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強制的魔王  作者: ほのぼのる500
……の配下4
53/58

53話

「ははっ。これはまた、すごいな」


画面に映し出されたモノに、思わず声が漏れる。

視線の先には、4つの人型。

そのうちの1つは、蛇の姿から人型に変化した魔王。

蛇の姿に戻っていないという事は、人の姿で落ち着いたんだろう。

魔力の強さから言えば、普通はあり得ない事だが。

もう1人の魔王は……まだ蝙蝠のままか。

力にもあまり変化は無いな。

問題は、魔王以外の存在だ。


「彼らは配下だろうな。それにしても……」


人型もいるが、それ以外もいる。

というか、魔王2人の力を考えると人型がいるのはおかしい。

確かに強力な魔力は渡したが、人型の配下をはじめから作れるほどの魔力では無かったはずだ。

それでも画像の中には、確かに3つの人型が写っている。


「配下のルールに『配下は必ず主よりも力が弱い』というのがあるが、どうやってそのルールを破ったんだ?」


彼らの世界は既に終わった事になっている。

この状態で配下が産まれるのは稀だ。

確かに前にもその状態で配下が産まれた事はあるが、あの時はルールがしっかりと適応されていた。

なぜこの世界だけ、適応されなかったんだ?


「それに、残りの2つ。この配下たちも、どうもおかしい」


この一番小さい配下から、かなりの力を感じる。

恐らくこの5つの中で最強の力を持っている。

だが、この姿はなんだ?

これだけの力があれば、人型になるはずだ。


「分からないな。あれ? そう言えば、送ったはずのマジックアイテムやマジックカードはどうしたんだろう? 使った形跡はないな」


画像を切り替えて探すが見当たらない。

どういういう事だ?

途中で妨害にあったとしても、全部が無くなるわけがない。

なんせ大量に送ったからな。


「外に無いという事は建物の中か?」


画像を少し引きにして、建物を見る。

通路が消え、壁や屋根の一部が崩れ落ちている建物が目に入る。


「何があったんだ?」


周辺を見ると、戦った痕跡が残っていた。

魔物に襲撃されたのか?

ん?

何かを燃やした痕跡がある。

画像を切り替えて燃えた痕跡を調べる。


「何も残っていないな……あっ、羽? 白い羽ってこれ天使の羽か? 天使が襲ってきたのか?」


どうなっているんだ?

死んだ世界と判断されたら、彼らには認識されないはずなんだが。


「ことごとく、ルールを無視する奴らだな。まぁ、面白いけど」


そう言えば、俺が送ったマジックアイテムがどこにあるのか探してたんだった。

パネルに触れて、画像を切り替える。


「うわっ」


あれ?

画像が暗くなった?

何か問題でも起きたのか?

画面に触れるが、何も映し出さない。

壊れた?

それとも魔王の世界に何かあったのか?

ドンドン、ドンドン。


「えっ? 何だ? 誰だ?」


焦った。


「私、ジャラスです。ちょっといいですか?」


ジャラス?

俺より後に産まれた配下の1人で部下だ。

随分と焦っているようだが。


「何かあったのか?」


扉を開けると、顔の半分を髪で隠した女性が立っていた。


「ちょっといいですか?」


ジャラスの様子から、鬼気迫る物を感じ頷く。


「いいぞ」


体を移動して、部屋にジャラスを招き入れる。

扉が閉まると、ジャラスがその場で崩れ落ちた。


「おいっ、大丈夫か?」


「どうしたらいいのか……。見ちゃったんです。見ちゃったの」


「えっ?」


ジャラスの様子に戸惑う。

 

「彼が、彼が。ご主人様を裏切ってた!」


言葉が乱れている。

まだ混乱しているみたいだ。


「落ち着け、ゆっくり深呼吸して」


それにしても裏切り者か。

そんな事で、いちいち騒がなくてもいいと思うが?

あ~違う、そんな事なんかじゃない。

ご主人様を裏切ることは許されない事なんだった。

……そう思い込んでいた時期もあったな。


「あの……」


ジャラスが心配そうに俺を見る。

ちょっと深く考え込んでいたようだ。


「ちょっと驚いたんです。それより、誰かにその事を話したか?」


「まだ、見た事が信じられなくて。だからすぐここに」


どうするべきか。

あの世界について報告していない以上、俺も裏切っていると言える。

ご主人様の持ち物を、無断であの世界に送り込んだしな。

届いているのかの確認が取れなかったが。

ジャラスに気付かれないように、そっと部屋の中にある大きなモニターを見る。

真っ暗で何も映していない。

だから大丈夫だ。


「椅子に座ってくれ。今、何か飲むものを持ってくるから」


「えぇ、ごめんなさい。私、気が動転してしまって」


そう言えば、裏切り者の彼って誰だろう?

ジャラスはまだそれが誰か言ってないよな?


「ジャラス、裏切っていた者は誰だ?」


「それは……」


ジャラスにとって大切な存在か?

確か、誰かと付き合っているとか聞いた事があるような。

誰だったかな?


「ピシナ……」


そうだ、ジャラスが付き合っているのはピシナと言う名前だったはず。

俺が名前を口に乗せると、椅子から勢いよく立ち上がるジャラス。

顔を青くし、唖然としている。

つまり裏切り者はピシナで正解というわけか。


「どうして?」


「ジャラスにそこまで影響を及ぼす者は少ない。付き合っていると聞いているしな」


「知っていたんですか?」


「ジャラスは俺の部下だ。気に掛けるのは当たり前だろう?」


そう、ジャラスは俺に付けられた部下の1人だ。

部下がどんな人物なのかを調べるのは当たり前だ。

俺のしている事がばれないようにするためにも。


「あっ、ありがとうございます」


ジャラスの表情に少し笑みが浮かぶ。


「ジャラス、厳しいようだがピシナの事を調べなければならない」


「はい。分かってます」


「もし裏切っているなら、処分されるだろう」


「……はい」


ジャラスの様子を見る。

顔色は青を通り越し白に近く、手が小刻みに震えている。

ピシナに何かあれば、ジャラスも少なからず影響を受けるだろう。

勿体ないな。

ピシナもジャラスも俺の部下の中では強い。

この2人が、このまま潰れていくのは本当に勿体ない。

どうにか出来ないかな?


「まず、何を見たのか教えてくれ。それから話し合おう」


「はい」


ジャラスが見たのは、俺が使用している机の上からSの印のついた書類を盗みだすところだったらしい。

Sは極秘を意味する記号。

この書類は、俺が主に直接渡す必要がある。

どの書類かな?

別に、俺にとってはあまり重要な物は無かったが。

S付きの書類も、大した内容では無かったはずだ。


「どうしたらいいのでしょう」


ジャラスの手に力が入る。


「まずは盗んだ書類をどこに持って行ったのかが問題だな。他の仲間の所なら主を裏切った事にはならない」


俺を裏切った事にはなるけどな。


「主に敵対する誰かに渡したなら、完全な裏切り者だ」


「主に敵対する誰か? そんな存在がいるんですか?」


いるらしいんだよな。

俺も噂でしか聞いた事は無いが。

ただ、最近動きが活発化しているとは聞いた。


「あぁ。俺もまだ詳しくは知らされていないが、いるという噂だ」


「知りませんでした」


まだ、隠されているからな。


「このことはまだ秘密だ。今、調査が入っているから」


たぶん調べているだろう。

主に従順な誰かが。


「それよりも、ピシナが誰に接触するか調べよう」


「……分かりました」


「ジャラス。ピシナは俺の大切な部下だ。なのでこの事は大事にしたくない。そのため最低限の人数で調べたい。つらいと思うが手伝ってもらえるか?」


「もちろんです!」


まぁ、主を裏切るようなことをピシナはしてないだろう。

つまり誰かが俺を調べているという事だ。

誰かが俺を疑っている。

当分、彼らの世界に触れるのは止めた方がよさそうだな。

真っ暗になった画面に視線を向ける。

残念だ。


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