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社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第三章前半『おじメダル配布作戦』

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85/155

第85話 岩石地帯で肩作り

 坑道跡地の朽ちた小屋に下り立ち先を行く。メインストーリーの進行度を考えると序盤のエリアに当たるはずだが、人が多くて支援のし甲斐があった。一日中遊んでいるのに進みが遅い自分にとっては嬉しい限りだ。


 早速、魔導書にコネクトヒールをストックした。癒しの祈りを人から人へ繋ぐ、という説明的におそらく複数のプレイヤーを対象にとるのだろう。回復の効率が良くなるのは非常に助かる。


 隠れて透明化を行い苦戦中の二人組や三人組を探す。ヒーラーが仲間にいると役割を奪ってしまうので、相手は適切に選ぶ。


「うげ! 後ろにもヘビがきてる!」


「タゲ取っといてくれ! こっちは俺がやる!」


 盾と剣を持つ二人組が忙しく戦いを繰り広げる。坑道跡地のモンスターは体力が低い代わりに攻撃力に優れ、さらに群れる傾向にあった。ソロの場合は、ほとんどが少数の孤立する個体を狙っていた。


 人の多さを活用した互いをカバーし合う方法は珍しい。ゲームを続けていると、プレイヤーの動きが必要以上にモンスターの横取りを避けてるように感じた。


 DAOに関わらずオンライン系のタイプに存在する暗黙の了解かもしれない。分かりやすく悪戦苦闘していれば手助けも正解だけれど、判断は主観に任される。なんとなく有難迷惑になる怖さは初心者にも理解できた。


 自分の回復行為も人によっては嫌がられる可能性もあるが、見つからなければシステム的な補助などプレイヤーとは別方向への疑念が生まれる。つまり、気配と姿を消して隠れるのが最も角が立たない方法だ。今一度、遊び方のきっかけとなった無償の愛に似た精神を思い出そう。


「また別のがきた!」


 厳しい状況に陥るのを見てすぐさま魔法を解放。ターゲットするプレイヤーの体力が回復後、近くのもう一人も時間差で体力が回復した。


「おい、なんか回復したな!?」


「これで勝つるぞ!」


 予想通りの効果を確認して静かに離れる。もしかすると、イベントで紅騎士団のヒーラーが用いた魔法だろうか。


 先を進みつつ何度も使い心地を試す。どうやら最大有効数は五人で、後になるほど回復量が落ちる。とはいえ、二人目までは通常のヒールとさほど変わらない。精神力の消費は二倍に満たずで複数人への回復にはコネクトヒールに軍配が上がった。


 繋がりの強さが影響を与える、の一文はパーティメンバーが優先されると読み取れる。コヨミさんと一緒に行動する時は、二人ともがダメージを負うシチュエーション自体少ない。しかし、キュル助とクロ蔵を戦線に投入しやすくモンスターの集団も相手にできそうだ。


 坑道跡地を抜けると岩石地帯が現れる。岩壁により進行方向が限られるエリアで、地面そのものはなだらかなため移動は容易い。ただ、森林が混在するうえに一メートル近い穴が所々に開いていた。中には骨が入っており不気味だが、潜んで透明化を行うのにちょうどいい。


「上だ上!」


 プレイヤーたちが視線を上に注意を向けている。何かと思えば、鷹に似たモンスターが飛び交う。ターゲット名はガンセキドリ。足で身体以上に大きな岩をぶら下げて、プレイヤーを見つけては放り投げ飛び去って行く。


 空中に漂い続けるので近接攻撃主体だと対応が難しい、特定のスキルが活躍するエリアだ。沼地でも回復魔法が便利だったように相性は大事。ここなら投擲を十二分に役立てられる。


 メニューからアイテム欄を開き何を投げるか選んでいると、スタック数の多い腐り玉が目についた。ゾンビの集団を倒したときに手に入れたもので、また臭いが気になり出す。使うには都合がよかった。


 アイテムを手に出すと野球ボール大の形でしっくりくるのが逆に憎らしい。まずは普通に飛んでいるガンセキドリを狙い、投げてみた。


「……」


 残念ながら僅かに逸れて声が漏れかける。ゲーム内での投擲には自信があっただけに肩を落とすけれど、次は覚えたてのラピッドスローに頼ろう。


 新たな腐り玉を手に狙いを定める。スキルを発動させて投げるとあまりの速さに、ガンセキドリの前方を通過した。先ほどの投擲を意識して動きを予測しすぎた。


 使用感を元に短めのクールタイムを待って再びラピッドスローを発動すると、見事に命中だ。ガンセキドリは掴んでいた岩を放し体勢が崩れた結果、高度を落として地面に足をつく。


「よし」


 これなら予測など必要ない。見たままの位置へ投げれば確実に当たるレベルで使い勝手がいい反面、慣れると通常の投擲に悪影響が出る。素早いモンスターや、ここぞという場面での運用が一番か。



≪ごわつき羽を入手しました≫

≪臭み鳥肉を入手しました≫



 突然、システムメッセージが流れてクエスチョンマークが浮かぶ。いつの間にか地面のガンセキドリが消えており、ピンとくる。腐り玉の説明にはぶつけた対象を毒状態にする、と書かれていた。そもそもの体力が低かったのか毒の状態異常が効果を発揮したのか、それともその両方か。意外と使えるアイテムだ。


 落ちた岩は砕けて小石にまでなったうえに、普通に拾えて投げることもできた。この機会にスキルなしでの練習をしておこう。




 ◇




【DAO】総合スレPart168


683 名前:名無しの古代人

    立て続けにイベントがあったせいか気が抜けてる

    ベンチに座ったまま三十分経ってたわ


684 名前:名無しの古代人

    俺は一時間経ってた


685 名前:名無しの古代人

    グラフィックは綺麗以上に気を遣ってるしね

    VR系の正しい楽しみ方ではある


686 名前:名無しの古代人

    最後には縁側で茶をしばくのがオンゲだ

    生き急ぐのは適度なほうが長く楽しめる


687 名前:名無しの古代人

    イベントに備えるとな

    あんばいが難しい


688 名前:名無しの古代人

    サブクエストは多いしマップも広いし

    遊びつくせるやつが何人いるかって話


689 名前:名無しの古代人

    なんだかんだ長期間続けそう

    別のゲームに移るほど欠点はない


690 名前:名無しの古代人

    丁寧な作りはポイント高し


691 名前:名無しの古代人

    オリジナルのエンジン使ってるよね


692 名前:名無しの古代人

    新作は軒並み同じゲームエンジンなのがちょっと

    VRあるあるだけど


693 名前:名無しの古代人

    何かクエスト以外の面白情報も欲しい


694 名前:名無しの古代人

    話題は俺たちが作っていくんだよ


695 名前:名無しの古代人

    ≫694

    頼んだ


696 名前:名無しの古代人

    すまん

    俺は具合が悪い


697 名前:名無しの古代人

    ホットなのは変わらず妖精おじさん


698 名前:名無しの古代人

    他だと有名ギルドのマスター連中?

    やっぱ話題性は弱そう


699 名前:名無しの古代人

    新しいおじさんを発掘してけ


700 名前:名無しの古代人

    憧れ勢が現れるならそろそろか


701 名前:名無しの古代人

    岩石地帯で地味なおじさんが石ころ投げまくってたぞ


702 名前:名無しの古代人

    臭そうな玉を投げてるのは見たかも

    ああいうキャラメイクするやつって本当にいるんだな


703 名前:名無しの古代人

    憧れは止められねぇ


704 名前:名無しの古代人

    臭玉投擲おじさんはレア度高め


705 名前:名無しの古代人

    投げは不人気側のスキルだっけ?


706 名前:名無しの古代人

    消費アイテムが必須系はな

    用意が面倒で敬遠しがち


707 名前:名無しの古代人

    サブでも影が薄い

    どうせなら弓を選ぶ


708 名前:名無しの古代人

    あえて投げを使うかって話

    威力も距離も弓に比べると控えめだ


709 名前:名無しの古代人

    複合スキルを考えると幅が狭まるから

    近接でも魔法を覚えたりで手が回らん


710 名前:名無しの古代人

    サブを充実させると器用貧乏になるし


711 名前:名無しの古代人

    みんなの意見を踏まえて

    臭玉投擲おじさんはスーパーレアでよろしいか?


712 名前:名無しの古代人

    ハイパーレアでもいいぐらいだけど


713 名前:名無しの古代人

    おじさんコレクション始まったね


714 名前:名無しの古代人

    おじコレ図鑑を埋めておじさんマスターを目指そう


715 名前:名無しの古代人

    お前らっておじさん好きだよな

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― 新着の感想 ―
[一言] そのおじ妖精おじなんだよなぁ....
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