夜空
「眠れないのか?」
「ガインさんも?」
星がきれいだなーって夜空を眺めていたら、ガインさんが毛布を持って来てくれた。
「ほれ」
毛布でぐるぐる巻きにされて抱っこされる。
ふふ、あったかーい。
ここはお父さんがいっぱいだ。
「マリーはさ、爺さんの所に着いたら何をするんだ?」
「王都の学校で農業について学ぶ予定です。でも当初の予定と大分狂ってしまって、少し戸惑っているのですよね」
「当初の予定?」
「魔法を使わずに、薬草を育てるってやつです」
「あれネタじゃなかったんだな」とガインさんがフッっと笑う。
大まじめですよ。
まったく。
「なんで薬草なんだ」
そういや、なんで薬草を育てなきゃと思ったんだろう。
……あ、そうか。
「ふふふ」
「どうした?」
「お母さんに言われたのですよ。加護の部屋から出てすぐに。双子の妹が聖女になるから、私は薬草を作って支えてあげるのよって」
「それって……」
ガインさんがギュっとしてくれる。
「その時は、事情を知らない母親の話を受け入れるしかなくて。でもなぜか、それが使命みたいに刷り込まれちゃったみたいです。私も今、気が付きました」
「お前は見た目よりずっと大人だな」
どうなのかな。
今思うと極度のストレスに晒された中で命令され、強い洗脳状態にあっただけな気がするけど……。
あの家族の事は、もういいや。
うふふ。ガインさんがお父さんだったらなぁ……なんて。
「でもまさか全属性の魔法が使えるとは……ですよ。ガインさん達には感謝しかないのです」
「フン。お前が頑張ったんだ」
旅の終わりが見えてきてから、あえてみんなが避けてきた話題。
旅が終わって私は何を目的に生きるんだろう。
加護が無くても生きていく覚悟は出来ていたのに、急に開かれた未来。
「こんなに素敵な自由を知ってしまうと、色々と贅沢になってしまいますね」
「そうだ。自由に生きろ。出会った頃みたいな、あの作り笑顔のマリーを見たら笑うぞ」
「ふふー。私もです」
ガインさんがあやすように体を揺らしてくれるから、だんだん眠くなってそのまま寝てしまった。
「お前はどんな大人になるんだろうなぁ。お前といるのが楽しくて、つい旅に時間をかけ過ぎちまったよ」
ガインさんの優しい声が、夢の中で聞こえた気がする。
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