第82話　エンドロール

「お疲れさまでござる！」

「お疲れ様でした」

　イベントのマップから転送され、ギルドのホームに戻ってコヨミさんと合流する。触手装備を外して、すっかりオフモードだ。

「よくぞ、生き残ってくださいました！」

「地面に開けてくれた穴のおかげです」

　おそらく透明化のみだと途中で力尽きていた。運の良さが重なったとはいえ、紅さんに競り勝てるだなんて。まさに紙一重だった。実感が湧かないままに緊張から解放される。

「イベントのマークで準備中との表示が残っていますが、まだ何かあるのでしょうか」

　確かに準備中の文字がＵＩの端に点滅で主張する。前回のイベント終わりを思い出すと、手紙でランキングの記載に時間がかかるときていたが。

「おや？　ムービーの再生が始まるみたいですよ」

「自分の方にもきました」

　再生しますか、との選択肢に迷わずイエス。目の前にウィンドウが開いて動画が流れる。

「これは……イベント中の映像？」

「配信区域の映像を編集したものでござろうか」

　言われてみるとそれっぽさがある。洒落たＢＧＭもついていて仕事の早さに驚く。こういう形で余韻に浸れるのはありがたかった。

「沼地が映りましたよ！」

「ジーニアスが戦っていますね」

　初めに支援したギルドが最後の広場に残ったのを考えると、なんだか感慨深い。さらに、二大ギルドの一角、いぶし銀をも倒したのだ。関わった人たちが活躍するのは素直に嬉しく思えた。

「我々が範囲外にいる場面でござるな」

　数多い配信区域の中で覚えのあるシーンが選ばれると楽しさが増す。

「枝葉の隙間にコヨミさんが見えてますよ」

　ちょうど雫石を投げ込むタイミングで、他のプレイヤーからすると謎の行動だろう。

「この段階では触手をかぶっていませんでしたね。惜しいことをしました」

　すっかり愛着が湧いたのか映り具合に悔いが残るらしい。自分の場合は映っていなくてホッとする。こっそり隠れる姿をカメラに捉えられるのは、やはり間抜けでしかなかった。

「むむ、準備中の文字が集計中に変わっているでござる。もしやランキングでしょうか」

「ムービーもですが早いですね」

　最後にチャンピオンと表示はされたけれど、あくまで唯一の生き残りに対してと考えておく。結局、ランキングに入らずだと落ち込んでしまう。期待は控えめにだ。

　映像はシーンを切り替えつつも流れ続ける。足を運んだ廃墟や墓場、遺跡にコロッセオなどの他、漁村や砂浜といった知らないエリアも登場した。

「もっと色々なところへ訪れてみたかった気もします」

「イベントが全てではないでござるよ！」

「それもそうですね」

　まだまだＤＡＯには遊びしろばかり。競い合うなかでのほど良い緊張感もいいが、のんびり見て回る楽しさもあった。

「ぜひ探検に出かけましょう！」

「よろしくお願いします」

　囲炉裏の前でくつろぎながら、しばし待つ。集計中と分かりやすくあるからには、今日中に発表が行われるはず。きっと、イベントの振り返り映像も退屈させないためのものだ。

　そして、何分経ったか気になり始めた頃に映像が暗く変化し、ＢＧＭも小さく絞られる。完全に黒い画面へ遷移すると新たなＢＧＭと共に、イベントへの参加ギルドがスクロールした。

「ほほう、エンドロール風でござるな」

　横には切り取られたシーンが付随している。手の込みように感心だ。ギルド名がずらりと流れた後でランキングに移る。百位からの表示で急に緊張が戻った。まだ回復代行結社の名称は出ていない。

　いつ現れるか静かに見守る。手違いによる記載漏れの可能性など、別の意味でもドキドキするが。

「いぶし銀の名前でござる！」

「ジーニアスもきましたね」

　あっという間に順位は一桁台。文字も大きくなって紅騎士団が二位で登場し、回復代行結社が続いた。

　◇

【ＤＡＯ】イベント会場Ｐａｒｔ１４【第二回】

２１７　名前：名無しの古代人

　　　　回復代行結社が一位だ

２１８　名前：名無しの古代人

　　　　最後のワンシーンが広場の草で笑う

２１９　名前：名無しの古代人

　　　　地面に埋まってたからか？

２２０　名前：名無しの古代人

　　　　普通ならプレイヤーの姿が映ってたんだろうな

２２１　名前：名無しの古代人

　　　　紅騎士団を押しのけてトップとは

２２２　名前：名無しの古代人

　　　　まあ勝ち残ったのは妖精おじさんだし

　　　　生存ポイントの振り分けは多いでしょ

２２３　名前：名無しの古代人

　　　　道中だと撃破でポイント稼いでそうだけど

２２４　名前：名無しの古代人

　　　　警戒されてたみたいだし

　　　　上手く倒せなかった説

２２５　名前：名無しの古代人

　　　　妖精おじが倒せてるとも思えん

２２６　名前：名無しの古代人

　　　　メンバーの触手頭がわりとやってた印象

２２７　名前：名無しの古代人

　　　　おじも紅の牽制にペット使ってたし

　　　　意外とイケイケに稼いでた可能性も

２２８　名前：名無しの古代人

　　　　変わったカラスだよね

　　　　ドクロの仮面とかさ

２２９　名前：名無しの古代人

　　　　装飾品はつけられたっけ？

２３０　名前：名無しの古代人

　　　　空を飛んで遠距離攻撃が可能なのは強い

　　　　相手にするのも面倒だ

２３１　名前：名無しの古代人

　　　　実際あれがなきゃ紅が勝ってた

２３２　名前：名無しの古代人

　　　　順位が気になって運営にメッセージ送ったら返事がきた

　　　　戦況に寄与する行動にポイントを付与してるみたい

２３３　名前：名無しの古代人

　　　　わざわざ聞いたのか

　　　　迷惑行為一歩手前だぞ

２３４　名前：名無しの古代人

　　　　順位ってランキングのだろ？

　　　　返事が早すぎる

２３５　名前：名無しの古代人

　　　　一個人にわざわざクソ丁寧かよ

　　　　ムービーにエンドロールといい力入ってるな

２３６　名前：名無しの古代人

　　　　でもポイントの扱いは納得できる

　　　　対人に全力で振るのは避けたいわけだ

２３７　名前：名無しの古代人

　　　　何事もバランスか

２３８　名前：名無しの古代人

　　　　生産にも活躍の場をください

２３９　名前：名無しの古代人

　　　　そのうちくる

　　　　むしろ次のイベントとか

２４０　名前：名無しの古代人

　　　　さすがに三回連続で対人はな

２４１　名前：名無しの古代人

　　　　ゆるふわイベントね

２４２　名前：名無しの古代人

　　　　そして身体は闘争を求める

　◇

【ＤＡＯ】幸運の妖精おじさんＰａｒｔ７

５６３　名前：名無しの古代人

　　　　神のギルドがイベントで一番だったと聞いて

５６４　名前：名無しの古代人

　　　　神の詮索とは不敬者め

５６５　名前：名無しの古代人

　　　　回復代行結社とはまた妙なネーミング

５６６　名前：名無しの古代人

　　　　宗教っぽさは感じる

５６７　名前：名無しの古代人

　　　　言うて確定じゃない

５６８　名前：名無しの古代人

　　　　プレイングはそのもの

　　　　タルに隠れたり本物以上かも

５６９　名前：名無しの古代人

　　　　本物だったら大盤振る舞いの回復だったな

５７０　名前：名無しの古代人

　　　　対人イベント最終盤に残るのはハードルが高い

５７１　名前：名無しの古代人

　　　　回復代行結社には入れんの？

５７２　名前：名無しの古代人

　　　　正直難しい

　　　　ギルド情報を非公開にしてるし

５７３　名前：名無しの古代人

　　　　配信ですら姿を見せないと中々ね

５７４　名前：名無しの古代人

　　　　触手頭をきっかけになんとか

５７５　名前：名無しの古代人

　　　　あれはどこにいても目立つわな

５７６　名前：名無しの古代人

　　　　これから触手探しが始まりそう

５７７　名前：名無しの古代人

　　　　ストーカーはやめろよ

５７８　名前：名無しの古代人

　　　　無関係のプレイヤーが装備してたらトラブル必至

　　　　ワールドアイテムはないでしょ

５７９　名前：名無しの古代人

　　　　神はそろそろと仰った

　　　　始まるぞ

５８０　名前：名無しの古代人

　　　　そういえばイベント中に何か聞こえたみたいね

５８１　名前：名無しの古代人

　　　　一体何が始まるんです？

５８２　名前：名無しの古代人

　　　　知らんのか？

５８３　名前：名無しの古代人

　　　　知らん

５８４　名前：名無しの古代人

　　　　≫５８３

　　　　今一度信仰心を鍛え直してこい

５８５　名前：名無しの古代人

　　　　（一スレ目からいるのに知らないとは言えない）