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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第一章 旅立ち編

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別離

「朝食の用意が出来たぞー」

「はーい」


 撤収の為、作った壁やお風呂を更地にし、植物を生やしていると、朝食が出来たと呼ばれた。


 ハートさんが私を抱き上げて、私用(わたしよう)の高さの違う椅子に座らせてくれる。

 いつもの光景だ。


 でもなんか違う。


「マリー。食べながら聞いてくれ」

「はい」


「フェルネットが爺さんの家に行ったら、聖騎士が待っていた。追ってたのはこの聖騎士たちだった」


 ガインさんの声が震えてる。


 聖騎士がなんで追って来るの?

 師匠がはてな顔の私の頭を、優しく撫でながら辛そうに笑う。


「マリーの母親が教皇様に、マリーを教会で成人するまで保護するよう依頼したそうだ。王都についたら聖騎士がマリーを連れて行く」


 そんな!!


 そこに私の意思はないのか……。

 つい、大きく息を吸い、天を仰ぎ見る。


 ガインさんが悔しそうに(こぶし)を握るのが目の(はし)に映った。


 やっとここまで辿(たど)り着いたのに、まさか成人になるまで10年近く教会に拘束される事になるとは。


 今度は自由を奪うなんて、神はいないのかと流石に自分が可哀想になる。


 でもここで私が嫌がれば迷惑がかかる。

 みんなは家族じゃないし、実の親には誰も逆らえない。


 それが分かっているから、私に教会に行くように言うしかないんだ。

 こんなに良くして貰ったのに、それだけでも十分幸せなのに、何を迷うのよ。


 綺麗に姿勢を正し、1年ぶりの作り笑顔でにっこり笑い「わかりました」と伝えた。



----


 それからは何の感情もなく作り笑顔のまま王都の外壁門に着くと、聖騎士に迎えられて冒険者ギルドまで一緒に行き、依頼達成の手続きをして、おじいさまに一度も会うことも出来ずに教会へ向かう。


「マリーなら大丈夫だ」と優しく微笑むハートさん。

「課題を忘れるな」と辛そうな師匠。

「うまくやれよ」とウィンクするフェルネットさん。

「強く生きろ」とすでに泣いてるガインさん。


 連れられながら、何度も何度も振り返り手を振った。

 笑顔だけを記憶に残して欲しくて、ずっとずっと頑張った。


 しばらく歩くと聖騎士の副団長さんが私を抱き上げてくれる。

 そしてとてもとても大きな王都の教会の、白い大理石で出来た彫刻が豪華な素敵な門をくぐった。


これで、第一部 旅立ち編は終了です。

読んでいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
…………救いなんてなかった
 この世に救いはないのか…
[一言] あーもぅだめだぁ…マリーが可愛くて健気で、冒険者のパパたちとも本当に家族「みたい」どころか、家族そのものだったし…別離を読んでいて涙が止まらなくなりました… 転生したっていってもマリー実際5…
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