山越え開始
安全な通常ルートの山道を使わず山越えをする為、荷馬車や不必要な荷物を行商人に売ることになった。
それでも荷物が多いと思っていたら、フェルネットさんが任せてって。
何かと思ったら私に闇属性の空間魔法を展開させて、そこに荷物を放り込む。
ちょっと?
恐ろしいほどの魔力を使って、全部の荷物が入ったけどなんか複雑。
異世界アニメではおなじみのアレも、この世界じゃ全然お手軽じゃない。
私の桁外れの魔力量がなきゃ胸ポケット以下だわ。
「いやー。やってみるもんだなー」
「フェルネット……。いや、お手柄だな」
「お前さんの、楽する事だけに回る頭は流石だな。はっはっはっ」
フェルネットさんが何故か得意げなんだけど。
やっぱりなんか腹立つな。
「手荷物がないからマリーを抱えて歩けるな」と、すっかり私のお守担当になったハートさんが抱き上げてくれる。
わーい、らくちんらくちん。
あははは。空間魔法ばんざい。
「マリー、危なくなったら自分に結界を張って、自分の身を守れ」
「はい!」
もう、私を守りながら戦うリスクはかけさせませんて。
「荷物がなくなったから、山越えは最も険しい最短ルートに変更しようと思うが、みんなの意見は?」
「いいね」
「追っ手をまくには最適だ」
「かなり時間短縮できるし、その分嬢ちゃんの修行に時間を使えるな」
みんなが楽しそうに私を見る。
いや、それはどうかな。
「よし。この先は今までの森の魔物と違って、強い魔物が多く生息する。みんな注意を怠るな」
こういう時のガインさんは男前だ。
普段はガサツだけど。
「マリー。索敵出来るか?」
ハートさんにそう言われて頷くと、抱き上げられたまま前に少し習った索敵魔法を使った。
生命反応が多すぎて、どれとエンカウントするのか全然わからないんだよね、これ。
「いることはいるんですけど、虫とか鳥とか小動物が沢山いるので、どれが警戒すべき生体なのか判断付きません」
「そっか。じゃあこれから毎日索敵をしながら移動ね。そのうち不必要な情報をカット出来るようになるから」
「はい!」
なるほど。
こういうのも慣れなのか。
ただ全部見えれば良いって事じゃないもんね。
「あの……だんだん気持ち悪くなってきたんですけど」
「索敵酔いだ。慣れたら気にならなくなる。気にせず続けろ」
索敵酔い? なにそれ聞いてないんですけど。
なんか目が回るよ。
いや、気にせず続けろって、気にするわ。
するとハートさんが「自分に結界を張って、ここから絶対に動くなよ」と、そっと私を降ろす。
一気に緊張感が増して、すぐさま自分に結界を張り全員に身体強化と守りの魔法をかけた。
みんな黙って目だけで合図している。
ぐわぁぁぁ。
うわ出た、寝起きの熊さんだ。
二階建てくらいの大きさの熊だ。
あまりの恐怖と驚きに、酔いも覚めた。
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