教皇様と初対面
お城みたいに広いなぁ。
白い女性神官さんの先導で、副団長さんに抱っこされたまま、団長さんと共に庭園をどんどん抜けていく。
建物に入り長い廊下を抜けた後、素敵な装飾のある扉の前で止まり、副団長さんは私を下に降ろしてくれた。
それを確認した白い女性神官さんが、扉を3回ノックする。
すると、内側から扉が開かれた。
戸惑う私の背中を団長さんに押され、中に進むと二人が私の後に続く。
両脇で二人がスッと片膝を突いたので、同じようにして頭を下げた。
「頭をあげよ」
顔を上げると、少し偉そうなおじいちゃんが、しかめっ面で豪華な机の上で手を組んでいる。
すぐに後ろで扉が閉まる音がした。
「ふぅ。もうよい。自由にせい」
「「はっ!」」
団長さん達は急に立ち上がり、ソファーにどかどかと座りだす。
私もつられてソファーの前まで来たら、後ろからおじいちゃんが私を抱き上げ、団長さんの向かい側に座らせてくれた。
男性の白神官さんが、優雅な仕草で紅茶を入れ、ソファーの後ろに下がると、おじいちゃんは私の隣にゆったりと座る。
「おぬしがマリーか……随分と探したぞ」
おじいちゃんが疲れ切った顔で笑う。
逃げ回っちゃってなんかすみません。
とりあえず愛想笑いをしておく。
「まぁよい。一番苦労したのはそのふたりじゃ」
団長さんたちは、疲労に満ちた顔で力なく笑った。
「それにしてもよく生きておった。どれほど心配したことか。しかも思ったより元気そうじゃな」
「はい。S級冒険者さん達との旅はとても快適で、ちっとも大変じゃなかったのですよ」
「なるほどな……。体調を崩したりは?」
「私のペースで進んでくれましたし、薬草の調合の知識も豊富で、村にいた時より手厚かったです」
「さすがはS級冒険者だな」
三人は顔を見合わせて頷きあっていた。
「そうじゃ、ステータスをフルで見せよ」
「ス、ステータスフルオープン」とドキドキしながらペンダントを握る。
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マリー 女 6歳 光適性
Lv.1
HP 10/10
MP 5/5
緑属性Lv.1
加護
緑の精霊
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おお。上手く偽装できてる。良かったー。
「うむ。思った通りじゃな。魔法が使えず心細かったじゃろ。じゃが安心せい。おぬしの母親から依頼を受けたので、成人まではここで保護することが決まったのじゃ。教会の敷地内なら身の安全が保障できる」
「はい」
ん? 身の安全?
「孤児やおぬしの様に、親から預けられた子らと一緒に、おぬしに合いそうな仕事を選んでおくので、色々勉強するのじゃ」
なるほど、やっぱりだな。
お母さんが依頼したのなら、未成年の私にはどうすることも出来ないんだ。
よし! 学校はすっぱり諦めて労働しよう。
「外に出ることは可能ですか?」
「もちろんじゃ。最初に手続きを済ませる必要はあるが、外出に制限はない。門限があるから気をつけよ」
「はい」
え? なんと!
制限ないんだ。自由なんだ。
「団長も副団長もわしも、おぬしの味方じゃ。困ったことがあれば相談せい」
「ありがとうございます」
いきなりすごいコネを手に入れたけど、このおじいちゃんは誰なんだ。
部屋を出ると団長さんたちと別れ、待っていた白い女性神官さんに、別の建物に連れていかれる。
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「今日からここがあなたのお部屋よ。服はこちらを着てね。後ほど教育係が来るので、中でおとなしく待っていてね」
そういうと、優しそうな白い女性神官さんは部屋を後にした。
大人神官は白服だけど、子供は黒服だ。
黒神官は孤児か親に捨てられた子供、成人したら教会から卒業する。
白神官は試験に合格したエリート、まぁ高級官僚みたいな身分だ。
だから同じ神官でも、白と黒とは全然扱いが違う。
一人部屋をもらえて良かったけど、ゆっくりしていられない。
急いで渡された服に着替え、私も黒い神官に変身。
今日から黒神官だ。
それにしても……。あードキドキした。
私はフェルネットさんから貰ったペンダントを、ギュっと握る。
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「これは盗賊や犯罪者がステータス偽装に使う、違法なペンダントなんだ。絶対に見つからないようにするんだよ。設定はしてあるから心配しなくていいからね」
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そう言って私の首にかけてくれた。
こんなの、闇取引でしか手に入らないじゃない。
下手したら、今回の私の依頼料より高そうなのに……。
本当は入学祝いだったのにって、少し照れて笑ってた。
フェルネットさん、ありがとう。
読んでいただきありがとうございました。
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