別離
「朝食の用意が出来たぞー」
「はーい」
撤収の為、作った壁やお風呂を更地にし、植物を生やしていると、朝食が出来たと呼ばれた。
ハートさんが私を抱き上げて、私用の高さの違う椅子に座らせてくれる。
いつもの光景だ。
でもなんか違う。
「マリー。食べながら聞いてくれ」
「はい」
「フェルネットが爺さんの家に行ったら、聖騎士が待っていた。追ってたのはこの聖騎士たちだった」
ガインさんの声が震えてる。
聖騎士がなんで追って来るの?
師匠がはてな顔の私の頭を、優しく撫でながら辛そうに笑う。
「マリーの母親が教皇様に、マリーを教会で成人するまで保護するよう依頼したそうだ。王都についたら聖騎士がマリーを連れて行く」
そんな!!
そこに私の意思はないのか……。
つい、大きく息を吸い、天を仰ぎ見る。
ガインさんが悔しそうに拳を握るのが目の端に映った。
やっとここまで辿り着いたのに、まさか成人になるまで10年近く教会に拘束される事になるとは。
今度は自由を奪うなんて、神はいないのかと流石に自分が可哀想になる。
でもここで私が嫌がれば迷惑がかかる。
みんなは家族じゃないし、実の親には誰も逆らえない。
それが分かっているから、私に教会に行くように言うしかないんだ。
こんなに良くして貰ったのに、それだけでも十分幸せなのに、何を迷うのよ。
綺麗に姿勢を正し、1年ぶりの作り笑顔でにっこり笑い「わかりました」と伝えた。
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それからは何の感情もなく作り笑顔のまま王都の外壁門に着くと、聖騎士に迎えられて冒険者ギルドまで一緒に行き、依頼達成の手続きをして、おじいさまに一度も会うことも出来ずに教会へ向かう。
「マリーなら大丈夫だ」と優しく微笑むハートさん。
「課題を忘れるな」と辛そうな師匠。
「うまくやれよ」とウィンクするフェルネットさん。
「強く生きろ」とすでに泣いてるガインさん。
連れられながら、何度も何度も振り返り手を振った。
笑顔だけを記憶に残して欲しくて、ずっとずっと頑張った。
しばらく歩くと聖騎士の副団長さんが私を抱き上げてくれる。
そしてとてもとても大きな王都の教会の、白い大理石で出来た彫刻が豪華な素敵な門をくぐった。
これで、第一部 旅立ち編は終了です。
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