第50話 ゲットだぜ
「ふぅ……」
合計十体のボムロックを倒した後に少し嘆息する。まさか火薬が一つもドロップしないとは思わなかった。
爆発の習性を持つモンスターが落とすとアイテムの説明にはあったのに。そもそも、爆発していないので文句を言うのはお門違いなのだが。あの見た目だと裏切られた気分だった。
ちらほらいるプレイヤーたちは熱心にモンスターと戦わず先を行く。寄り道で探索メインの人が多いようだ。
同系統で爆発する個体がいてくれたらと淡い期待を抱きつつ、丁度いい高さの岩に腰かける。つい口にしかけた、よっこいしょの声は我慢できた。
ボムロックが転がる様子をぼんやり眺める。ツルハシなど特別な採取道具を使う可能性はあるが、ヒントもなしに予想しろというのは無理な話だ。
周りを見ていると頭にロウソクを生やす大きなトカゲが走っていた。ターゲット名はロウトカゲ。面白い姿のモンスターだが爆発四散しそうにはなかった。
イッカクガエル同様デフォルメされているものの、まだ爬虫類感が残っている。キュル助の方が可愛げはあると親馬鹿な思考に浸っていたら、ロウトカゲが転がるボムロックに接触した。
――ボオン!
そして、爆発音が響いてロウトカゲが宙を舞い飛んで行く。一方のボムロックは体力を半分にまで減らし、赤い亀裂から炎を噴出していた。
明らかな変化に急いで立ち上がる。走って近寄り戦闘モードに移行だ。
「行け、キュル助! 行け、クロ蔵!」
「キュルー!」
「クカカー!」
どうせ倒す以外に取れる手段はないため、二体に任せてサポートに回る。体力が減っているなら楽に戦えるはずだが……?
なぜか攻撃を受けていない間にもキュル助とクロ蔵の体力がジリジリ減っていく。おそらく理由はボムロックの周囲を渦巻く炎だ。触れるたびに継続ダメージを受けるのだろう。
相殺用に雫石を投げるが、地面を転がって移動するボムロックには効果が薄い。次はタイミングが開くと思い再び投げると、またもや転がり始めて肩を落とす。
「クァー!」
しかし、あらぬ方向へ飛んでいく雫石をクロ蔵がくちばしでキャッチ。そのまま飲み込んでしまって驚いた。
ただの賑やかしアクションにしては邪魔な要素だ。通常状態で宙に浮かべるのがメリットだとすると、近くにきた投擲などのアイテムを口に入れる悪食のようなデメリットが存在するのか?
納得しずらい行動に首を傾げるがクロ蔵の周囲に薄い霧が漂い出し、さらに戸惑う。予期せぬ出来事が続いているけれど戦闘中だ。ペットの画面を見て回復に備えると体力の動きが増えて停滞するのを繰り返すことに気づいた。
ボムロックとの距離が開いたときに体力が回復し、近づくと動かなくなる。炎のダメージが相殺されているのはすぐに分かった。これは雫石と同じ効果だ。
クロ蔵が振りまく薄い霧がまさしくでピンとくる。食べたアイテムの効果を取り込む特性、というより効果が謎だったスキルの影響かもしれない。
二度手間にも思えるが、その場に残って周囲への回復に留まる雫石が移動式になるのは利点だ。キュル助とはまた違った有用性がありそうだった。
持続的な回復も手伝い後半は安心して見ていられる。ボムロックは途中で爆発することもなく体力をゼロにし、地面に倒れた。
≪火薬を入手しました≫
≪クロ蔵のレベルが上昇しました≫
流れたシステムメッセージにようやくといった気持ちで喜ぶ。レベルが上がったのとは別に望みの火薬が手に入ってくれた。
他のモンスターがキーになるのはさすがに考えつかなかった。燃えて火薬が生成されるメカニズムは謎だが良しとする。
やり方を理解して意気込むも、肝心のロウトカゲがどこにも見当たらない。火薬の入手を渋る意図でもあるのかと疑いたくなってきた。
「いや……」
そこで、もしやと頭をよぎる。現象だけに注目するとボムロックは炎に触れて爆発していた。何か発火させる方法さえあればいけるのではないか。
確か持っていたはずだとアイテム欄に目を走らせる。雫の洞窟で現れたフレイムシェルが落とす……小さな炎の核石、これだ。
スライムに飲み込まれて無効化されたのは覚えている。使いどころが訪れたアイテムを手にボムロックを射程に捉えた。
的は大きい。狙いを定めなくとも軽く投げるだけで容易に当てることができた。
――ボオン!
思った通りに爆発音が聞こえてボムロックが炎に包まれた。うろつくロウトカゲはヒントに過ぎなかったのだろう。
戦い方はすでに心得ている。効果時間が切れたのか薄い霧が消えたクロ蔵に、もう一度雫石を食べさせた。
その後は回復のサポートを挟みつつ難なく倒し終え、二つ目の火薬が手に入った。確定ドロップなら集める気力も湧いてくる。
余裕が出てきたので物は試し、今度は雫石に代わって小さな炎の核石をクロ蔵の目の前に投げてみた。
「クカッ!」
やはり別のアイテムも食べてくれる。すぐに身体の周りに赤いオーラが漂い始めて風格が増した。
「行け、クロ蔵」
「クカッー!」
まずはどんな変化があるか確認のため、新たなボムロックに向かわせる。
「クァ!」
すると、クロ蔵は距離を取ったまま口から小さな炎を吐き出した。
――ボオン!
前方にいたボムロックに命中して爆発、炎を散らした。通常攻撃が魔法のようになるのは対応できる状況が増えそうだ。
『レベル』 3
『体 力』43/43
『精神力』78/81
いかにも精神力を使うタイプに見えたのでペットの画面を開くと、微妙に数値が減っていた。この程度なら消費を気にする必要はないか。
「行け、キュル助」
「キュル!」
今日は火薬を集めて久しぶりに調合へ精を出すことにしよう。
◇
【DAO】総合スレPart156
889 名前:名無しの古代人
おい
イベントのお知らせ来てるぞ
890 名前:名無しの古代人
マ?
891 名前:名無しの古代人
ほんまやん
892 名前:名無しの古代人
公式にあるな
宣言してた一回目はともかくペースが速い
893 名前:名無しの古代人
次はプレイヤーが作ったギルドで参加するタイプか
たぶんパーティだとは思ってたが
894 名前:名無しの古代人
ボッチには辛いイベント
895 名前:名無しの古代人
知ってるか?
ボッチでもギルドは作れるんだよ
896 名前:名無しの古代人
そろそろギルドを作ってみろという圧を感じる
897 名前:名無しの古代人
ホームとか使えるから楽しいぞ
むしろボッチのほうが気軽だったりするし
強がりでなく
898 名前:名無しの古代人
ホームで隔離された個人部屋は誰でも持てるんだけどな
マップ続きで転移なしの部屋は数に制限があるのがまた
899 名前:名無しの古代人
増築を考えると人数は多いに越したことはない
目ん玉が飛び出る額を要求されるみたいだし
900 名前:名無しの古代人
重い腰を上げてギルドを作るのはいい
ボッチでもイベントに参加できるのかが問題だ
901 名前:名無しの古代人
参加人数はギルドメンバー最大五人って書いてるな
意外と少ない?
902 名前:名無しの古代人
普通にパーティ単位か
903 名前:名無しの古代人
現状は一人二人のギルドがほとんどなんだよな
一部が有利にはなりそう
904 名前:名無しの古代人
とはいえ人数を抱えるギルドには制限がかかるわけで
少ないとこはイベントを機にメンバーを募集しろって話だ
905 名前:名無しの古代人
それが運営のやり方か
906 名前:名無しの古代人
何か切っ掛けがないと既存のギルドに入るのも勇気がいる
今後のイベントに幅を持たせるなら必要な工程だろ
907 名前:名無しの古代人
でもざっと見た感じまたPVPじゃん
もっと緩いイベントを挟んでもよくね
908 名前:名無しの古代人
話題性があるのは対人でしょ
数あるネトゲに埋もれないために初速は大事
909 名前:名無しの古代人
内容はPVPっぽいがひと捻りあるみたいだぞ
選んだリーダー役がやられたらゲームオーバーだ
910 名前:名無しの古代人
ソロで挑んでも不意打ち上等で勝ち筋があるのか
911 名前:名無しの古代人
一撃必殺のスキルを学んでおかなければ
912 名前:名無しの古代人
リーダー表示は仲間内のみらしい
最大五人の中から正解を引けるのかって話
913 名前:名無しの古代人
どうせボッチだ
キャッキャウフフのギルドに一泡吹かせてやる
914 名前:名無しの古代人
喧嘩腰だな
そこに溶け込む選択肢はないのか
915 名前:名無しの古代人
人間強度の話する?
916 名前:名無しの古代人
時たま人間強度に造詣の深いやつが現れるな
917 名前:名無しの古代人
優しくしてやれ
918 名前:名無しの古代人
なんかイベント中の映像配信が行われるって?
919 名前:名無しの古代人
リアルタイムだと外部から支援が入るだろ
居場所の特定につながる
920 名前:名無しの古代人
地図上に配信区域は表示されるって注釈はあるが
921 名前:名無しの古代人
意味あんのそれ?
映るのを避けて終わりだ
922 名前:名無しの古代人
目立ちたがりはどこにでもいるし
923 名前:名無しの古代人
考えようによってはギルドの宣伝にならん?
メンバー勧誘もできますみたいなイベントかも
924 名前:名無しの古代人
無理に参加せず楽しそうなギルドを探すのはありか
925 名前:名無しの古代人
対人戦を見て判断するのは難しいな
926 名前:名無しの古代人
弱小ギルドはいち早く配信区域に乗り込め
後はキャッキャウフフで視聴者にアピールだ
927 名前:名無しの古代人
ボッチでアピールしても興味を持ってくれますか?
928 名前:名無しの古代人
実況は任せろ
929 名前:名無しの古代人
笑い者になるだけでは




