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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第二章 教会編

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閑話 ソニー(おじいさま)の憂鬱

 10歳になって、ますます美しく成長した(マリー)が心配でならない。


 偽装婚約なんて、わしは絶対に絶対に認めん。

 マリーの事は、わしが守るぞ!



 思い返すと5年前、娘から(マリー)を頼むと言う手紙に書いてあったあの子は、好奇心は旺盛だが、無口で自分の殻に籠りがちだと。



 あいつはマリーの、何を見て、そう思ったのだろうか。



 実際のあの子は聡明で我慢強く、とても素直で明るい子だった。


 ちゃんと我儘も文句も沢山言ってくれる。

 それはわしらの愛情を信頼し、遠慮が無いという(あかし)だ。


 何よりも、あの子がわしに『大好き』と言って、笑ってくれる所がたまらん。

 うん、マリーは可愛くてたまらんな。


「なぁ爺さん」

「なんだ、ガイン」

「あいつの親から、誕生祝いの手紙は届かないのか?」


 そうなのだ。

 祝いどころか、5年間、何の連絡もない。


「5年前に、マリーを頼むと寄越したっきりだ。こちらからは何度か、マリーの保護の取り消しを願う手紙は出したが、返事が無いので諦めた」


「最後の見送りの時も、俺たちには声をかけるのに、マリーの事を見ようともしなかったからずっと気になっていたんだが……。やっぱりか」



 シドが「罪悪感なのかな」とグラスを傾ける。



 シドの事をマリーが「師匠、師匠」と(した)っているくらい、あの子にすべてを教えてくれたこの男には、感謝してもしきれない。


 S級冒険者から魔法の指導を直々に受けるなんて、普通は金を積んでも無理だ。

 惜しみなくマリーに最高の教育を(ほどこ)す男たちに、わしはどう(むく)いればよいのか。


 問題はもう片方の(リリー)の事だ。


「双子の妹のリリーは、天真爛漫で明るい子だと、手紙には書いてあったのだが、加護も無くてどうしているのだろうか」


「幼い妹ちゃんが自分の罪に潰されていなきゃいいんだがな。まぁ、両親が付いているんだ。心配なかろう」


「そうだな」


 わしにはマリーがいるから、リリーにまでは手が回らない。

 リリーには両親も揃っているし、ちゃんと支えられている事を祈るしかない。



 少し思い(ふけ)っていると、急に『わははは』と明るい笑い声がドアから入ってくる。


「そこで話を聞いたけど面白そうだから、マリーの婚約者候補になる事にしたよ」とフェルネットが笑いながらハートと共に帰って来た。


「な!」


 いやいや、認めんぞ。

 年は近いが、それでもだめだ。


「俺はシングルファーザーだしな」

義父上(ちちうえ)!」


「こんな息子いらないぞ」

「わはは」「ははは」「ふふん」


 皆が笑う中、ガインが申し訳なさそうな顔でハートを見る。

 いつものように「望んだことだ」とハートは笑う。


 世間じゃ色々と風当たりも強い筈なのに、マリーの為に申し訳ない。



 そうだな。

 マリーの為にこんなに沢山の愛情を注いでくれる、こんなに沢山の父親がいる。


 もう我が娘達の事は忘れて、わしもマリーの為だけに生きよう。


読んでいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
元家族が連絡してこないのは、負い目じゃなくて単純に死んだかいないものとして扱ってるだけだろ。というかマリー捨てたって爺はわかってるんだから連絡するなよ
アレが大人しくしてる訳ないと思うけどなぁ……
[一言] こんなに良い人達に大事にされてるのに主人公って酷い女だなと再度思う。 やっぱり、主人公は何度か痛い目にあってもらうしかないな。なるべく自分1人でやろうという姿勢は良い事だが危ないことがいま…
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