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聖火  作者: 青山喜太


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第五十九話 努力の成果

 降り注ぐ光が朝を告げている、混沌の神が用意した小屋から別れを告げ、ネクス一行は街道を歩いていた。


「ソール国からだいぶ離れたな」


 地図を見ながらドンキホーテはぼやいた。

 それもそのはずだ、混沌の神であり、その化身の一体ケイ・ファンから受け取った地図が正しければ、ここはソール国の遥か北、コールランド国だ。


 随分と飛ばしてくれた物だ、と嫌味の1つでもあの魔法使い達にドンキホーテは言いたくなった。


 だが、


「ミケッシュ、リリベル! 置いていくわよ!」


「ネクス! まってよぉ!」


 走るネクスに、息を切らすリリベル、ニヤけながら静観するミケッシュ。


 この3人が無事なのは不幸中の幸いか。

 何よりも、十分な休息をあの小屋で取れたことが大きい。


 だがこれから先に待ち受けるのは、恐らく想像し難いほどの苦難。


 ドンキホーテは別れ際のケイの言葉を思い出していた。


 ─────────────


「さあ、地図は持った? ハンカチは? 知らない人についていっちゃダメだよ」


「ウルセェ」


「ひどい……!! 僕は心配なのに……」


 ドンキホーテの言葉に、肩を落とし眉を八の字にするケイ。

 人間らしく振る舞う、混沌の神を少しばかり気の毒に思ったのかリリベルがペコリと頭を下げる。


「あ、あのありがとうございました……」


「ああ、リリベル君はなんて良い子なのぉ! 本当にいい子、誰かにも見習ってほしいねぇ」


 ため息をつくドンキホーテは、頭をかきながらぼやいた。


「はぁ、うちの生徒を救ってくれたことは感謝している」


「どういたしまして」


「だが、対価がタダとは腑に落ちない……全ての破滅を願う混沌の神のくせに」


「そんなに、不思議かい?」


「ああ」


 するとケイは笑った。


「なら、心配はいらない、先行投資だよ。君たちはこれから魔王候補と戦うことになる、きっと君たちならそいつらを倒してくれるに違いない。それに比べたらこんな支援、十分黒字だよ」


 でも、とケイはドンキホーテの耳元に迫る。


「気をつけたほうがいい、あの魔法使い達は、神の化身である僕すら欺き続けてきた……あの魔法使い達に狙われる以上安全な場所などない」


 そう言って、ケイはドンキホーテから離れる。小屋を背にしていつも通りのおどけた表情で手を振った。


「それじゃあ、またね。この先、街道があるからそこさらに北、そこに街があるはずだ。まずはそこで仲間がいるから探すといい」


「仲間?」


「転移されるあの一瞬、僕も努力したということさ」



 ─────────────


 それ以上、混沌は喋らなかった。代わりにひらひらと手を振りネクス達を見送ったのだ。


「あのちゃらんぽらんマジで本当のこと言ってんだろうな……」


 そう、疑るドンキホーテの耳に突如、ネクスの声が反響する。


「先生、あれ!」


 ネクスは指を指している。

 だが、ネクスの指先の景色を見るには丘の盛り上がりがドンキホーテには邪魔だった。


 急いで、ドンキホーテもネクスの隣に駆け上がると、ネクスの指さす見せたいものがわかった。


「街じゃん……」


 本当にあった。ホワイトコール。地図によると、街はそう呼ばれているらしい。


「混沌の神もたまには役に立つか……」


 ─────────────


「やっと一息つける!!」


 ミケッシュは目を輝かせながら、ホワイトコールに続く橋を渡っていく。

 ホワイトコールの周りは城壁と溜池が作られており唯一の入る手段が、この橋というわけだ。


 この橋はいわば、外と中とを区切る境、そしてドンキホーテやネクス達に至っては本当の意味で、厄介ごとから切り離されるまさしく境界線のようにも感じた。


「ミケッシュ、先生や、ネクス達を置いていくなよ」


 茶化すようにだが戒めるように言うドンキホーテ、しかし彼自身も肩の力が抜けていくのを感じていた。


(ほんの少しだが、本当にひとまずだが、安心といったところかな)


 だが、やることは山積みだ、まずはソール国にいくための路銀に、着替えや食料、何より足を用意しなくてはならない。


「ミケッシュ、待ちなさいよ! 私が一番に街に入りたい!」


「お、競争する?! アタシ負けないよ!」


「あ、ちょっと二人とも、先生と僕を置いていかないで」


 気の緩み始めた、3人を微笑みながら見つめつつドンキホーテの頭は高速で回転し始めていた。


 魔女帽のツバを深く被り、考える。


(まずは、路銀の入手だな、一番手取り早いのは手持ちの道具を売ったりすることだが……)


 なにぶんここはソール国から遠く離れた土地、ソール国の常識どころか貨幣すら通用しないだろう。


「ひとまず、言葉が通じるかどうか……」


「……おい」


 ドンキホーテの背筋に悪寒が走る。

 誰かが、ドンキホーテを呼び止めた。


 誰だ。

 思い当たる節などない、こんな異国に知り合いはいない。


 敵か?

 ここは、街の出入り口、通行人が多い。

 幸い、ネクス達は離れている。

 ホワイトコールの住人が周りにいるが、最悪、生徒達を巻き込むことはない。


 そこまでドンキホーテの頭が計画を発表した後、違和感に気がつく。


 この声どこかで聞いたことがある。そうだ、この声の主は──


「レヴァンス先生?」


 ドンキホーテが振り返るとそこにいたのは美しい長髪の持ち主の見知った騎士だった。


「なぜ貴様がここにいる」


 レヴァンスの姿を見て、ドンキホーテは思い知った。


 あの混沌の神の化身の努力の成果を。

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