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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第一章 旅立ち編

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追う者と追われる者

「いったいあの(むすめ)はどこにいるんだ……」

「山……また超えちゃいましたね……」


 高台から、遠くにある王都を眺めて途方に暮れた。

 もう2往復した。


「教皇様に進捗(しんちょく)を催促されていて胃が痛い」

「目的地の祖父の家を、交代で見張るというのはどうですか?」


 副団長の立場はのんきでいいよな。


「なぁ、通常ルート以外で山越えって出来るものなのか?」

「私はS級冒険者ではないので正確なことは分かりません。ただ個人的な意見としては、子連れで他のルートは無理かと」

「私もそう思う」


 荷馬車も安全に通れる整備された通常ルートでは、季節にもよるが馬車なら2か月、強化魔法をかけた馬なら2週間ほどで超えられる。


 体力のない幼児を乗せた荷馬車なら、4か月から半年くらいが無理のないペースなんだが……。


 高温地帯、寒冷地帯、雪原地帯があるし、空調結界が施され、色々整備された野営ポイント以外での野宿はさすがに無理だ。

 更に野営ポイントでは行商人が商売しているし、食料も生活物資も手に入りやすい。


 それに通常ルート以外では、魔獣の討伐をしていないから、生息する魔物の強さも桁が違う。

 怪我でもして動けなくなっている可能性もあるのか……。

 うーーん。


「祖父の家で話を聞いてみるか」

「準備してきます」



----------------------------


「あれが王都ですか?」

「そうだ」

「フェルネット。マリーの爺さんの家の安全確認に行って来てくれ」


 途中で会った行商人から、馬を一頭だけ買ったのはこの為だったか。

 ちゃんと考えているんだなー。


 フェルネットさんはあっという間に駆け抜けていった。


「ちなみに私がいなかったら、皆さんは村から王都までどのくらいで着くのですか?」

「何もなければ3か月くらいか? 急げば1か月ちょっと……かな」

「な!」


「元々フェルネットやハートの訓練の為に、魔獣を倒しながらゆっくり王都に戻る予定だったんだ」

「馬を走らせるのと荷馬車にあわせてノロノロ歩くのじゃ、そのくらい違うしな」

「今回は追っ手もいたし」


 なんと!

 車と歩きじゃ確かに違うけど……。

 私の体調に合わせてって言うのもあるけど、確かに合宿もしたけど、でも3か月が1年て!


 本当ならそんなに短縮できるの?

 一生会えない距離に向かうんだと、気合を入れて家を出たのに!



「さ、フェルネットが帰ってくるまで、俺達はここで待機だ。マリー、結界といつもの野営の準備を頼む。ハートはマリーの護衛。シドさんと俺は狩りだ!」


 みんなが散ると、私は結界を張り、壁を作ったりテーブルや椅子を作り始めた。


 ハートさんは器用に高いところにある果物を、風魔法でスパーンと切って、落ちてくる実を風でふんわり受け止めている。


 魔法ってあんな風にも使えるのか……。

 勉強になるなぁ。



 もう夏も終わるのに、今日はちょっと湿度が高くて暑いから、結界の中から湿度を取って少しひんやりさせた。

 空調結界てエアコンがない世界ではほんと便利。


 そう考えるとコンセント1つでエアコンも冷蔵庫も電子レンジも使えるなんて、魔法みたいだったんだよなぁ。


「マリー。これちょっと成長させてくれ。サラダに使いたいんだけど量が足りないから」


 ハートさんがレタスっぽい野菜を指さした。

 目を(つむ)り成長をイメージして魔力を流すと、すぐにハートさんに手を取られる。


「そこまでだ」


 目の前には大きく成長したレタスが、いくつも生えていてびっくり。

 ハートさんは苦笑いして「マリーはすごいな」と収穫した。


 ここでどのくらい待機するのか分からなかったので、お風呂やキッチン、個室を丁寧に作って満足していると、木の剣をポンと手渡される。


 手に持った木の剣をしばらく眺めて、すごーく嫌な顔をハートさんに向けた。


「そんな顔をしても無駄無駄。ほら構えて」

「……はい」



読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ・転生者の伏線ってあったっけ…?(読み飛ばしていたらすみません) ・加護を賜るのは重大なこととはいえ、その重大さもわからないたかが5歳の子供の取った取られたの話だけで、取られた側が神…
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