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聖火  作者: 青山喜太


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第四十四話 魔王の生まれ変わり少女と運命を棄却する少女と、輪廻の龍に好かれた少女⑦

「どゆことぉ?」


 吹き飛ばされたコメディアンは不可思議そうに、リリベルを見つめる。

 腹は刺したはずだ、最初はミケッシュとかいう少女を殺すつもりで放った攻撃だったが、手違いとはいえ致命傷には違いないはず。


 だというのに目の前の少年は健在だ。

 それに圧倒的に不自然な箇所が目の前のリリベルにはあった。


「あーリリベルくん? 君、いつ服をクリーニングにだしたんだ」


 コメディアンは腹を刺した感触を思い出す、手応えはあった。

 未だ慣れない不愉快な肉を貫くあの感触は確かにあった筈なのだ。


 だと言うのにリリベルには怪我も血の跡もない、そしてさらに不可思議なのが服すら貫かれた形跡がないのだ。


「いい服屋に依頼を出したなぁ、洗濯だけじゃなく、破れた服も直してくれたなんてさぁ」


 その言葉にリリベルは訝しげな顔をした後、目線を一瞬だけ服に落とす。すると、若干の驚きを顔に滲ませた。


 彼自身、服まで戻った事に気が付いていなかったのだ。


(へぇ……その様子じゃあその特殊能力(アビリティ)を使ったのは片手で数えるくらい……もしかしてさっき覚醒した可能性もあるか?)


 コメディアンの予想は当たっていた。

 リリベルは今の自身に起きたことを100パーセント理解できているわけではなかった。


(まずい……! しかけてくる!?)


 リリベルは焦る。リリベル自身、目覚めたこのアビリティの全容がよくわかっていない。

 唯一のアドバンテージである、未知のアビリティを持っているという事実、そのアビリティを使いこなせていないとわかればコメディアンがとる行動は1つだ。


 コメディアンは大地を蹴った。


(あのリリベル君の力は果たしてどっちだ? 回復? いやだとしたら何故服まで戻る? そもそも回復じゃない? 考えられるのは三つだ。

 ①回復の指定範囲が不慣れゆえ服にまで拡大してしまった。厳密には回復ではなく生物や物の修復。

 ②もとから刺されたのは能力によって複製された分身。

 ③その2つ以外の俺の頭じゃ思いつかないやつ!)


 1番可能性が高いのは①だとコメディアンは踏んでいた。

 というか修復ならば1番それらしく、納得のしやすい、説明もつく。

 分身の可能性は刺した内臓の感触から本物だと見分けはついている。


 コメディアンが一番怖かったのは③だったが、これはもうどうしようもない、アビリティの持つ戦士と戦うならばどうしても出てくる弊害だ。


 しかしこれに関しても、なおさらリリベルがアビリティに不慣れそうな今を狙わなければどうしようもなかった。


「つーわけでごめん! 死んでくれぇ!」


 コメディアンの加速はついに音の壁をこえる。退いて離れてしまった彼我の距離を一瞬で取り戻す。


 そして、コメディアンは流れるような自然な動きで右手を引き、突きの姿勢をとった。

 音を超えた突きの一閃、並大抵の戦士が避けられるものではない。


 狙いは完璧で、狂いなどなくただ相手を殺すためだけに放つ必殺の一撃を今、コメディアンは放つ。


 空気の壁を叩く音が聞こえ、短剣の突きは放たれた。その一撃をリリベルは咄嗟に形見の短剣を振るう。


 しかし、リリベルの剣はコメディアンの剣を受け止めることはなかったあまりの速さに迎撃することができなかったのだ。


 当たるという確信と勝利の罪悪感をコメディアンは感じる。

 だが──。


「は?」


 いつまで経っても、肉を貫く感覚をコメディアンは感じない。

 それどころか、コメディアンはもとの駆け出す前の位置に戻っていた。


「おいおい、何だこりゃ──」


 辺りを見回す、コメディアンに影が迫る。


「だあああ!!」


 コメディアンの顔面が歪んだ。

 リリベルが彼の顔面に蹴りを入れたのだ。


 困惑している間に、リリベルの接近に気づかなかったコメディアンは完全に不意をつかれた形になり、体勢を大きく崩す。


(ヤベッ!)


 頭でそう思うも、リリベルの追撃は止まらない。


「うあああああ!!」


 リリベルの叫びと共に彼の左の拳がコメディアンの腹に──。


「がはぁ!!」


 ──続いて蹴りが膝に入りさらにコメディアンは地に膝をつく。

 さっきから、殴打や蹴りに闘気が纏っている。大した威力ではない、熟練と言い難いがしかし……。


「ふっ……!!」


 リリベルの左ストレートがさらにコメディアンの顔面に直撃する。


(まずいなぁ……!)


 ダメージが蓄積すれば、冗談ではない。すでに一回、()()()()()()()()()()()()


 これ以上、深手を追いたくは無かった。


「なっ!」


 リリベルは驚く。

 やることは一つ、コメディアンは襲いかかる、リリベルの右足の蹴りを足首を掴むことによって止めた。

 そして空いた右手で、コメディアンはナイフを持ち直し、再び刺突を繰り出した。


 その攻撃に対してリリベルは形見の短剣を再びふるった。

 しかし先ほどと同じだ。

 空振り、迎撃には至らないそれどころか、コメディアンの短剣が届くはるか手前でリリベルの剣は振るわれている。


 当然、コメディアンの短剣はリリベルに向かって行く。

 真っ直ぐと何の障害もなく確実に死ぬように、心臓に突き立てる……つもりだった。


「……おいおい」


 その瞬間認識した、コメディアンは理解した。振り上げた手が、腕が()()()()()()()()()()()()。この能力の正体は──。


「リリベル君、君、やば──」


 コメディアンの批評を聞く前に、リリベルは飛び上がり、体をひねり一回転、拘束から抜け出すとともにそのままリリベルは右足に力を再びこめる。


「はぁっ!!」


 渾身の回し蹴りをリリベルはコメディアンに喰らわせる。


「ごはぁ!!」


 コメディアンの体は宙に舞いそして、木の幹に直撃した。だが、コメディアンは笑いながら口元の血を拭いつつリリベルを睨む。


「いやはや参ったよ……」


 この、リリベルの能力にようやくコメディアンは見当がついた。


「リリベルくん。キミ、物事の因果をいや……結果を棄却したな?」

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