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社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第三章前半『おじメダル配布作戦』

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第93話 ホームの訪れに

 夕食を終え、入力したアイテムコードの内容をログインして確認する。遺跡から出土しそうな壺に甲冑のオブジェ、ドレス姿の女性が描かれた絵画など飾るには雰囲気が合わないもののなか、目当ての掛け軸を見て表情が緩まった。


 好きな絵柄や文字を自由に設定できる便利なアイテムだ。生産でも作れるようだが、その場合は後で変更が利かないとか。特典の内装セットだけあって、どれも独自の要素を持っていた。


 三台目のゲーム機が届きはしたけれど、コヨミさんからの続報はまだ。自分はお兄さんにとって完全な他人で、ゲーム上で出会った知り合いと紹介されても戸惑うはず。別に、こちらとしては急ぐ理由もなかった。より良い方向で考えてくれればいいし、迷惑だったら気楽に断ってもらいたい。


 掛け軸はアイテム欄での使用によって設定画面が開く。絵柄と文字を自前で用意するのは難しくプリセットが頼りだ。色々詰め込むと見づらさにつながるため、シンプルに抑えておく。


 飾る場所はもちろん囲炉裏の部屋。特典を心待ちにゲーム機の注文後、床の間を作って準備は万端だ。


「おお……」


 掛け軸を吊るすと寂しかった空間が様変わり。設定した忍の一文字は安直ながら、それっぽさは出ている。忍者を抱えるギルドが自ら主張するおかしさはともかく。


 部屋を出て入る恒例の儀式で楽しむ。装飾一つで全体が引き締まる、と評論家気取りに顎へ手を当ててみたり、くつろぐことしばらく。生産に精を出そうと思ったが、そろそろコヨミさんがログインするかもしれない。この掛け軸にもきっと反応してくれる……。


「こんばんはでござ、とおお!」


 と考えていたところ、タイミングよく横に現れた。期待通りの嬉しい驚き方に挨拶を返す。


「掛け軸でござるな!」


「別の文字にもできますよ」


「いえ、忍がいいかと!」


 忍者本人が満足でひと安心だ。


「いやあ、和風のアイテムは心が惹かれますね」


「散らからない程度に数を増やしていきたいです」


「言葉で知るわびさびも按配が難しいでござるな。拙者は生産で頑張らせていただきます!」


 飾りたくても自制が大事になる。ただ、アイテムの種類は数多い。季節に合わせて入れ替えるなど、工夫が必要だった。


 例えば花瓶や小物はどこへ置くのが正解か。棚があると手狭に拍車がかかる。部屋自体を大きくしたり、新たに別の部屋が追加で欲しい。ギルドホームの拡張チケット獲得も、今後の課題だ。


「……」


 お互いに無言のまま時間が過ぎる。ホームでは恒例だけれど、今日は何か違和感を覚えた。ちらちらと視線を向けられているような。


 話はあるが切り出しにくいのだろうか。思い当たるのは、やっぱりゲーム機の寄付について。ここは自分がさりげなく聞こう。勘違いならそれはそれで。


「そういえば、ゲーム機を寄付する話に進展はありましたか?」


「え、えっとですね……」


 コヨミさんが悩む様子を見せる。おそらく予想は当たりだが直接的な聞き方でしかなかったな。


「寄付からレンタルの方向性で考えていただくことは可能でしょうか……?」


「大丈夫ですよ」


「あ、その前に! 部活動と説明しましたが、実は学校と無関係に生徒個人の事情が大きくてですね。中身は少し待っていただきたく……」


 なるほど。この前は軽く応じたが複雑な背景があったのか。


「加えて、レンタルの相手が生徒だと様々な問題も……」


 学校を通さなくなり懸念が生まれるのは理解できた。


「金銭は受け取りません」


 寄贈でもいいが断られるのは目に見えている。


「都合がよくて申し訳ないです。その代わりになるものは検討中で、ナカノさんに納得してもらって初めてレンタルの話を進ませてください」


「分かりました」


 とりあえず、困らせていなかったのを知れてよかった。


「……」


 そして、再び沈黙が流れる。どうにか真面目なテンションから抜け出したいが。



≪運営よりお手紙が届きました≫



 システムメッセージの表示に助けられてメニューを開く。手紙アイコンを選択すると、イベントのお知らせという題名が新着に並ぶ。


「ナカノ殿!」


 コヨミさんにも同様の手紙が届いたらしい。


「ほうほう、ギルドと個人に関わらず参加者のホームへ移動が可能になるのでござるな」


「まだ人を招くには手を入れたい箇所だらけですね」


「寂れた演出に感じていただけるかと!」


 イベント参加者は多いはず。数あるホームの中で来てくれた人に対し、何か楽しめる遊びを用意できればいいのだが。


「宝の地図……」


「ふむ?」


 ふとした思いつきをコヨミさんに話すと、前のめりに賛同を得られた。




 ◇




【DAO】総合スレPart181


496 名前:名無しの古代人

    きたな


497 名前:名無しの古代人

    イベントか

    事前告知しただけに開催はすぐだ


498 名前:名無しの古代人

    でも期間が二日あるのか


499 名前:名無しの古代人

    これ参加者のホームに飛べるだけ?


500 名前:名無しの古代人

    訪れたプレイヤーにアイテム販売ができるみたい


501 名前:名無しの古代人

    マーケットでいい説


502 名前:名無しの古代人

    特別仕様で売値にプラスした額をもらえるってさ


503 名前:名無しの古代人

    金儲けイベントってこと?


504 名前:名無しの古代人

    普通にいろんなホームに行けるのは楽しいだろ


505 名前:名無しの古代人

    モデルルームみたいな


506 名前:名無しの古代人

    参考にさせていただきやす


507 名前:名無しの古代人

    まあ大手のギルドに人は集中するでしょ

    個人のホームとか行ってられん


508 名前:名無しの古代人

    ランダム訪問ぐらいあるさ


509 名前:名無しの古代人

    ランキングはなさそう

    結構緩いイベントだ


510 名前:名無しの古代人

    箸休め的な


511 名前:名無しの古代人

    ロボバトルは一体どこに


512 名前:名無しの古代人

    エイプリルフールまで待て


513 名前:名無しの古代人

    妖精おじさんのとこ行きたい


514 名前:名無しの古代人

    二日間ずっと入場制限で無理だぞ


515 名前:名無しの古代人

    集中は確実


516 名前:名無しの古代人

    別エリアだし部屋分けるのは簡単だろうけど


517 名前:名無しの古代人

    おじ本人がいるかもしれないのに

    予約制にしてくれ


518 名前:名無しの古代人

    おじ顔のプレイヤーが疑われるのか


519 名前:名無しの古代人

    遠くから眺めるにとどめろよ


520 名前:名無しの古代人

    サイン色紙持っていこ


521 名前:名無しの古代人

    俺は粘土で手形をもらう


522 名前:名無しの古代人

    僕はスクショでアクリルスタンドを作るんだ


523 名前:名無しの古代人

    公式でグッズ作ったら割と売れそう

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