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聖火  作者: 青山喜太


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第七十一話 生贄の魔法

 ジャンの体から出血が止まるのを見てネクス達は確信する。

 間違いなくこの男はとてつもない傷の修復能力を有している。


 この男は生半可な攻撃では死なない。無力化することも難しいとなればどう対応すべきなのか。


 ネクス達3人が様子を伺っていたその時だった。


「なあ、そこの確か……なんだっけ? 名前?」


 ジャンが唐突に尋ねる。

 目線から判断してネクスに対して話しかけているらしい。


 ネクスは訝しみながらも、時間稼ぎのつもりであえて会話に乗ってやることにした、


「ネクス、ネクス・オウス・クロエロード」


「そうかネクスね……でネクス、なんで頬の傷は治さないんだ? それぐらい待ってやるよ、ほら治せ」


 頬の傷、おそらく先ほどジャンの貫手によって作られたかすり傷のことを指しているのだろう。


 だが、ネクスは回復魔法や回復の奇跡の再現など出来はしない。

 そもそもネクスは騎士を目指す学生だ。


 そんな専門的なことは習っていなかった。


「おや? できないのかなぁ?」


 わざとらしくそして嫌味のように疑問符を浮かべたジャン。

 まるでネクスならば傷など治せると知っているかのようだ。


「どういうこと?」


 ネクスの問いにジャンは半笑いで答える。


「魔王っていうのはな? とんでもない再生能力を有してるだのよ。もちろん生まれ変わりの俺たちも同じだ……魔法使いから教わってないのか?」


 心当たりがない、自分自身にそんな力などあるはずがない。

 少なくともネクスは身に覚えがなかった、現にネクスの傷は今も癒えていない。


「なるほどな、でもそういうことか? ネクスちゃん、君ぃ、魔王の力、封じられてるねぇ?」


 正解だ、ネクスは顔には出すまいと意識していたが若干の驚きが胸の中で弾けるように生じた。


 確かに魔王の力はドンキホーテによって封じられ、今まで活性化していてない。

 だがそれを知っているのは、ネクスの仲間以外にはいないはずだ。


 すでに知られていたのか? いやだとしたらジャンの発言は矛盾している。

 彼はまるでネクスの封印の件を今さっき知ったかなような物言いをしていた。


 だがどちらにせよそれは今考えるべきではない、ネクスはサーベルを再び正眼に構える。


「やる気か? ネクス」


「当たり前でしょさっさとアンタを倒してアーシェさんとここから逃げる」


 ジャンは笑った。


「倒せると思ってんのかよ! ガキが!」


 再び、ジャンが大地を蹴り加速する。

 目標はネクスだ。

 ネクスに向かって、再び、貫手を放とうと構える、しかし──。


 ──フォン……。


 また風切り音だ、ジャンの耳は聞き逃さなかった、その風切り音と共に、再びジャンは貫手を放つ前、大地を蹴り上げ加速する前の地点に逆戻りしている。


「チッ! なんなんだよ! これ!」


 ジャンは悪態をつくそして、地点に戻されたことによる、一瞬の戸惑いが勝負を決定づけた。


(ッ!! ネクスがいない!?)


 視点を急激に戻された混乱していた隙にネクス本人を見失ったのだ。

 困惑と焦り、それと同時にジャンが感じたのは殺気だった。


 右からくる圧倒的な圧、それに気づいた時にはもう遅かった。


「はああ!!」


 ネクスは叫び共に、袈裟斬りを放つ。

 それは容易にジャンの胸から脇腹までを切り裂いた。


 しかしこのままでは終わらない、ネクスはそのままサーベルを翻しジャンの腹を横一文字に切り裂く。


「がッ!」


 言葉にならない叫びがジャンの口から吐き出されさらにジャンの体勢が完全に崩れ去った。


 その瞬間をネクスは決して見逃さない。

 ネクスのサーベルに光が宿る。

 それは闘気の光、彼女が今できる渾身の一撃をネクスは放とうとしていた。


「まて──!」


 ジャンの懇願を切り裂くように、ネクスはその光るサーベルを切り上げた。


三日月の断頭台クレセントムーン・ギロチン!!」


「ッ……がああ!!」


 三日月の光がジャンの左半身を抉り、天へと昇る。

 闘気の光線は空中で霧散していった。


 左半身を失ったジャンの体はばたりと地面に倒れ伏しもはや動かない。

 生半可な傷がすぐさま再生するのならば、過剰な損傷を与えるしかない、それがネクスの思い至った答えだ。


「はあ……はあ」


 ここまで致命的なダメージを与えれば、さしもの再生能力といえどすぐには立ち上がれないだろう。


「リリベル! ミケッシュ! 速く逃げるわよ!」


 そうと決まればやることは決まっている。ネクスは急いでリリベルに声をかけた。


「わかった!」


 リリベルはすぐさま頷く。


「アーシェさんも、連れてきた!」


 すると、いつのまにかミケッシュがアーシェを肩に担ぎ合流している。

 あの一瞬とはいえ、敵の気がそれている瞬間にアーシェを運んだらしい。


「ミケッシュ、ナイス! じゃあさっさと──!」


 逃げよう、そう言おうとした時だった。


「やっぱ……か? ミケッシュとかいうガキがそのシスターを助けてたのならヨォ……やっぱり、リリベルくんが犯人じゃねえか」


 ネクスの背後から声が聞こえた、掠れてもはや人間とは思えないようなその声に思わず、ネクスは振り返りサーベルを構えた。


 ジャンだ、血が滴り、体の半分が赤い光で埋め尽くされている、どうやら再生途中らしい。


「くっ、再生はやすぎでしょ……リリベル、ミケッシュ! 速く逃げて!」


 そう言いながらネクスは、ジャンと目線を外さないようにしながらも後退していく。


 何を仕掛けてくるかわからない、だが、仕掛けてきた瞬間、こちらもカウンターを叩き込み確実に再起不能にするだけだ。


 ネクスはそう考え、その瞬間を見極めようとしていた。


「もう、容赦はしねぇぜ」


 結果的にいえば、その考えは甘かったと言わざるを得ない。


「ケヒッ!!」


 ジャンが下卑た笑みを浮かべ、彼の体が光り出した。

 アビリティか、魔法かネクスの予想がつく前にジャンは叫ぶ。


「レッド! マジック!!」


 その叫び共に、地面から複数の赤黒い円錐が隆起した。

 ジャンを中心として放射状に生えていくその赤黒い槍たちは、地面を民家を貫き、そして──。


 ──ネクス達は3人を一瞬で貫いた。

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