表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第二章『回復代行結社でござる』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/155

第73話 壺の可能性

「ふぅ……」


 ゲーム内だからと高を括っていたが、スコップでの穴掘りは力仕事に感じられて自然と声が漏れた。多少は筋力のスキルも上昇したか。


「ただいま戻りました!」


 ようやく二つ目の穴を掘ったところでコヨミさんが顔を見せる。


「拙者のほうでも、ふたつの穴を用意できたでござるよ」


「残りは一つですね」


 罠でフィールドに影響を与えられるのは五か所までらしく、六か所目を作ると初めの場所が元に戻ってしまう。スキルの熟練度次第で数が増えたりもしそうで面白いスキルだった。


「五か所目はこちらです!」


 案内されて後ろをついていく。配信区域は人気スポットで周辺の穴掘り活動は難しく、地図で距離を測りながら場所を散らした。どこが最終地点になっても、ある程度は身を隠せるはずだ。


 透明のまま走るが他のプレイヤーとは中々出会わない。好戦的なパーティはすでに移動済みで、生存重視の人たちはジッと待機するのが想像できた。ダメージゾーンは収縮を終えている。実感として全体数が減っていた。


「さあ、仕事でござる」


 あらかじめボムシードによって開けられた穴の前に来て掘り始める。コヨミさんが使うのは微妙に小さなスコップで、試行錯誤の後が見て取れた。ゲーム内に普通のスコップが複数あるのも自由度の高さゆえ。掘りやすさの追求にいくつか持っているようだ。



≪一分後にダメージゾーンが追加されます≫

≪徐々に安全地帯へ向けて収縮が行われますのでお急ぎください≫



「これは……」


「やけに早いでござるな」


 さきほどの収縮からほとんど時間が経っていない。終盤はのんびり待機せずに急げという方針だろうか。


「生存者数の都合はありそうでござるが」


「なるほど。確かにその線は考えられますね」


 エリアが森だけとはいえ、数が少なければプレイヤー同士のすれ違いが多くなる。配信もイベントの一部だ。運営側に立つと退屈な絵を流し続ける意味はなかった。


「それよりです! ダメージゾーンが向かう先をごらんください!」


 地図は真っ赤で全体がダメージゾーンに覆われている。森は予告用に薄い表示だが安全地帯がなく、今回の追加で最後なのが分かった。そして、収縮が行われる中央は目と鼻の先、木々に囲まれた小さな広場だ。


「賭けには勝ったでござる。この穴と透明化を利用すれば……」


 現実味を帯びた生き残りの可能性に緊張が高まるなか、コヨミさんが考えるような仕草を見せた。


「良いアイデアを思いつきました! 穴掘りはお任せします!」


 そう言うなり姿が消える。一体何を、と疑問を覚える前に急いでスコップを動かす。プレイヤーが集まってくるまで猶予はない。早く準備を済ませて待ち構えたかった。


「キュル助、カモフラージュ!」


「キュル!」


 透明の効果時間を最大限に伸ばして必死に掘る。傍からだと土がばら撒かれて穴が広がる異様な光景だ。見つかると挨拶代わりに攻撃される恐れはあるけれど、警戒に気を回すのは時間がもったいなかった。


『地表近くを少し広げていただけるとスムーズに仕上げへ移れるでござる。すぐに壺をお持ちしますので!』




 ◇




【DAO】イベント会場Part9【第二回】


798 名前:名無しの古代人

    もう安全地帯がわずかだな


799 名前:名無しの古代人

    最後はシンプルな森か

    入り組んだ城とか派手な場所を勝手に想像してた


800 名前:名無しの古代人

    実力が試されるエリアだ


801 名前:名無しの古代人

    下剋上は売り切れました


802 名前:名無しの古代人

    ここまで生き残ってる時点で十分だろ


803 名前:名無しの古代人

    配信区域はついに三つ

    これで終わりかと考えたら寂しいもんだ


804 名前:名無しの古代人

    また対人イベントかよと思ってたけど

    結果的には良かったな


805 名前:名無しの古代人

    やっぱ見ごたえがあるのは対人コンテンツってわけ


806 名前:名無しの古代人

    ギルドに興味は持てたし

    イベントとして概ね成功では


807 名前:名無しの古代人

    決戦が近いというのにお前らときたら

    感傷に浸るのは早いぞ


808 名前:名無しの古代人

    まだ配信区域に映りに来るプレイヤーはいるらしい


809 名前:名無しの古代人

    映りたがりは死んでも治らない

    いや死んでないから映ってるんだが


810 名前:名無しの古代人

    ギルドのアピールに効果的なのは明らかだし

    こんな終盤にはしゃげるんだ

    それなりに人気が出るはず


811 名前:名無しの古代人

    いやいや

    強いところは怖いから

    声をかけらんないから


812 名前:名無しの古代人

    弱小ギルドこそ正義


813 名前:名無しの古代人

    捻くれてるのか心臓がつるつるなのか

    バカになってミーハーになれよ


814 名前:名無しの古代人

    難しいこと言うねきみ


815 名前:名無しの古代人

    配信区域にいぶし銀が殴り込んできた

    好戦的だな


816 名前:名無しの古代人

    コロッセオにいた連中は森に飛んできたんか?


817 名前:名無しの古代人

    紅騎士団も別の配信区域に映った

    散らばって転送されたくさい


818 名前:名無しの古代人

    いぶし銀と紅騎士団が抜けて強いか

    泡沫ギルドが散っていく


819 名前:名無しの古代人

    今回のイベントですっかり二大ギルドだ


820 名前:名無しの古代人

    大所帯のギルドは他にもあるのに

    話題になりにくいな


821 名前:名無しの古代人

    ギルドの頭が有名だったり特徴がないと中々ね


822 名前:名無しの古代人

    ダメージゾーンの収縮も終わって全員集合か


823 名前:名無しの古代人

    この森に何人いるんだろう


824 名前:名無しの古代人

    ランキングに入るぐらいで区切ってたり?


825 名前:名無しの古代人

    俺も脱落しなければ……


826 名前:名無しの古代人

    でも生き残るだけが評価対象じゃないでしょ


827 名前:名無しの古代人

    イベント内容的に比重は高そうだが

    逃げてばかりだと厳しい気はする


828 名前:名無しの古代人

    あれ?

    またダメージゾーン追加されてね


829 名前:名無しの古代人

    ほんまやん

    早すぎやろ


830 名前:名無しの古代人

    謎の巻きに入った?


831 名前:名無しの古代人

    紅騎士団といぶし銀の戦いぶりが原因かも

    数が一気に減ったとか


832 名前:名無しの古代人

    配信区域に集まってきてたもんな


833 名前:名無しの古代人

    というか配信画面が変わってる


834 名前:名無しの古代人

    カメラがプレイヤーを追ってるのか

    誰だこれ


835 名前:名無しの古代人

    もしかして全員分のカメラが用意されてたり?


836 名前:名無しの古代人

    こいつ!

    触手頭の!


837 名前:名無しの古代人

    どれだよ


838 名前:名無しの古代人

    妖精おじさんの飼い妖怪だっけ

    参加中ギルドの一覧が新しく追加されてるぞ

    そこから選べた


839 名前:名無しの古代人

    ギルド名は回復代行結社?

    人数はふたりか


840 名前:名無しの古代人

    回復の代行とはまた

    妖精おじの生態と合致するな


841 名前:名無しの古代人

    二人のカメラが同じ景色を映してるけど

    何やってんだ


842 名前:名無しの古代人

    スコップで穴に壺を埋めてる?


843 名前:名無しの古代人

    コロッセオで動いてた壺じゃね?


844 名前:名無しの古代人

    そういや触手頭と壺が同時に消えてた

    どうも一緒に転送されてきたっぽい


845 名前:名無しの古代人

    オブジェクトを利用しすぎだろ


846 名前:名無しの古代人

    その壺を埋めてご乱心だ


847 名前:名無しの古代人

    まさかの妖精おじが壺ごと埋められてる説


848 名前:名無しの古代人

    むしろ壺そのものが妖精おじさん説


849 名前:名無しの古代人

    ネタどころか生き残るための作戦だったら賢い

    誰も地面に埋まってるとは思わん


850 名前:名無しの古代人

    完全に埋まったか?

    周りに生えてる草で掘って埋めた感もゼロ

    こりゃわからん


851 名前:名無しの古代人

    ちょうど収縮の中央近くだし

    予想して場所を決めてたならエスパーレベル


852 名前:名無しの古代人

    今の収縮前に掘ってないと間に合わんよな


853 名前:名無しの古代人

    スコップを事前に用意する周到さよ


854 名前:名無しの古代人

    さすがにカメラも地面の下までは追えなかった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ