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社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第二章『回復代行結社でござる』

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第67話 棺桶参り

「ジーニアスをよろしくお願いしまーす!」


 外で三人組が騒いでいる。棺桶の蓋が閉まっても心臓の音がうるさかった。


 なんとか切り抜けられたが、自分の上にも炎が存在すると教えられたときは頭が真っ白になった。焦って飛び出さずに済んで結果的には助かったけれど。透明でも炎を伴えば怪しいどころではない。


 コヨミさんと話し合うことで多少は冷静さを取り戻し、ガイコツに賭けたのは正解だった。万が一の時は煙玉で逃げる力技の方針だったので安堵する。


『念のため、一度どこか別の場所に身を隠したほうがよいでござるな。棺桶では炎が貫通しますので』


『分かりました』


 何度も息を殺して確認に来るプレイヤーをやり過ごすのには限界がある。三人組が立ち去った後にゆっくり蓋を開けて外に出た。


『誘導いたします。最も安全そうな崖下へ伸びる井戸を目指すでござる』


『お願いします』


 今の状態で誰かに出会うのは危険すぎる。コヨミさんを頼ってこそこそ移動に専念だ。


 それにしても激しい戦いだった。あの三人組、ジーニアスと名乗っていたか。沼地でも感じたが手慣れていて連携が上手い。最後はつい回復を飛ばしてしまったが、複数のパーティを相手に大金星だろう。


『炎も警戒する分には役立つでござるな』


『目立ってると思うと身が縮みます』


『ご安心ください! 地獄であっても拙者が無事に連れて行きましょう!』


 そこは天国で、と言いかけたがどちらも死ぬ前提の終着点だった。


『おや、これは……』


 冗談への返しを考える前に、コヨミさんの呟くような声が聞こえた。


『ナカノ殿の頭上から炎が消えましたね。周囲を見渡してもきれいさっぱりでござる』


『ということは古代の遺物が効力を失った……?』


 見上げると確かに炎はどこへやらだ。さすがにイベントが終わるまで持続するタイプではなかったらしい。個人的にはとても長い効果時間だった。


『同様の遺物が再び起動するやもしれませんが、いかがいたします?』


『支援をしたいですね』


 怖がっていては何もできない。立てかけて回った棺桶も有効活用したかった。


『では行き先変更でござる。混乱は続いていますので戦闘中のブロックへ向かいましょう』


 方向転換してすぐに金属音が聞こえてくる。


「キュル助、カモフラージュ」


「キュル!」


 途中で姿を晒す失敗を避けるため透明化のスキルをかけ直し、コヨミさんと別れて棺桶へ慎重に歩く。今さら躓くドジはなしだ。


 蓋をずらす前に覚悟を決めて目を細める。ガイコツに準ずる驚き要素はなく空っぽで安心した。身体を滑り込ませて事前準備に開けた隙間から外の様子を窺う。


 二つのパーティ同士で先ほどよりも見守りやすかった。しばらくは棺桶を周って回復魔法を振り撒きたい。




 ◇




【DAO】幸運の妖精おじさんPart5


302 名前:名無しの古代人

    神がイベントにいると聞いたんだが


303 名前:名無しの古代人

    面白おかしく反応してるだけでは


304 名前:名無しの古代人

    物陰から回復するパーティは配信に映ってた


305 名前:名無しの古代人

    姿を晒す時点で偽物だ


306 名前:名無しの古代人

    言うて初期には見かけた報告あったし

    木の陰に隠れて回復してたんだっけ?


307 名前:名無しの古代人

    妖精の由来か


308 名前:名無しの古代人

    おじさんの由来でもある


309 名前:名無しの古代人

    ぶっ飛ばすとか言ってたのにな

    すっかり扱いが変わった


310 名前:名無しの古代人

    不敬者がいたとは嘆かわしい

    打ち首です


311 名前:名無しの古代人

    あれは痛かった


312 名前:名無しの古代人

    ≫311

    成仏してどうぞ


313 名前:名無しの古代人

    妖精おじなら首が飛んでも治してくれるさ


314 名前:名無しの古代人

    我がギルドは神の寵愛を受けて窮地を脱した

    貴様らとは違うのだ

    その後に死んだけど


315 名前:名無しの古代人

    俺もイベント中にどこかから回復を受けた

    その後に死んだけど


316 名前:名無しの古代人

    せっかくの思し召しだぞ

    もっと頑張れよ


317 名前:名無しの古代人

    久々の出現報告で嬉しいが

    ボッチでイベント不参加なのが悔やまれる


318 名前:名無しの古代人

    幸運の妖精おじさんスレのギルドを作るべきだったか


319 名前:名無しの古代人

    スレの狂人たちとゲーム内で絡むの恥ずかしい


320 名前:名無しの古代人

    ≫319

    鏡を見ろ


321 名前:名無しの古代人

    あんまりアピールするのもどうかと

    露骨なのは避けられそう


322 名前:名無しの古代人

    おじ本人はここ見てんのかね


323 名前:名無しの古代人

    希望的観測では見てない


324 名前:名無しの古代人

    そういう空気は感じる


325 名前:名無しの古代人

    無知ちなほうが妖精おじさんっぽいよな


326 名前:名無しの古代人

    まあギルドを作るなら巻き込むなとしか

    名前も控えめに頼む


327 名前:名無しの古代人

    存在が謎だから許されてるけど

    ストーカーな面はある


328 名前:名無しの古代人

    有名プレイヤーの宿命だろ


329 名前:名無しの古代人

    邪な思考は捨てろ

    我々はただ受け入れればいいのだ

    悲しみも喜びも全てな


330 名前:名無しの古代人

    ≫329

    本音は?


331 名前:名無しの古代人

    回復してたもれ

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