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社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第二章『回復代行結社でござる』

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第69話 ツボツボ

『遺跡エリアのほぼ全域が地下へ崩れたでござるな』


 どうやらコヨミさんも無事で安心する。地図で観客席のどこかにいるのが分かった。


『状況的に第二収縮で発動する罠要素かと』


『規模が大きいですね』


 とても回避できるとは思えない広さだ。イベントらしさはあるが脱出の手段が問題だった。


『スキルを使って壁をよじ登るのは無理でござる。途中に手の滑る箇所がありますゆえ』


 見上げると相当な高さで首を振る。たとえクライミングをやるように言われても自分には難しい。


『フィールドの中央に描かれた魔法陣が怪しさ満点です。何かしらギミックが用意されているのでござろう。ただ、気づいたプレイヤーが調べていますが困惑中に見えますね』


『何か起動条件が……?』


『逃げ場のない舞台を考えると戦いに関する目標があるのでしょう。生存数か討伐数を達成し、ダメージゾーンが迫る前に抜け出せとの意図を感じます』


 コロッセオさながらの戦いか。生存数の場合は支援で切り抜けたいが、討伐数の場合はコヨミさんの暗殺術に頼るしかなかった。


『おや、ナカノ殿のお知り合いがいるでござるな』


『知り合いというと……』


『紅騎士団の方々です。白の制服が目立っていました』


 誰かと思ったが、そもそも心当たりのある知り合いは紅さんぐらいだった。


『紅殿だけ赤の刺繍でギルドマスターらしく雰囲気があります。ナカノ殿も着飾るのはいかがです?』


『個人的な希望としては主張の控えめな装備がいいですね』


 プレイヤーの近くを通っても風景に溶け込んでスルーされるのが理想だ。その装いを考えるセンスはないので、地味なNPCがいたら格好を丸まま真似したい。


『現状の認識を全パーティが概ね共有したようです。動き出しますよ』


 瓦礫を足場に周囲を見渡すとパーティごとに固まって警戒が行われている。混乱はすっかり収まり戦闘態勢か。


 透明化を駆使すれば隠れられるけれど支援には格好の機会。魔法のストック作業に何か隠れる場所が欲しかった。となると元より探すつもりだった壺が一番だ。


 問題は綺麗な状態でフィールドに存在するのかどうか。ダメージを受けなかった影響か、かなりの高さを落ちたわりに形を保つ残骸は多い。物によって最低限の破壊保証が設定されているのはあり得る話。粉々になっても負荷がかかるだけで意味は薄かった。


『むむ、紅騎士団の皆さまが囲まれたでござる』


『狙われているんですか?』


『強者を倒すチャンスと踏んだのでしょう。逆に身を守ることにもつながりますし。正面から戦うのは避けたいはずでござる』


 実力を知られて警戒の対象になるとは有名人も大変だ。フィールドの中央辺りでは様子見を除いて五つのパーティが攻撃のタイミングを窺っていた。いくら強くても多勢に無勢だろう。


『できれば紅さんたちを支援したいです』


 あわよくば参加賞を狙うなら手強い競争相手は減った方がいい。しかし、イベント前にわざわざギルドへ誘ってくれたのだ。ここで傍観を決め込むのは心苦しく手助けをしておきたかった。


『了解しました! 拙者も暗躍するでござるよ!』


『自分はひとまず身を隠せる物を探します』


『フィールドに散らばるパーティもいますのでご注意ください!』


 透明化の効果時間を気にしながら遺跡の残骸を見て回る。中央近辺には比較的数が少なく外周に多く落ちていた。コロッセオに元々あっただけで落下物は全て消えていてもおかしくない不自然な配置だ。


 色々と理想の壺がある可能性を考えるが目に入るのは破片ばかり。準備を早く済ませて支援に行きたいが……?


 状態が良く見えた壺も形が残るのは片面で肩を落とす。隠れるには壁へ立てかける手間が必要だ。そこまでしても壁際だと残骸が障害物になってしまう。これから戦いが始まる中央には回復魔法が届かなかった。


 接着剤で破片をつなぎ合わせられたら、と嘆息後に思いつく。壁に頼らなくても地面に寝かせれば同様の結果が得られると。むしろ移動ができる分便利に扱えた。


 割れた側を下に地面へ置いて、うつ伏せに足から潜り込む。入口は窮屈だが中はキュル助を背にのせても余裕があった。


 おでこを壺に押し当てて匍匐前進すれば隠れて動ける。棺桶で諦めた這いずり方式をここで採用することになるとは。残骸から離れると怪しまれるため気を付けよう。


『片面が残る壺が見つかりました。地面に寝そべっての移動により視界が狭くなるので、フォローをもらえると助かります』


『お任せを! 今の状況ですが、紅騎士団がパーティをひとつ壊滅したところでござる』


『それはまた……』


 支援に向かおうと張り切っていたが、余計なお世話だったのかもしれない。




 ◇




【DAO】イベント会場Part8【第二回】


912 名前:名無しの古代人

    俺のイベントが終わってしまった


913 名前:名無しの古代人

    興味本位で配信区域に行ったらボコされた


914 名前:名無しの古代人

    ついつい行っちゃうんだよな


915 名前:名無しの古代人

    接戦で勝ったのに連戦で死んだわ

    メンバーが減るとどうしようもねー


916 名前:名無しの古代人

    今回は漁夫がな

    対策も逃げるぐらいしかない


917 名前:名無しの古代人

    蘇生なんてスキルもアイテムもまだっていう


918 名前:名無しの古代人

    蘇生できる古代の遺物ならあったぞ

    結局使わずに全員やられたけど


919 名前:名無しの古代人

    先に言っといてくれ


920 名前:名無しの古代人

    かなり幅広い効果が用意されてるみたいだ


921 名前:名無しの古代人

    あれって回数制限あり?


922 名前:名無しの古代人

    そりゃそうでしょ

    でもパーティ単位の制限な気はする


923 名前:名無しの古代人

    見つけて保留も作戦

    今後に覚えておこう


924 名前:名無しの古代人

    お?

    またダメージゾーンが追加されたぞ


925 名前:名無しの古代人

    第二陣か

    好戦的な連中はかなり脱落した?


926 名前:名無しの古代人

    生存ポイントにかけるギルドは正念場だな


927 名前:名無しの古代人

    報酬狙いも大変だ

    どうせランキング上位以外はいまいちなんじゃ


928 名前:名無しの古代人

    ギルドの名前は売れる


929 名前:名無しの古代人

    無鉄砲に散っていくギルドのほうが声掛けはしやすいが


930 名前:名無しの古代人

    ランキングだと目に付く数が違うしね


931 名前:名無しの古代人

    うわ

    遺跡っぽいエリアが崩れて大穴になった


932 名前:名無しの古代人

    配信区域?

    どこだろ


933 名前:名無しの古代人

    数が減ってきたからすぐわかる


934 名前:名無しの古代人

    この雪が落ちていく大穴か

    カメラの切り替えで下も見れるな


935 名前:名無しの古代人

    エリアを飲み込む罠とかマジか

    しかもダメージゾーン内って


936 名前:名無しの古代人

    振るい落としにかかってる


937 名前:名無しの古代人

    下は完全にコロッセオだな

    たぶん出入り口はないみたい


938 名前:名無しの古代人

    中央の魔法陣が鍵?

    壁に格子状のでかアーチ扉はあるけど中は暗くてさっぱり


939 名前:名無しの古代人

    紅騎士団いるやん


940 名前:名無しの古代人

    早速囲まれてて草


941 名前:名無しの古代人

    コロッセオだし

    生き残ったギルドだけ脱出を許可します的な?


942 名前:名無しの古代人

    これは数の暴力でやられそう

    空気読み始まった


943 名前:名無しの古代人

    傍観勢もいるがどうなるか


944 名前:名無しの古代人

    囲んでるパーティがひとつ動いた


945 名前:名無しの古代人

    おほー!

    ギルマスの紅が一撃で前衛一人を消し飛ばした!


946 名前:名無しの古代人

    炎の攻撃?

    大剣持ったままだから複合スキルかも


947 名前:名無しの古代人

    さすが大所帯のギルド

    極意書も見つけてるよな


948 名前:名無しの古代人

    攻略サイトより早くて困る


949 名前:名無しの古代人

    先走ったパーティが狙われて全滅した

    他は戸惑って足踏みだ


950 名前:名無しの古代人

    当然参加メンバーの練度も高いか


951 名前:名無しの古代人

    遠くで見てるやつらが動かんと倒せん?


952 名前:名無しの古代人

    強力なスキルほどクールタイムは長い

    行くなら今なんだがはったりも上手いな


953 名前:名無しの古代人

    普通にみんなで突撃すればジャイアントキリングなのに


954 名前:名無しの古代人

    なんか壺動いてね?

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壺おじ(笑)
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