第四十七話 代償
「ごああ!」
コメディアンは地面に叩きつきられ、苦痛と空気を口から吐き出した。
リリベルが繰りだした渾身の一撃は驚きによって防御ができなかったコメディアンを行動不能にさせるには充分だった。
「まじかよ……痛すぎるて……」
呻き、呟くコメディアン
コメディアンは確かに格上だった、しかしコメディアン自身の過信とそしてリリベルのアビリティ、ミケッシュの竜、ジェミールの謎の力、度重なる奇跡と未知の能力によってついにリリベルたちは勝利を勝ち取ったのだ。
リリベルとミケッシュはその事を実感し安堵の表情を浮かべる。
だが、まだ事態は収束してはいない。
倒れ伏したコメディアンの向こう、大地に鎮座した輝く光球は今だ健在だ。
中には、まだネクスとそしてフランシスとかいう男がいる。
「ネクス……今……助けに……」
リリベルが光球に近づこうとするが、彼の歩みの前にミケッシュが立ち塞がる。
「ミケッシュ……どいて……」
「どかない!」
ミケッシュの口調からは強い意思が感じとれ、思わず、否定されたリリベルは二の足を踏んだ。
「もうだめだよ、これ以上はリリベルを行かせられない! そんな青い顔してるのに!」
ミケッシュの言い分はもっともだ、リリベルは今、人生で感じたことのないような重くそして纏わりつく疲労感を感じている。
その疲労感から本能的にリリベルは理解出来た。
これ以上動けば命に関わると。
おそらくミケッシュもその事をリリベルの様子から感じ取ったのだろう。
他者から見ても分かるほどの消耗。そんななりで果たしてフランシスを倒しネクスを連れ戻せるのだろうか。
否だ。誰が考えても。
しかしリリベルは諦めてはいない。
リリベルはチラリとミケッシュの竜ジェミールを見つめた。
彼か彼女か分からぬがその竜も心配するかのように、リリベルの周りを浮遊している。
「ミケッシュ……!」
もうこれに賭けるしかない。
リリベルはミケッシュに頼み込んだ。
「ジェミールの力をもう一度僕に! 体力をまた復活させてくれれば……!」
「ダメだよ!」
ミケッシュは声を荒げた。
「どんな力にも反動や代償はある! ジェミールの力だってそう! 私にもどんなデメリットがあるかまだ──」
ポタリと血が落ちる。
「初めてだった……」
「え……」
リリベルは鼻から鮮血を垂らしながら、ただ述べる──。
「父上のせいで友達なんていなかった僕に……友達ができたのも……役立たずの僕が……居ても良いと肯定された……」
「リリベ──」
ミケッシュの言葉を押しのけ、ただ事実を述べる。
「僕は……生まれて、初めて……生きていると感じたんだ……でもここでネクスを見捨てたら僕は──」
リリベルの瞳にはもはやミケッシュも、これから起こるであろう最悪の運命も映っていない。
「僕は無価値だ! 僕が僕でいられるように……僕は……いく! だから……そこを……退け! ミケッシュ!!」
焦りと苛立ちがグチャグチャに混ぜ込んだような、リリベルの怒号。
それに恐怖しミケッシュは肩を震わせた。
だが、ミケッシュは退かない。
若干目元を濡らしながら、ミケッシュはリリベルを睨みつける。
「それでもアタシはアナタを行かせない!」
ミケッシュはリリベルに詰め寄る。
「アナタはここに残って、先生を待って。私がネクスを助けに行く!」
「だめだ……自殺行為だ……!」
ミケッシュの提案にリリベルは再び声を荒げた。
だが、その瞬間リリベルの足から力が抜ける。
「クッ……」
「リリベル!」
思わず、リリベルに寄り添ったミケッシュは心配そうに右手で背中をさする。
「こんなんじゃ戦えない……私に任せてリリベルは休んで」
「だめだ……君だけじゃ……僕も……!」
「大丈夫! ネクスを連れて戻るから! ネクスを見つけたらすぐに逃げて──」
「逃すつもりはないと言ったはずだが?」
その時、声が聞こえたコメディアンでもリリベルでもましてやミケッシュでもない、もう一人の声。
ミケッシュは恐る恐る後ろを見る。
大地に鎮座していた、光球が弾け飛んでいる。
長い黒髪が宙になびきそして、黒髪の持ち主が笑みを浮かべながらミケッシュとリリベルの2人を見つめていた。
「コメディアン。随分と手ひどくやられたな」
黒髪の魔法使いフランシスが光球から姿を表したのだ。
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