいね頂いた方感謝です!

誤字報告、本当に本当にありがとうございます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
b8gg8nd6c8mu9iezk3y89oa1eknm_l3q_1cu_1xg_1p76v.jpg

3hjqeiwmi49q1knt97qv1nx9a63r_14wu_1jk_qs_6sxn.jpg
― 新着の感想 ―
10歳になっても矯正しようとしない親が一番の害だろ。 母親はすべての責任旦那に押し付けようとしてそうだし。 殴ってでも言うこと聞かせろよ
三つ子の魂百までって言うし、治らないよ、もうこれは さて、事実を知ったらどうなるかなぁと
[一言] 結局矯正は叶わずか…。 生来生まれ持った性質を変えようとするのは難しいとはいえ、何も変わってないとは。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ