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社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第二章『回復代行結社でござる』

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第75話 月灯りふんわり落ちてくる森

「コロッセオでは逃したが、ここで決着をつける!」


 角刈りさんが戻ってきたのはいいものの、相変わらず好戦的だ。


「待ちな。紅騎士団の相手をするなら生き残れないよ。やるか最後のヒーローになるか、どっちを優先するんだい?」


「両方!」


「だったら周りを蹴散らすまで本命は我慢しな」


「あー、また協力か?」


「舞台を整えるのさ。頂上決戦は好きだろ」


「いいこと言うじゃねーか。紅! おれたちの邪魔はするなよ!」


 いぶし銀のヒーラーが求める方向に話をまとめてくれた。たしなめるどころか完全にブレーンの役回りだ。猪突猛進な角刈りさんとは相性が良くぴったりだった。


 とにかく、後は見守りながら支援のタイミングを計るのみ。戦況を大きく動かすのは難しいが、少しばかりの力添えで流れのきっかけになれば万々歳だ。


「仕切り直しだ! かかって来い!」


 視界の方向が限られるため何人のプレイヤーがいるかは謎だけれど、中央で構える二大ギルドを押しつぶすほどの数はいないようだった。


 早速、牽制目的の小競り合いが起き始める。ダメージゾーンを絡めた戦いはどちらの有利に傾くか分からない。時間稼ぎをするのか勝負を決めにかかるのか、各々の判断に差が生まれそうだ。


 足並みが揃いにくい場合はコロッセオと似た展開になると思いきや、中へ深く切り込む姿がちらほら見られた。深手を負う前に下がるなど上手さを感じる。


 ダメージを負えば回復アイテムを使い、クールタイム中には回復魔法の出番。繰り返せば精神力が尽きてしまう。狙いはそこだと推測できた。


 ヒーラーの数は周りのパーティに分がある。死ぬのを避けて安全策を取るには賢い手段と思えた。


「サークルスラッシュ」


 紅さんは強力な一撃を使わず通常の攻撃やスキルに留まる。攻めではなく守りへの温存か。クールタイム中ではないのが明らかで周りは警戒に気を回す。きっとコロッセオで目の当たりにしたプレイヤーもいるはずだった。


 ダメージゾーンが迫っての焦りや混乱を利用するつもりかも、などと行動の理由を自分なりに考えて介入場所を探る。結局、問題は精神力に行きつく。


 苦しくなると紅さんたちは動かざるを得ず、おそらく多少の無理を押し通す。ヒールとマナグレイスを効果的に選択して支援したい。


『周りの皆さまも背中には気をつけているでござるな』


『さすがに最終盤は手強さが増しますね』


 表面上は協力しつつも、やはり出し抜く機会を窺っているのか。


『拙者が無暗に攻撃を行うと確実に狙われて逃げ回るのは大変でしょう。ダメージゾーンへ潜むのはギリギリまで引き延ばしたいでござるし。混乱に乗じる必要があります』


 ここは事態の進展を待つのが最善だ。


『回復が必要な時は正面に姿を見せてください』


『了解でござる!』


 パーティメンバーを対象にした回復ができるとターゲットは不要になるのだろうか。もしそうなら視界が悪いなかでも便利に使える。ぜひ今後のために覚えておきたくなってきた。


「フレイムマイト」


 そして、炎の爆発が急に巻き起こる。誰もがいつ動くのかと身構えていたがトリガーを引くのは紅さんで、一人のプレイヤーが簡単に消し飛んだ。


 周りが色めきだって空気が変わる。大技の後がチャンスとこぞって攻めに転じ始めた。


「フレイムブレイド」


 紅騎士団は陣形を縮めて迎え撃つ。パーティ全員に回復魔法が及ぶのを想定し、より攻撃を受けるメンバーを見極める。


「雷狼!」


 ダメージが重なって一気に体力が減るのに備え魔導書へのストックを済ますと、割れた獣の鳴き声と共に雷のエフェクトが散った。


「おら、貸しひとつだ!」


 角刈りさんの仕業で攻撃を受けたプレイヤーが倒れる。周りの勢いが削がれて明らかな動揺が見られた。


「この馬鹿。隠し玉って話はどうしたのさ」


「あいつらにだけカッコつけさせてたまるか!」


「まったく……紅騎士団への対抗策だったろ?」


「気合と実力で勝つ!」


 コロッセオでは使っていなかったスキルで、紅さんたちと戦うときの為に隠していたらしい。メンバーが一人減るいぶし銀にとっては少々困った出来事か。


 しかし、今のがなければ受け身の状況だった。紅騎士団はといえば好機と捉えたようで攻めに向かう。スキルのクールタイムも曖昧になって相手をする側は大変だ。


『さあ、拙者も動くでござるよ』


 コヨミさんの楽し気な声も聞こえてきた。自分も精一杯、支援に励もう。




 ◇




【DAO】イベント会場Part10【第二回】


586 名前:名無しの古代人

    雷狼?

    刀の複合スキルかな


587 名前:名無しの古代人

    紅といい派手で羨ましい限り


588 名前:名無しの古代人

    これが巨大ギルドの力だ


589 名前:名無しの古代人

    そのうち皆も使えるようになるから

    我慢しなさい


590 名前:名無しの古代人

    紅騎士団といぶし銀が劣勢に見えたが

    押し始めたか?


591 名前:名無しの古代人

    そもそも数の暴力相手じゃな

    我が身可愛さも周りの数が減るにつれて萎む


592 名前:名無しの古代人

    さてさて

    コロッセオとどう変わるのか


593 名前:名無しの古代人

    いぶし銀はすでに一人減ってるけど


594 名前:名無しの古代人

    順当にいけば各個撃破で終わる


595 名前:名無しの古代人

    二大ギルドが処してくって?


596 名前:名無しの古代人

    二大ギルドが処されてくに一票


597 名前:名無しの古代人

    数の差は二倍ちょっと


598 名前:名無しの古代人

    コロッセオよりマシやん


599 名前:名無しの古代人

    全体の練度が上がってるし

    倒せば名前が売れるから必死だろ


600 名前:名無しの古代人

    このイベントで四天王が生まれるのか


601 名前:名無しの古代人

    奴は四天王の中でも最弱


602 名前:名無しの古代人

    あー

    紅騎士団のメガネが死んだな


603 名前:名無しの古代人

    サブマスかなんかだっけ

    盾持ってるメンバーより早い退場か


604 名前:名無しの古代人

    タンクの回復が間に合わんなら自分がって感じ?


605 名前:名無しの古代人

    ジリ貧まっしぐら


606 名前:名無しの古代人

    いや意外に持ちこたえてるぞ


607 名前:名無しの古代人

    この回復量の多さは……


608 名前:名無しの古代人

    埋葬された妖精おじさんの仕業だ


609 名前:名無しの古代人

    カメラが生きてるもんな

    紅騎士団への肩入れはコロッセオでもあったか

    関係者説が出てきた


610 名前:名無しの古代人

    俺も回復してもらったし関係者でいい?


611 名前:名無しの古代人

    妖精おじとつながるには紅騎士団に会えばいいと


612 名前:名無しの古代人

    門前払いがオチ


613 名前:名無しの古代人

    いぶし銀は二人目がやられたな


614 名前:名無しの古代人

    周りが勢いづいたところで触手頭が動くのか

    背中から一撃入れての離脱が手慣れてる


615 名前:名無しの古代人

    紅と角刈りもタイミングよく大技で仕留めた模様

    クールタイム次第なとこあるな


616 名前:名無しの古代人

    かなり競り合ってるぞ


617 名前:名無しの古代人

    紅騎士団といぶし銀は各パーティをまばらに狙うね


618 名前:名無しの古代人

    パーティの壊滅より連携を防ぐの優先っぽい


619 名前:名無しの古代人

    みんな考えながらやってんだな

    当たり前だが


620 名前:名無しの古代人

    おれは黙って使われる方がいいわ


621 名前:名無しの古代人

    いぶし銀のタンクが死にそう


622 名前:名無しの古代人

    数が減るのは周りが早いけど

    被弾の蓄積は避けられん


623 名前:名無しの古代人

    そろそろダメージゾーンも危険域


624 名前:名無しの古代人

    全体が覆われる前に決着がつくかどうか


625 名前:名無しの古代人

    紅騎士団も盾が不安になってきた


626 名前:名無しの古代人

    また大技発動できればとんとんな状況?


627 名前:名無しの古代人

    Xファクター妖精おじの差がでるかも

    決めきれると踏み込んでからの不自然な回復が罠だ


628 名前:名無しの古代人

    Xファクターどころか大本命でしょ

    地面の下は気づかん


629 名前:名無しの古代人

    最後に残ったと思ったらイベントが終わらないのか


630 名前:名無しの古代人

    ダメージゾーン内での生き残り耐久になる予感

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