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ペケーニョ・デレーチョ  作者: クインテット
第一部 灯台で。
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小さな嵐

空は黒く染まり、飛沫(しぶき)の中、目を細めれば時折海が白く光っている。

暖かな家にいた頃、本で読んだことがある。あれを人は、遠雷と呼ぶのだ。

 

それが雷なのか、灯台の灯なのか、もはやそれさえも分からない。

船の竜骨が激しく軋んだ音を鳴らしている。

僕を船から引き剥がさんと激しく打ち付ける波と、遠雷の中、その音が僕の耳にこびりつく。

 

「こんな海のど真ん中でシケとは…とうとう悪運尽きたか。」

自分は運がいいと思っていたが、もう使い果たしていたらしい。

ここで終わるのなら構わない。僕が夢見た海でなら。

 

強く叩きつける雨で細めた目の隙間から、高波が見えた。

大きく、大きく、僕を飲み込もうと。

昔から変わらない。僕には選択権なんてない。

 

「神よ、どうか私にご加護を」

本当は、神に祈ったことはないけれど。神が僕に慈悲をくださるのなら…

目の前が暗転する。

軋む音。鯨の泣き声のような、海の声を聞く。

そこからの記憶は、どこにも引っ掛かっていない。

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