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社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第三章前半『おじメダル配布作戦』

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98/155

第98話 観光案内

『雰囲気が良いでござる』


 小高い丘、というには急な斜面が続いている。見上げた先に巨大な門がそびえ立ち、舗装された坂道をプレイヤーたちが進んでいく。ギルド、紅騎士団のホームにようやく来られた。


 高さが出る造りは素直に圧倒される。似通ったロケーションに和風の城壁を築きたくなるが、あれもこれもと望んでも軸がぶれる。回復代行結社の名称らしく隠れ家のイメージを大事にしたい。


 坂を上がると自然に呼吸が早くなった気がした。ゲームなのにと一人で恥ずかしくなって咳ばらいをする。リアルすぎるゆえの錯覚か。走り回るのに慣れても、まだまだ経験不足を感じた。新鮮な体験ができると、たまにはポジティブな考えを持っておく。


 頂上へ近づくにつれて門のスケールがより分かる。使われる石材の汚しは歴史を抱かせる按配で、ざらざらした触り心地も満足に頷けた。


『扉がないでござるな』


『ギルドの規模にかかわらず、建造物の大きさには手を焼くみたいです』


 門を越えると空き地が広がる。柱からつながる壁も中途半端で建設途中なのは明らかだ。


 しかし、それでも人だかりが見えた。何が行われているのか確かめるために近寄ると、多くの椅子が円形に並んでフィールドが作られていた。そこだけは綺麗に石が敷き詰められ、プレイヤー同士が戦闘を繰り広げる。


『ふむ、これはPVPイベントを開いているのでしょう』


『紅さんはいませんね』


『おそらく我々と同様に休憩中でござるな』


 白の制服を着た三人組と、様々な装備の三人組が武器を振り合う。奥で揺らめく旗には46勝6敗と書かれている。もちろん、紅騎士団の勝敗数だろう。


 前回のイベント参加者が見当たらないなか、層の厚さが窺えた。交代制をとれるのもギルド所属人数が多いおかげだ。


『例の忍者がいれば拙者もリベンジに挑戦したかったのですが』


 コヨミさんが相打ちになった相手か。紅さんに続く主要メンバーが初めに登場済みなら、休憩を終える時間は予想しにくかった。


 ふと今も自分たちのホームへ来てくれているプレイヤーに考えが及ぶ。そろそろ遊びを提供する側に戻る頃合いだ。


 PVPには不参加を決めて人だかりを離れ、城の予定地を簡単に周る。門以外の端は崖で守りに堅いのが見て取れた。こういう説得力を感じられる場所は魅力的に映る。


『完成した城内にも訪れたいでござるな』


『いつか探検できるといいですね』


 現状、ギルドメンバー以外をホームに招く手段はないけれど、実現が可能なのは今回で分かった。ぜひアップデートで細かに追加してほしい。


 紅さんの勇姿を見たかったが機会はあると信じ、お邪魔しましたで次に譲る。混雑は尚も継続中だった。


『いぶし銀のホーム予約が回ってきたので、最後に行きましょうか』


『了解です!』


 自分も楽しんでこそのイベントだ。ポータルで移動すると荒れた平原に出る。各所には天幕やたき火が作られていた。


「おらおらー!」


「この……!」


「こっちだ!」


 そして、プレイヤーたち全員が縦横無尽に走りながら戦っている。


『エリア全体でPVPが行われているでござるな』


『思い切った設定ですね』


 どうやらポータルの機能を持つ石碑周辺のみが安全らしい。観光するには危険な場所だ。


「おっしゃあああ! これで100人目!」


 ひと際大きい声に視線を向けると、見覚えのある角刈りさんが刀を掲げていた。頭の上に数字で100のマークが浮いている。


『倒したプレイヤーの数が頭上に表示される仕様でござるか』


 確かに、周りの人たちにも数字が浮かぶ。コヨミさんには0で、顔を上げると自分も0だった。


『いやあ、色々と見せ方があるものです』


 無秩序な空間に思えても一種のまとまりが生まれている。ひと工夫が面白さにつながっていそうだ。


 ただ、個人的にPVPへの参加は戸惑う。公式のイベントなら前のめりで記念にとなるけれど。自分たちのホームを優先する気持ちが上回るからなのかもしれない。


『コヨミさんはどうします?』


『拙者は遠慮しようかと。何か目的があれば飛び込みたいでござるが』


 先ほど言っていたリベンジに似た理由だろうか。PVPでなくとも、人それぞれ意欲が湧くポイントは違う。また遊びを考える日がやってくるかは運営次第だが、心に留めておきたかった。




 ◇




【DAO】イベント会場Part7【第三回】


531 名前:名無しの古代人

    おじのとこ入れてたのに

    忍者イベントが休止中だった


532 名前:名無しの古代人

    ギルドのメンバー数自体が少ないっぽいしな

    空き時間はできるだろ


533 名前:名無しの古代人

    開催予告をしてほしい


534 名前:名無しの古代人

    その時間に予約が殺到するだけ


535 名前:名無しの古代人

    PVPのとこは参加できたけど

    ちょっとでお腹いっぱい


536 名前:名無しの古代人

    個人開催の限界ってやつ?


537 名前:名無しの古代人

    言うて公式は時間が限られてるわけで

    日を跨ぐし大味になるのはしゃーなし


538 名前:名無しの古代人

    商品の用意はもちろん

    トーナメントを組んだりの手間は必要か


539 名前:名無しの古代人

    僕はランダム訪問で一人見て回るのだった

    色々買い込んだわ


540 名前:名無しの古代人

    わりと値段設定が安くてお得だよな

    売値に色が付く影響?


541 名前:名無しの古代人

    マーケットの価格は上昇傾向だしね


542 名前:名無しの古代人

    日が経つにつれて高くなるものだ

    イベントを有効活用すべし


543 名前:名無しの古代人

    つられてマーケットが落ち着くと助かる


544 名前:名無しの古代人

    おじの宝はどうなった?


545 名前:名無しの古代人

    ちょっと見に行ったがさっぱり

    人多かったしもう誰かが持ち出したかも


546 名前:名無しの古代人

    あの地図に該当するエリアは複数あった気が


547 名前:名無しの古代人

    お宝が何個か埋まってそう


548 名前:名無しの古代人

    記念品がほしかった

    また似たようなイベントを待ってる


549 名前:名無しの古代人

    開催期間の二日が短く感じるな


550 名前:名無しの古代人

    いくら期間が長くても個人のイベントだとね

    ゲームに割ける時間には限りがある


551 名前:名無しの古代人

    こんなとこにいないでゲームをやれ

    妖精おじのホームに忍者が現れてるぞ


552 名前:名無しの古代人

    相変わらずの混雑っぷりで入れん


553 名前:名無しの古代人

    なんか他のホーム紹介みたいなの増えてる


554 名前:名無しの古代人

    何それ

    貼って


555 名前:名無しの古代人

    おじが巡回済みのホームっぽい

    ここが良かったとか書いてある


556 名前:名無しの古代人

    みんな殺到するなこれ


557 名前:名無しの古代人

    普通にありがたいやつ

    イベントを真っ当に楽しんでるな


558 名前:名無しの古代人

    俺のとこも紹介してくれ

    おじの偽サイン入り色紙で稼ぐから


559 名前:名無しの古代人

    妖精おじさんにホームへ訪れてほしい人生だった

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