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聖竜変生、全てを統制する力

 レクレスの身体を包んでいた蒼白い光が一瞬巨大化して、一気に弾け飛んだ。

 中から出てきたのは神々しいまでの異形の姿をした存在だった。



 5mほどの巨躯に変化した肉体は神々しい光を放ちながら佇む。

 所々に鱗や隆起した棘のような皮膚が肩や腰にびっしりとついていた。


 ティアマットのように蒼白く光るその肉体は"神"といっても差し支えはないだろう。

 だがグリフォはすぐに感じ取った。


 変化したレクレスの魂から感じる同種の気配。

 ――――ドラゴンだッ!!


「……ふぅ、久々だよ。この姿になるのは。神の加護を定期的に幾つもつけないとすぐに封印が解けてしまうんだ。でも、今はもう必要ない。……この"聖竜"の力で君を倒すッ!」


『聖竜の……力?』


 レクレス曰く、彼の魂は生まれる寸前で聖なる竜の魂と融合したらしい。

 聖竜はこの世界を創った存在であり、グリフォと同一化した邪竜とは一線を画すほどの上位竜種だった。


 今のレクレスは人間と交わっていることにより半人半竜といった所か。

 高圧な闘気がグリフォの外骨格に何度も衝撃を与えている。


「君のせいで計画は滅茶苦茶だよ。本当は人間の姿で世界を……あらゆる次元に存在する宇宙全てを支配するつもりだったのに。……僕を法と認める世界を、僕を真理とする世界をッ!!」


『……そんなくだらねぇモンの為に、お前は生きてきたのか?』


「くだらないだと……? フン、下等生物が。だったら君の"復讐"はどうなんだ? それなんかよっぽどくだらないことだと思うね」


『どういうことだ?』


 レクレスは鼻で笑う。

 思わずグリフォの言葉に怒気が宿った。


「いいかい? 復讐とは"特権"だ。君達のような賤民や下等生物に復讐を行う権利なんて本来ないはずなんだ。神若しくは国といった上位に存在する者達の権利だ。その権利を君達が使うとどうなるか? ――――ただの悪事、社会秩序の敵なんだよ!」


 レクレスの薄ら笑いがより不気味なものへと変化していく。

 統制の権化たる聖竜レクレスの言葉は尚も歪さを増していった。


「ただの悪事にやれ大義だの仁義だの……くだらない。復讐などせずにそのまま無様に野垂れ死ぬ。若しくは自分で自分を殺す方が世界ひいては人間社会にとってクリーンな環境を築けるんだ。……だが、君はそんな世界を崩壊させようとしているッ!」


 ゆえに正しくない。

 この復讐は正当ではない。


 そう言いたかったのだろうか?


 世界の為に誰かが死ななくては……苦しまなくてはならない世界。

 復讐の権利を彼岸の彼方まで追いやり、賤民や下等生物とみなされた存在をぞんざいに扱う世界。


 表では『美しい政治』や『強い国家』を説きながら、復讐や報復をする者を暴力者以上に弾圧していく。

 

 復讐には刑罰を。

 だが、刑罰は人間を飼いならすにはうってつけだが、より善くはしない。

 

 そう考えていくと、グリフォから漏れ出たのは怒りではなく、笑いだった。


「な、なにがおかしい……」


『いや……、そうやってアグノスやリナリアも死んだんだなって思うとな』


「……彼等はヒトとして上等だったよ。身のほどをキチンと弁えて、報復を選ばす自ら苦しむ運命と死ぬ運命を受け入れたんだ」


『そうだ、アイツ等は……最期まで抵抗をしなかった。だが、俺はアイツ等の生き方を尊いとは思わねぇ。尊い犠牲とも……もう人間じゃない俺には思うことは出来ない』


 拳を握り、ふと天を見上げるグリフォ。

 人間の頃の記憶や理性のほとんどが瓦解している為か、彼等の顔が思い出せない。


 リナリアを思い出そうとすればすぐにティアマットの顔が浮かんでしまう。

 

『だがな……アイツ等は悪じゃない。なのに死んだんだ。テメェ等が勝手に思い浮かべた思想と国と秩序に殺されたんだ。平和という御題目を刃に変えてアイツ等の命に容赦なくぶっ刺したんだ』


「それがどうした? クズは死んで当然だよ。あんなのが長く生きてたって無意味なだけさ。僕が意味のある死を与えてやったんだ。頂上者であるこの僕がッ!」


 嗚呼……。

 これが善と悪の対立なのか……?




 世界と自分の為に全てを統制しようとする聖竜レクレス


 そんな世界の在り方を激しく憎悪し破壊する邪竜グリフォ


 


 きっとこれが対立というものの正体なのかもしれない。

 ――――全ては"にくしみ"から始まった。


 統制も破壊も、全ては同じ数字から始まったのだ。

 

 他者への不信。

 それが秩序へと如実に表される。


 誰を、なにを憎むかで人生が決まる。

 なんとも皮肉に満ちた話だろうか……。



「さぁ、そろそろおしゃべりは終わりにしよう。君は滅ぶんだ。君という悪はこの世から抹消されるべきなんだ」


『……出来ればいいな』


「なに? フ、僕の方が人間としても竜としても遥かに格上なんだぞ? もう君に勝機はないよ?」


『あろうがなかろうが、そんなことは知ったこっちゃねぇ。そんな曖昧なモンにすがるなんてドラゴンのやることじゃねぇだろ?』


「そうか……そうかもね。この世に君臨するドラゴンは一匹でいい。君はいらない」


『そうだな……ドラゴンは一匹でいい。――――行くぞぉ!!』



 お互い凄まじい雄叫びを上げて急接近。

 グリフォの蹴りとレクレスの膝蹴りがぶつかり合い強大な衝撃波となって周囲に響き渡る。




 これがグリフォにとっての最後の激闘となる。

 グリフォは全てを賭けて戦う、この地上に生まれたひとつのいのちとして。


次回の投稿は9/18の深夜となります。

御了承のほどよろしくお願い申し上げます

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