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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第二章 教会編

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守りたい理由

 しまった。軽率だった……。


「ごめんなさい」

「ははは。いいんだ。隠すつもりもないし。むしろ知っていて欲しいな」


 ハートさんは私が罪悪感を(いだ)かないように、優しく微笑む。

 私の隣にそっと座ると、とてもとても優しい声で話しを始めた。


「俺の両親は旅商人でね。妹と俺と家族四人で、物を売りながら街を渡り歩いてたんだよ。その日は森を抜ける為、冒険者を雇って……」


 別の冒険者が、雇った冒険者を、理由は分からないが追いかけて来た。

 そして雇った冒険者は口論の末、殺されてしまう。


 目撃者と思われたのか、荷馬車にいた両親と幼い妹が殺された。

 全員殺してしまえば、魔獣に襲われた事にも出来ただろうし。


 前で手綱を持っていたハートさんは、父親からの『逃げろ』と言う声と妹の悲鳴に動揺し、動けなくなった。


 そして追い詰められ、いきなり風魔法が暴発する。

 気が付くと、周りは血の海だったって。


 どのくらいそこに居たのか分からないが、通りがかった師匠に助けられたと。


『家族を守れなかった』って言ったハートさんに『ちゃんと(かたき)()ったろ。偉かったな』と何度も褒められたのが救いだったって。


 身を守る為とはいえ、人を殺してしまったハートさんの心が壊れないように、師匠がずっと肯定し続けてくれたんだって。


「それからずっとシドさんと旅をした。ずっと人を守りたいと思ってた。家族をね」


 この人の心がこんなに強くて優しいのは、師匠の優しさに触れて育ったからなんだ。


「師匠もガインさんもフェルネットさんも、みんなハートさんの家族なのですね」

「ああそうだ。俺の家族は “黒龍” だ。マリー、お前もだよ」


 ハートさんがいつものように優しく笑い、私の頭を撫でてくれる。


 ふふふ。家族、家族かぁ……。

 私が愛されたくて堪らなかった、本当の家族。

 彼らの事を思い出すと、胸がチクリと痛くなった。


 だからかな。

 みんなは言い聞かせるように、何度も私にそう言ってくれる。

 私を愛してくれる家族はここにいる。



「さてと! 狩の続きだ!」


 ハートさんが明るい声を出して立ち上がると、遠くをめがけて矢を射った。


----


 むしゃ、むしゃ、もっ、もっ、もっ、もっ。

 お、おいしい……。


「あのお姉さん、料理上手ですね」

「そうだな。意外でびっくりしたよ」


 家庭的には見えなかったけど、料理上手とかポイント高いな。


「料理上手なお母さんが欲し……」


 ゴッ!


「いたっ」


 くぅ。ちょっと揶揄(からか)ったら(にら)まれた。


 やばい、次の剣の稽古が怖い。

 もう、揶揄(からか)うのやめよっと。



 家に帰ってガインさんにふざけて喋ったら、翌朝の稽古は容赦なかった。


 お母さんが出来てもいいのはホントなのに。いや、年齢的にはお姉さんか。

 とにかく遠慮なんていらないのにぃ。


読んでいただきありがとうございました。

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モテないん?S級なのに??
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