表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。  作者: 七渕ハチ
第三章前半『おじメダル配布作戦』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/155

第100話 結果発表

 今日は少し遅い起床で朝食を簡単にヨーグルトで済ませ、家のあれこれを終えると昼前になった。買い物や外食へ行くのもな、と冷蔵庫の中身で勝負する。出前の選択肢はすっかり消えてしまった。


 学生のころに飲食店で働いていた経験から、料理の最中にふと懐かしさを覚える瞬間がある。とはいえ、凝ったものを作る技術はない。適当オムレツにミネストローネ風スープと、店で提供するにはふんわりしたメニューに、パンとおひたしで決まりだ。


 もちろん、カップラーメンなどもいいが手作りは過程で満足感を得られる。忙しく暮らしていたときには思い浮かぶどころか、ため息が漏れる発想だった。精神的に余裕が生まれた証拠か。


 出来上がった料理を味わいつつ、いつものように考えるのはDAOについて。イベント自体は終わったが地図のエリア当てに答えてくれたプレイヤーに対し、銀のメダルはまだ贈っていない。


 明日までには行う予定で元々の用意分に加え、ぎりぎりまで素材集めをしたかった。遅らせれば配布できる人数は増えるけれど、イベントの余韻が残るうちにやっておきたい。


 昼食後の片付けは手早く休憩を最低限にゲームの世界へログイン。まずはホームの整理整頓だ。看板を撤去して蔵の地図を仕舞い、タルと棺桶、壺を置く。さらに今回の収穫、花火のスクリーンショットを額縁に収めて目立つところへ飾った。


 部屋の方が相応しい気はするが、現状だと散らかる原因になりかねない。蔵にも足を運びたくなるようコレクション場所にしてもよかった。


 浸るのは後回しにクエストで訪れた橋梁の砦、その先にあるエリアへポータルで飛ぶ。岩壁に挟まれる乾いた荒地は広く、大小様々な岩が転がっている。


 うろつくモンスターの名前はイワクイで、姿形は実在のアリクイに似ており身体をウロコが覆う。名は体を表し岩を噛み砕きながら食べていた。


 口はワニを彷彿とさせる開き具合に鋭い歯が見えて、恐怖心を煽る。しかし、こちらから攻撃しなければ襲われないので安全だ。


「ひー!」


 注意すべきは岩壁の各所へ開いた穴に潜むモンスター、スライムロックだった。通常のスライムが岩を身体に張り付けて擬態するため気づきにくく、ツルハシを持ったプレイヤーが逃げてくる。


 意外と移動が速く攻撃が通りにくいなど、まともに戦うと苦労した。特にここは鉱石を掘れるポイントで生産をメインにする人が多い。みんな逃げの一手でしのいでいた。


 ただ、相手もしつこく振り切るのは至難の業。そこで頼りになるのがイワクイだ。近くにスライムロックを連れて行くと岩と間違えてか食べてくれた。


 モンスター同士が争う様子は新鮮に映る。鉱石集めの際に利用する仕組みなのは明らかだった。


 回復魔法の出番はなく、自分もツルハシを担いで岩壁の穴へ入る。一つ一つは浅い構造で迷わずに没頭できた。


 スライムロックには注意しながら鉱石が枯れたら次の穴に向かう。贈り物の場合は素材を買って、作ったアイテムを売る繰り返しで回せない分、時間がかかった。


「あいつが現れるから協力頼む!」


 採取数のゴールを何個に決めるか考えていると、あるプレイヤーが入口で声を上げる。イベント前に来たときも度々見た光景だ。外に出ると別の穴にも声掛けをしていた。


 少しすると遠くで砂嵐が舞って、中から巨大なイワクイが姿を現す。どうもメインと異なるサブクエストに関連したモンスターらしい。エリア内の古い井戸近くに、オオイワクイに主人を殺されたと話す女性が時折訪れるとか。


 討伐に参加すれば報酬で鉱石をもらえた。自分も手伝うべく穴に入り直す。正々堂々の戦闘とは異なる手法で対応を急ごう。


 地面や壁に天井をくまなく探し、目的のスライムロックを見つけた。拾った石ころを投げつけてターゲットされた後は、必死にオオイワクイの元へ走る。


 通常サイズのイワクイ同様、プレイヤーに興味は示さずスライムロックを食べてくれるのだ。その大きさゆえ巻き込まれには注意だった。


 他の人たちと力を合わせ次々に餌を献上すると、次第にオオイワクイの動きが遅くなる。ついには地面へ倒れて身体を丸めた。


「よし、寝たぞ!」


 お腹が膨れて寝るという分かりやすい行動で、この隙を見逃さず攻撃に打って出る。体表のウロコはツルハシでもダメージを稼げるため、一斉に振り下ろす。


「今がチャンス!」


「掘れ掘れ!」


 巨大なモンスターに寄ってたかって、わらわらと一心不乱に仕掛ける。一方のオオイワクイは、かほどの攻撃にしか思っていないのか眠り続けるが、物量は正義で体力ゲージがそのままゼロになった。


「ナイス!」


「お疲れさま!」


 普通に掘るよりも多くの鉱石が手に入る。ボーナス的な要素は大助かり。この調子で集めてメダルの大量生産だ。




 ◇




【DAO】総合スレPart190


727 名前:名無しの古代人

    イベントロスが始まった


728 名前:名無しの古代人

    言うて空白期間は短いほう定期


729 名前:名無しの古代人

    平常時でもやれることは多い定期


730 名前:名無しの古代人

    遊びつくした人はいない定期


731 名前:名無しの古代人

    まだ次回イベントの続報はなし?


732 名前:名無しの古代人

    そろそろ休憩に入るのか

    スタートダッシュが続くのか


733 名前:名無しの古代人

    合間にホーム訪問イベを挟んでどうぞ

    運営の手間もいらんだろ


734 名前:名無しの古代人

    ホームの拡張性は高いし

    個人開催のイベントには夢がある


735 名前:名無しの古代人

    でも参加する勇気がない


736 名前:名無しの古代人

    気持ちはわかる


737 名前:名無しの古代人

    意外と緊張するよな

    参加すれば仲良くなれるんだけど


738 名前:名無しの古代人

    ギルドに誘われたりね


739 名前:名無しの古代人

    どこの陽キャだ

    お前らだけは仲間だと思ってたのに


740 名前:名無しの古代人

    こんなゲームをやってるんだ

    みんな陰キャの気はある


741 名前:名無しの古代人

    勘違いも大事

    積極的にいけ


742 名前:名無しの古代人

    いきすぎると痛いやつになる

    気をつけろよ


743 名前:名無しの古代人

    おおおおおい!

    回復代行結社から銀のメダル届いた!


744 名前:名無しの古代人

    は?

    きてないんだが


745 名前:名無しの古代人

    ずるいぞ


746 名前:名無しの古代人

    地図当てのやつか

    俺も届いた


747 名前:名無しの古代人

    結果発表!

    おれ落選!


748 名前:名無しの古代人

    当選した

    結構配ってる説?


749 名前:名無しの古代人

    普通に外れた

    あんだけ訪れてたらね


750 名前:名無しの古代人

    妖精おじ専用スレの浮き沈みよ


751 名前:名無しの古代人

    あそこ宗教じみてきた感


752 名前:名無しの古代人

    どうせネタ

    と言えない怖さ


753 名前:名無しの古代人

    おじは人を変える


754 名前:名無しの古代人

    そんなやつらでもな

    ゲーム内では行儀がよかったり


755 名前:名無しの古代人

    妖精おじさんのホームも平和だったし


756 名前:名無しの古代人

    神に迷惑はかけられん

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 主人がオオアリクイに◯されてから1年が経ちました のスパムがこんな所で活躍してる……(腹筋ピクピク)
100話到達おめでとうございます!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ