逃した魚は大きかったぞ!
裏庭でひとり、泥だらけで仁王立ちする私の前に天使が現れた。
「わぁ。ここには何が出来るの?」
天使じゃなくて、制服を着たかわいい男の子だ。
私より背が高いから年上かな?
「ここに、裏庭薬草庭園を造るつもりなんですよ」
「裏庭薬草庭園?」
おっとその前に、良いところのお坊ちゃんがこんな所にいたら大騒ぎになる。
雑談してる場合じゃない。
「迷われたのですか?」
「そう。探検していたらね」
迷子には見えない、堂々とした仕草で微笑む彼はまさに天使。
女の子と間違われそう。
「じゃあ心配してるかも知れないので、表の庭園までご案内しますね」
「ありがとう」
彼を表の庭園まで案内すると案の定、数人の制服組が彼を探していた。
お友達かな?
危ない、危ない。
彼が無事保護されたのを確認し、裏庭に戻る。
制服組がこっちに来るのは珍しいな。
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「こんにちは」
「こんにちは。マリーちゃん」
お買い物に行くので、聖騎士さんに護衛を頼みに。
一緒に来てくれるのは第一聖騎士団の騎士見習いのヴィドバリーさん、成人したての15歳。
第一聖騎士団は教皇様直轄部隊だからエリート中のエリートだ。
流石に聖騎士さんと歩くのに、ボロは着れない。
寄付された外出着が沢山あるからそれを着て行きなさいとノーテさんに言われたけど、団長さんが娘さんのお古のお洋服を沢山くれたので、そっちを着て来た。
なので、今日の私はお嬢様のようなのだ。
お店の裏口に顔を見せると、誰かが黒髪の店員のコーデンさんを呼んでくれる。
「今日は肥料をお願いします」
コーデンさんはカードと申請書を丁寧に受け取り、ボルドーさんを連れて戻って来た。
「おやおや、聖騎士様を裏口に入れては申し訳ない。表にお回りください」
「既に注文は終わっているからここで構わない。そうだよな?」
「はい」
「次は表からお願いしますね」とボルドーさんは苦笑い。
はは。
確かに今日は表からでも良かったかな。
ベンチに座って待っていると、コーデンさんが引換証とカードを丁寧に私の手に持たせてくれた。
「品物は教会の裏庭に、お届けしますね」
ヴィドバリーさんと手を繋いで、歩いて教会に戻る。
ヴィドバリーさんは見習いなので、勤務中は馬に人を同乗させる許可が下りていないのだ。
「マリーは肥料なんてどうするの?」
「薬草を育てるのです。緑魔法が使えないから、肥料が必要なのです」
「へぇ。緑の人に頼まないの?」
「聖騎士さんと違い、一般の人の魔力量は非常に少ないですからね。そう気軽に頼めません」
「なるほどなぁ」
ヴィドバリーさんは、しきりに感心している。
あ! 私に『しっ、しっ』って言った店員さんが、目を丸くして私を見てる!
へへんだ。
逃した魚は大きかったぞ!
大きな魚かどうかも分からないけど、勝手に溜飲を下げた。
ふふん。
読んでいただきありがとうございました。
長かったので分割しました。
今日ちょっと整理するのでお騒がせします。
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