10歳になったマリー
今日で私は10歳になる。
おじいさまの家で盛大にお祝いをしてもらい、久しぶりにみんなの手料理をご馳走になった。
ふふふ。ケーキまで手作りだなんて。
自室のベッドの上に寝転んで魔力で凝縮した水を5個、手の平の上に出したまま自分に回復や解毒の魔法をかける。
はぁ、楽しかったなぁ。
さてと……。
私は片手で水をジャグリングし、そのまま水をゆっくり窓の外まで運ぶとパンっと弾いて霧散させた。
ふふん。
明日も早いし、早く寝なきゃ……。
----
お掃除お掃除らんらんらん。
裏庭薬草庭園は今、とっても素敵空間になっているのだ。
珍しい薬草やハーブでいっぱいにした、完全に趣味の空間。
花が咲いていないのでパっと見は雑草だけど、これは全部、宝の山なの。
魔力を使わずに薬草を育てる研究とか、魔力を使わず生成できる回復薬とか、回復薬の性能を大幅にアップさせる為の研究をしている。
ふふふん。
昔ガインさん達に買ってもらった、薬草の調合の本が私の宝物。
ボロボロになるまで読み込んでいる事を知って、みんなは凄く喜んでいた。
表の庭園のテーブルや、ベンチも少々拝借。
んーー、プロ庭師のドーマンさんにも褒められた、私だけの庭園!
と、いつもの様に幸せに浸っていると、人の気配がしたので慌ててほうきを持ち掃除をする。
「待て!」
「捕まえろ!」
制服の少年二人組が、同じく制服を着た下級生らしき少年を追いかけて走ってくる。
何々? 何事なの?
どちらも私より年上っぽいけど。
とりあえず身を隠し、追いかけている上級生の足元にほうきを投げて転ばせた。
「うわ、うわっ!」
ずさーーー。
もう一人の上級生は驚いて振り返り、転んだ子を立ち上がらせて下級生を壁まで追い詰めている。
お互いに何か言い合いをしているみたい。
子供の喧嘩に手を貸した事をちょっと反省。
下級生が壁を背にし私が投げたほうきで二人を牽制していると、白神官が「待ちなさい!」と走って来た。
その声に反応して上級生の二人は逃げて行く。
イジメかな?
下級生はベンチに腰をかけ白神官に事情を聞かれていた。
彼はじっと見ていた私の存在に気が付いて、軽く会釈をする。
……。
昼食の合図の鐘が鳴ったので私はそのまま食堂に向かった。
なんだったんだ、もう。
ここは私の庭園なのに。
----
相変わらず午後は資料室。
4年かけてこの膨大な量の資料を、ここまで整理した。
今の私はみんなの検索エンジン。
「マリー、前回の洪水被害の資料出してくれ」
「はいはい」
治水関係は奥から3番目で……と、あった、あった。
素早くいくつか資料を取る。
おそらくこの間の議事録にあった、あの辺の治水の周辺調査だな。
関連資料として、この資料も一緒に渡してあげよう。
「おう、今度うまい菓子でも持ってくるわ!」
彼は政務秘書のアイゼンさん、仕事が出来ない人が大嫌いな、少し融通の利かない真面目人間。
最初は一番煩い “パワハラさん” だったのに、今じゃ差し入れを一番持ってくる。
ふふん。
貸出履歴のほかに、ここにくる人の特徴も全部名簿にしてるのだ。
いざという時に誰に何が出来るのかを把握するのも、魔王気分に浸れるし。
運ばれてくる資料を新聞感覚で流し読みするのが日課だ。
教皇様もよくもこんな……教会の全情報が集まる大事な場所に、私なんかを……。
力を入れて欲しい方向に、ちょっと資料を偏って渡す、少し悪い子なのに。
ま、苦労したんだもん。このくらいのご褒美は貰わないとね。
後は……。
光が届かないほどの一番奥はまだ未開拓地帯なので、今年中になんとかしたいと思ってる。
さてと、今日もせっせと取り掛かりますか。
読んでいただきありがとうございました。
ブックマーク、評価、いいね頂いた方感謝です!
誤字報告、本当に本当にありがとうございます!!





