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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第二章 教会編

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裏庭薬草庭園

 聖騎士見習いのヴィドバリーさんは時々、裏庭薬草庭園(予定)に来るようになった。


 実家の領地が、主に薬草を扱っているらしい。

 なので私から聞く薬草によって変える土の成分や、効能を高めるために使う肥料などに興味津々なのだ。


 ちょっとだけ貴族を見直したよ。


 貴族って、もっと、こう……。

 刷り込まれた、ラノベのイメージが抜けないので自粛。


 ヴィドバリーさんの家は侯爵家で、領主さんとかなんとか。

 貴族社会には関わりたくないので、失礼にならないよう気を付けるのみ。


 そして、あの天使君はヴィドバリーさんの弟さんで更にビックリ。

 世の中狭いなぁ。


 だからこの兄弟、やたら裏庭薬草庭園の制作過程を見学に来る。

 そして、なにかと手伝おうとするの、ホントやめて欲しい。



「このレンガをここに積むんだよね?」

「そうですけど、()()()触らないでくださいね。見学以外禁止ですよ」


「俺は聖騎士で護衛なんだから、ちょっとぐらい良いんじゃないかな?」

「……。早く訓練に行って下さい」


 やれやれと、ヴィドバリーさんは弟君を置いて帰っていった。



 弟君の名はエヴァスルーゼン。私の1つ上の7歳。


 7歳にしては、とてもしっかりしている。

 地頭も良いのだろうけど、教育も良い様子。


 次男なのに、長男が聖騎士になったので家を継ぐらしい。


「お怪我でもしたら大変です。エヴァスルーゼン様は、そちらにお座り下さい」

「エヴァスでいいよ」


 そういえば、いつもの胡散臭い笑顔の執事はどこよ。


 坊ちゃんをひとりで放置しないで……と思っている所に「こちらにおいででしたか」と執事が毛布やらバスケットやらを色々持って歩いてきた。


 ここにいると分かっているからこその、余裕なんだろうけどさ。

 もっと危機感を持ってよ。


 いつのまにか建築現場で優雅にお茶とか始めちゃうけど、敢えて突っ込まない。


 気にしたら負け。


 そんなお貴族様のお遊びは無視して、無心にレンガを積む。

 ひたすら積む。

 ドロドロを作っては積む。


 昼食の鐘が鳴ったので作業を終わらせると、手を洗う為にお湯の入った桶を差し出された。


 この執事、気が利くな。


「ありがとうございます」


 相変わらず胡散臭い笑顔の執事にお礼を言うと、泥だらけの黒神官服のまま椅子に案内され、昼食が並べられる。


 え、まさかここで、お坊ちゃんと一緒に食べろって事?

 私も負けじと笑顔のまま「失礼致します」と座った。


 坊ちゃんに、学校はどうしたよ……とはさすがに直球すぎて聞けないな。

 なんて、面倒な。


「エヴァス様。普段このお時間は、何を?」


「学校で勉強しているよ。今日は学校の都合で自習になったので、ここで勉強させて貰いにね」


 お茶をしながら黒神官がレンガを並べる姿を見るのは、勉強とは言わない。


「まだ、苗を植える段階ではなくて申し訳ございません。退屈でしょう? 春には完成予定ですよ」


 春まで来るなよと遠回しに伝える。

 執事とアイコンタクトで、ちゃんと見張っとけと無言で釘も刺しておく。


「いえいえ、本当はお手伝いしたいけど、周りが許してくれなくて。でも、とっても楽しいよ」


 あああ、全然通じてない。

 そして、私はちっとも楽しくない。


 そんなんじゃ貴族社会どころか、京都でさえ生きていけないぞ。

 後で執事から話を聞いてよね。


「……私もですわ」


 にっこり笑って泥だらけの黒神官服で優雅にほほ笑んだ。

 もう無理。

 

読んでいただきありがとうございました。

※この小説を書き始めて2週間と少しが経ち、数日前に総合評価は7,000を超え、ブックマークも2,000を超えました。

 ひとえに応援してくださる皆様のおかげです。

 これからも応援して頂けるよう頑張りたいと思います。

ブックマーク、評価、いいね頂いた方感謝です!

誤字報告、本当に本当にありがとうございます!!

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― 新着の感想 ―
京都、恐ろしいところ……(風評被害
[良い点] とても可愛い主人公ですね。癒やされます。 関わる人達も快い人達ばかりで。 [一言] 私も仕事柄レンガをリアルで積みますが、7歳のマリーが レンガを積んでいる姿を想像すると、一生懸命さが浮か…
[良い点] 貴族より京都の方がやばい気がします!笑 いつも楽しみに読ませて頂いてます。ありがとうございます!
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