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聖火  作者: 青山喜太


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第三十六話 敵襲

「くぅ、そぉぉ! なぜ……ッ!」


 起きあがろうとするカレイス、しかし体が持ち上がらない。

 何だ、何をされた。カレイスは思考を巡らす。


 毒か、いや違う毒を盛られた記憶はない。

 だが、この症状はいったい何なののか、意識が朦朧とする。考えが纏まらない。


 考えても考えても答えは出なかった。しかし、そんな絶体絶命の状況により感覚が研ぎ澄まされたのかカレイスは足に違和感があることに気がつく。


 針だ、鋭い針が刺さっている。太ももの辺りに刺さったその針にカレイスは見覚えがあった。間違いない暗殺者などが好む暗器だ。


 毒を針の先端に塗るこの暗器は、暗殺者やならずもの達が好んだ武器だったしかし、いったいいつ誰がこの針を刺したのか、疑問が解けぬままカレイスの思考は鈍っていく。


「無理はしない方がいい、騎士殿、常人なら死ぬ毒の量だ」


 するとカレイスの霞む視界の中にいる長髪の男が喋る。

 わざわざ、カレイスの目線に近づけるように跪くその長髪の男はカレイスの顔についた泥を拭ってやった。


「しかし……おいコメディアン……コメディアン!!」


 男は呼ぶ、仲間かカレイスは薄そうになる意識を繋ぎ止め必死に辺りを探る。

 そうだ生徒はどうなった。少年は……カレイスは耳を傾ける、幸い地面は耳についた形になっている。


 大地を伝いかすかだが吐息が聞こえた。間違いない消え入りそうだが生徒のものだろう。


(よかった……応急処置が効いたか……! 後はこいつを……!!)


 その時だ、ザリ……と土を踏む音が聞こえた。この男に続いて全く知らない者の足音。


「なに旦那ぁ?」


 なんだ、誰の声だ。目の前の男でないことは確かだが、だからと言って新しい侵入者だとはカレイスは考えられなかった。


 侵入してきたのはこの黒のローブの男一人だけのはずだ。

 では今喋った男は既に()()()()()()|ということになる。


 バカな、結界を張るときに調べた筈だ、ここに部外者はいない。魔法による探知、アビリティによる探知、極めつけは今回の試験の結界の機能の一つである生物の位置と数の特定。


 それら全てのセキュリティを破り、侵入者が試験会場にいるはずなどない。特に教員が魔王軍指揮官を名乗る人物に狙われてからという者、その対策のために最善と最高を尽くしてきた。


 故にカレイスは信じられない、既に侵入されていたという事実を。


「この騎士から色々情報を聞きたいのだが、このままでは精神操作の魔法が使えん、毒の使い過ぎはよせと言ったろう」


「しょうがないじゃん! 戦争の生き残りだぜ? この先生だってさ。万が一のために多めに盛っといたんだよ」


 しかしどうやら信じるしかないようだ、カレイスは考えるおそらく怪我のした生徒をここまで、誘導するなり運んできたのはこの、コメディアンと呼ばれる男のはず。

 全ては仕組まれていた、危険だ生徒達が。


 ならば、今やることは何か。戦争に散っていった同胞をカレイスは思い出しす。


(早めに……会いにいくぞ貴様ら……!!)


 青空に火花が散った。


「あれ、旦那ぁ? ロケットパンチの練習?」


 そんな男の気の抜けた声がする。


「コメディアン、ロケットパンチが何かは知らんが、少なくとも予想外の事態が起こったな」


 ガシャンと、黒いローブの男の腕が落ちる。

 カレイスは斬撃を放っていた。瞬時に抜刀した彼の一撃は見事に敵の腕を刈り取ったのだ。


「次は首をいただく……!!」


 右腕を切り取られたローブの男は瞬時ににカレイスから距離を取り彼の様子を伺っている。


(いい反応だ、お陰で機械製の義手を壊すだけになったか……)


 ようやくそんな冷静な思考ができるようになったカレイスだが未だ毒は抜けきっていない、ぼんやりとする頭を必死に覚醒させようとしながら、彼は必死に剣を構える。


「コメディアン? なぜ騎士殿は動けている」


「え?」


「前評判では、一滴でクジラ三頭はいけると言っていただろう」


「旦那ぁ……どんな商品にも誇大広告はつきものだぜ?」


「では、粗悪品をつかまされたのか?」


「それもあると思うけど、多分普通にあの先生殿が強いんじゃないの?」


「なるほど、闘気によって瞬時に毒を分解する力を高めたのか」


「そゆこと」


「ならば厄介だな、そういう戦士は大抵ホメオスタシスが強い、毒魔法も呪いも弾かれるか」


 カレイスは二人の男を睨みつける、頭もようやくはっきりしてきた。今は危機を知らせることが大事、そしてもう一つやるべきことがある。


 騎士は地面を蹴った。そのモーションに呑気に話をしていた、二人の男も反応したが、すぐさま気がつく。


攻撃の意思があるわけではない。


 カレイスはすぐさま、瀕死の生徒のもとに近づき、唱えた。


「飛べ!!」


 その一言で、生徒は瞬きする間に消えてしまう。


「ほう、テレポートさせたか、別の教員のところに飛ばしたのだな。いい判断だ」


「いやぁ良かったなぁ! 先生! アンタに結界あけさすために生徒襲ったからさぁ! あのまま死んだらモヤモヤしてたよ!」


 ふざけやがって、カレイスはコメディアンと呼ばれていた男を睨む。

 やはりこの白髪の半裸コートの男が生徒をワザと襲ったのだ。


 全ては、この黒ローブの男を結界内に招待するために。


「貴様ら……! 生徒にこれ以上危害を加えるなら俺が!! 俺たちが貴様を殺す!」


 口笛がコメディアンの口の隙間から吹き荒ぶ。


 それは賞賛かそれとも挑発か、カレイスには判別できなかったが、騎士達や学校の力を舐め腐っていることは確かだった。


「コメディアン、手を出すな」


 すると“旦那”が一歩、踏み出す。


「私がやる」


 そしてそう言って、天に手をかざし紫色の閃光と共に出現した鉄の杖をつかんだ。

 杖ということは、魔法使いに相違ない。


「魔法使いが! 舐めるな!!」


 カレイスは叫ぶ。

 そして剣に闘気を集中させ、そして、大地を蹴った。

 魔法使いの対処など昔から決まっている。


 接近して大火力で叩き潰す。それだけだ。守りのいない魔法使いなど雑魚も同然だ。

 だというのに、当の黒ローブの男に焦りの表情が見られなかった。


「舐めているのはそちらだ、騎士殿」


 ─────────────


「なぁセンセ?」


 試験開始の三日目の朝、唐突にドンキホーテは隣に立つレヴァンスに話しかけた。


「私語は慎め、警備中だぞ」


「いや、なにカレイス先生担当のエリアの結界に穴が空いてるからさ、ちょっと気になってな」


 そういうドンキホーテにレヴァンスはため息をつく。


「……生徒の搬送でもしているのだろう」


「……いや」


 急に神妙そうに呟いたドンキホーテの態度に不審に思ったのかレヴァンスはドンキホーテの方に振り向く。


「センセ、これ敵襲だ」

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